エーテボリ響首席客演指揮者に就任、〈歌い振り〉を武器に〈マエストラ〉としての活動に磨きがかかるソプラノのバーバラ・ハンニガンが、創立から協働してきたオランダの精鋭たちと、掌中の珠とする〈受難〉3作品を綴った意味深いコンセプト・アルバム。作品が自ずと希求する現在性を、演奏者と聴き手を強力に吸引する求心的な音楽として創出する彼女の手腕は圧倒的だ。ノーノからハイドンへ、彼女は実演でも両作をアタッカでつなぎ、越境的に生成される知情意を聴き手と共有する。“受難”交響曲のアダージョ冒頭の荘重な響き! ラトル&ベルリン・フィルと取組んでいたグリゼーの遺作での憑依的な凝集はまさに圧巻。