天国旅行
(左から)室井晴人(ベース)、田澤寿詩(ギター/ボーカル)、今村岳(ドラムス)、室崎智也(ギター)

須藤朋寿が主宰するインディレーベル、NEWFOLK。2019年2月にスタートしてから5年が経ち、ラッキーオールドサン、田中ヤコブと家主、台風クラブ、山二つ、工藤将也などなど、多彩なアーティストの優れた作品をリリース、所属アーティストを増やしつつ拡大を続けている。Mikikiは、5周年を記念してNEWFOLKの特集をお届けする。

初回はNEWFOLKのニューカマー、北海道・札幌で活動する天国旅行のアルバム『くたばれ』(2022年)、『TOUGHNESS ROMANTIC』(2024年)がCD化されたことを記念する対談を掲載。現在、本日休演とフー・ドゥ・ユー・ラブの新作を制作中であり、ラブワンダーランドなどでも活躍する岩出拓十郎と、天国旅行のボーカリスト/ギタリストである田澤寿詩が語らった。近年、交流を続けてきた2人の対話から彼らの表現のコアに迫った。

天国旅行 『くたばれ』 PersianRug/NEWFOLK (2022)

天国旅行 『TOUGHNESS ROMANTIC』 NEWFOLK(2024)

 

天国旅行の結成、NEWFOLKへの愛と偶然の出会い

――まず、天国旅行について教えてください。元々は田澤さんの宅録プロジェクトで、2018年に始まったと聞いています。

田澤寿詩「そうです。1人でやってる感じにしたくなかったので、勝手にバンドでやってる風に見せてました。実質的には1人でやってて、iPhoneのGarageBandで録音した曲をCD化したのが1人での活動の最後です」

――その後にベーシストの室井晴人さんが加わり、バンドとして活動していったと。個人的な活動で完結させるつもりはなかったんですね。

田澤「札幌って今はバンドをやってる人が多いイメージがあると思うんですけど、当時は自分のマインドに合う人、一緒にやってくれそうな人を知らなくて。ライブハウスでちょっとずつ声をかけていってメンバーを集めました。1stアルバム(2021年作『キッズ・アー・オールライト』)を作った時は今の4人でしたね」

――活動を始めた頃はコロナ禍が丸被りでしたが、影響はありましたか?

田澤「ライブをたくさんやってたわけでもなかったので、逆に自分たちがやることに集中できましたね」

――ちなみにNEWFOLKの主宰・須藤さんが天国旅行の作品をリリースするに至った経緯は?

須藤朋寿「家主のアルバム『DOOM』(2021年)の制作中、タイトルの候補に〈遠投〉というワードがあって、同じタイトルが他にあるか調べたんです。そしたら天国旅行の1stに“遠投”という曲があって、聴いてみたら〈知らないバンドだけどいい曲じゃん〉という話になったんですね。

その後、2022年に札幌で台風クラブと家主でツーマンライブをおこなうことが決まった際、田澤くんから〈僕ら、めっちゃいいライブするのでオープニングアクトとしてぜひ出させてください!〉ってDMが突然来たんです。時間の都合もあって出てもらうことは叶わなかったんですけど、2ndの『くたばれ』を聴いて〈やっぱりめっちゃいいじゃん!〉と思いました。1stより磨きがかかってて個性を獲得しつつあるなと。さらに点と点が繋ったんですけど、UlulUのメンバーにも〈天国旅行っていいバンドがいるんです〉と言われて。

それからライブで一緒になったり企画で呼んでもらったりと交流が生まれて、NEWFOLKの4周年イベント(2023年)に出てもらいました。それで彼らの手伝いや手助けをできるんじゃないかなって思いが、そういう交流の中で芽生えていきました」

――田澤さんが売り込みかけたのは台風クラブと家主が好きだったからですか?

田澤「そうです。一番はNEWFOLKが好きだったからで、僕らのことを知ってくれないかなってずっと思ってたんですね。考えてるだけだったらもったいないと思って連絡してみました」