本日休演の岩出拓十郎を中心に結成された異端のレゲエ・バンド、ラブワンダーランドが、デビュー・アルバム『永い昼』と7インチ・シングル『ラズベリーサン/アロエ・ベラ』をリリースした。メンバーは岩出(ギター、ヴォーカル)の他、ぱる(ヴォーカル/象の背)、小池茅(ドラムス/映像作家)、矢野裕之(ベース/ex.バレーボウイズ)、白川大晃(キーボード/Bagus!)、足立大輔(ギター/Emerald Four)という、いずれも他バンド・ジャンルで活躍する実力派かつ曲者たち。〈彼岸のラヴァーズ・ロック〉をテーマにした彼らの楽曲は、ぱるのあどけなさすら感じる無垢な歌声に、ルーツ・レゲエやダブを自己流に昇華したサウンドが組み合わさり、独自の世界観を醸し出している。そんな摩訶不思議なバンドの結成秘話から今後の展望まで、岩出と小池の2人に話を訊く。
埜口が亡くなっちゃって、取り残されたような感覚があった
――個人的には、岩出さんは本日休演のメンバーとして、小池さんはその本日休演のMV監督など映像作家としてそれぞれ知っていたんですけど、お二人の出会いは知らないのでまずはそこから教えていただけますか。岩出さんは京都大学で本日休演を結成されますけど、ご出身は東京なんですよね。
岩出拓十郎「そうなんです」
――小池さんも東京の出身で。
小池茅「そうです。それで3年前に仕事で大阪に来ました」
――東京出身者同士が、どうして京都で出会ったんですか?
岩出「大学の知り合いが小池の高校の友達で。京都に来た時に一緒に遊んだり映像を撮ったりしてたんです。それが2012年かな。その時に撮った映画、YouTubeにありますよ」
――その頃、小池さんは何を目指していたんですか? 映像作家?
小池「うーん、なんでしょう……。大学時代から音楽も映像も両方好きでやっていて、いまもそれを欲張って続けています。僕の友達も岩出君も大学から関西に行って、僕は就職して配属先がたまたま関西。岩出君たちと合流できて一緒に活動しているという流れです」
――それがどうバンドになるんですか?
岩出「本日休演のセカンド・アルバム(2015年リリース『けむをまけ』)を作っている時にドラマーがいなくて、小池がドラムスを叩けるということで参加してもらって、当時はよく遊んでたのでもともと〈何か一緒にやりたいね〉とは言ってたんです。でもその後、本日休演のメンバーの埜口(敏博)が亡くなっちゃって、そのタイミングで周りのみんなの世界がどこか変わっちゃったんですよね。取り残されたような感覚があって、その時に改めて〈何かやりたいな〉って思ったんです。それがきっかけですね」
小池「僕はレゲエがすごい好きで、〈こんなのもあるぞ〉って岩出に教えると岩出もハマっていって、そしたら岩出もまたすごい音楽を紹介してくれて、その熱が戻ってくるんです。ディグり合い合戦みたいな。その時のレゲエ熱をうまく昇華させたいっていう気分もあったし、さっき岩出が言ったような状況もちょうど重なって、どこか必然的にレゲエ・バンドになったんでしょうね」
――デモCD『フォーエバーヤングボウイ』のクレジットを見ると、この時はまだメンバーが4人ですよね。岩出さん、小池さん、現メンバーの矢野裕之さんに、ひでおasa桜井さん(ヴォーカル/ex.ユーカリ心中、風のあと)。
岩出「桜井さんというのがその亡くなった埜口君の彼女で、よく一緒に遊んでたんです。矢野はバレーボウイズというバンドを脱退してヒマそうにしてて、じゃあ一緒にやらない?と。矢野とはバンドをやり始めてから距離が縮まったなあ」
――デモCDを購入した時にお手紙が付いていて、これも矢野さんが書いてたそうで。
岩出「そうです。彼は包装とか発送とかのセンスもあるので。その4人に、阿佐ヶ谷ロマンティクスのメンバーだった荊木(敦志/ギター)君をサポートで加えた5人でラブワンダーランドの活動を開始しました」
――そこからいまのメンバーにはどう変遷していったんですか?
岩出「桜井さんが実家に帰ったので少し休むことになって、しばらくライブができなくなって新しい女性ヴォーカルを入れようということになり、ぱるちゃん(象の背)を誘って」
――象の背は岩出さんがプロデュースしていますよね。
岩出「そうです。いい歌を歌うなと思っていたので。“恋のモーニングコール”なんかはバチッとハマったので是非やってもらおうとなりました。ヴォーカルはぱるちゃんにやってもらってますが、桜井さんもバンド結成からスピリチュアルな部分を支えているメンバーですので、休みつつやってもらってます。今回のアルバムでも1曲参加してくれたんです(“フォーエバーヤングボーイ feat. ひでおasa桜井”)」
岩出「その桜井さんが出られなかったライブの時、〈どうせだったらいろんな人をバンドに呼んじゃおう〉みたいなことになって、キーボードの白川君を呼んだり、スタジオ練習してたら廊下で話しかけてきた謎のインド人にコーラスを任せてみたり、本日休演のベースの有泉(慧)が手伝ってくれたり(本作にはメガドライブの音源で参加)、ギターの足立さんもレゲエが好きらしいから入ってもらったり」
――足立さんはそこからメンバーになったんですね。
岩出「小池がEmerald Fourでパーカッションを叩いていたこともあって。足立さんは結構スピってる人で、実はバンドでいちばんヤバい人かもしれないと思ってます」
――白川さんもこのタイミングでメンバーに?
岩出「彼はBagus!というバンドで、それまではソウルっぽい音楽をやってたんですけど、その頃ラヴァーズ・ロックに転向したというのを聞いて、せっかくだから手伝ってもらおうと」
小池「白川君はノリがすごくいいんですよ。レゲエのキーボードってリズム隊でもあるので、黒人みたいなタイム感だし、吹奏楽部っていう出自も関係してるのか。だからプレイヤーとしてすごくいいなと思ったのでお誘いして、最初はサポートだったけど、何となくヌルヌルとバンド・メンバーになりました」
――そうやっていまの6人が集まったんですね。