前列左から、小西誠(ギター)、白川大晃(ヴォーカル/ギター)、辻敦子(ヴォーカル/キーボード)。後列左から伊藤拓史(ドラムス、サポート・メンバー)、酒井裕介(ギター、サポート・メンバー)、中村亮介(ベース、サポート・メンバー)
 

メンバー全員が昭和ラスト世代、大人になっても愛だの恋だの歌っていたいと言う、和歌山発の(サポート含めて)6人組ラヴァーズ・ロック・バンド、Bagus!(バグース!)。昨年は初のシングル『チークタイム』をタワーレコードの一部店舗とライブ会場限定でリリースし、今年は7月16日(木)にミニ・アルバム『恋はうたかた』を配信でリリース予定。また8月8日(土)には、レコードプレスメーカー・東洋化成のイベント〈CITY POP on VINYL 2020〉において、大瀧詠一や大貫妙子、吉田美奈子といった錚々たる顔ぶれと並んで『チークタイム』の7インチをリリースする。バンド結成のいきさつからコロナ禍中の活動、そして今後の展望に至るまで、バンドの中心人物である白川大晃(ヴォーカル、ギター)にメール・インタビューで話を訊く。

Bagus! 『チークタイム』 ハワイレーベル(2020)

 

Bagus!のライブの目標は、ライブ中にキスしてもらうこと​

――まずはBagus!の簡単なプロフィールから教えていただけますか?

「2014年、和歌山出身、高校の同級生である、私、白川と辻敦子を中心に始動しました。この二人は同じ吹奏楽部で、白川はトランペットを、辻はクラリネットを担当していました。辻は現在もクラリネットの仕事をしています。

結成当初はサーフ・ロックやフォークを基調としたオーガニックなサウンドで、パートもアコギ、ジャンベ、クラリネット、エレキ・ギターという編成で活動していましたが、紆余曲折あり2018年より現在のいわゆるバンド編成になり、ラヴァーズ・ロック(レゲエのサブ・ジャンル。シンプルにいうと、恋を歌うロマンチックなレゲエ)を演奏し始めました。バンドのリズム隊は京都のcocolo-Noというバンドのメンバーにサポートをオファーしました(ただ、実はベースの中村亮介が残念ながら7月のライブをもって脱退することになりまして、今、次のベーシストをすごーく探しているところです)」

バンドのリズム隊、cocolo-Noの楽曲“JB”
 

――Bagus!のこれまでの活動内容を教えてください。

「2年に1回ほど音源を出しながら、月2回くらい京都のネガポジという箱を中心にライブしていました。とは言え、2018年までは、いま思えば〈楽しくやれたら良いよね!〉という気分で、半分は呑むためにやってたかもしれません……。ある日、私が〈お茶の間に届けたい!〉と言い出してから、より身を引き締めて活動しはじめました」

――最初は趣味的な活動だった、と。

「そうですね。また、中心メンバーが和歌山出身ということもあり、バンド名の由来になった和歌山の和歌浦という漁村にあるビーチ・バー、バグースにて2014年から自主企画〈Bagus!しようや!〉を毎年夏に開催しています。今年はコロナがどうなるかわからなかったので来年に延期しましたが、過去には台風クラブ、本日休演、渚のベートーベンズ、前川サチコとグッドルッキングガイ、The HillAndon、ぐっとクルー等々が出演してくれました」

2018年に開催された〈Bagus!しようや!vol.4〉のダイジェスト映像
 

――すごく素敵なロケーションですね。

「あとは、2019年4月より、下村”飛2”真一(イヴェンター/セレクター)主催のもと、京都メトロにて偶数月に開催されるヴァイナル・オンリーのレゲエ・イベント〈Ram Jam Reggae〉にレギュラー・バンドとして出演しています。

音源で言うと2019年3月1日にファースト・シングル『チークタイム』をリリースし、京都・磔磔にてワンマン・ライブを開催しました。磔磔でワンマンなんて夢みたいな話だったので、とても感慨深かったです」

『チークタイム』表題曲“チークタイム”のMV
 

――バンドの活動のテーマはありますか?

「テーマと言うほどではないですが、曲は全て〈ラヴソング〉にこだわっています。これは、2018年に現在のバンド編成になる前からそうだったのですが、私が偶然『ストーリー・オブ・ラヴァーズ・ロック』という映画を観て、ラヴァーズ・ロックと出会い、より〈これだ!〉となりました」

――白川さんはもうひとつ、岩出拓十郎さん(本日休演)率いるラヴァーズ・ロック・バンド、ラブワンダーランドでも活動されていますが、なぜラヴァーズ・ロックがここまで白川さんを惹きつけるのでしょう?

「ラヴァーズ・ロックはノリや音的にももちろん好きなのですが、その成り立ちに特に惹かれている気がします。ラヴァーズ・ロックって、イギリスに移民したジャマイカンが作り出した音楽らしく、彼らが最初クラブで遊び出した時にレゲエをかけても、とにかく女性が来なかったんだそうです。なんでかって言うと、レゲエの歌詞って基本的に全然甘くないから」

――甘さ、ですか。

「そう、甘さが足りなかった。〈これじゃあつまらない!〉ってことで、レゲエのリズムのムードは残しつつ、恋の歌を甘いメロディに乗せて若い女性に歌ってもらったところ、これが大当たり! ラヴァーズ・ロックが流れるクラブで若い男女がチーク・ダンスを踊るという文化が生まれ、それがどんどん広まっていって……というのが大雑把な成り立ちのようです。

私はこの話を上述の映画(『ストーリー・オブ・ラヴァーズ・ロック』)で映像とともに知って〈このムード最高! やりたい!〉と思ったわけです。なので、Bagus!のライブの目標は、ライブ中にキスしてもらうことです。もっと言うとライブ中にカップルが誕生して欲しいですね。一度だけ、カップルが手を取り合ってキスしながら踊ってるのがステージから見えて、その時は本当に嬉しかったです」

――日本のライブはいかにもパフォーマンスを観に行く場所っていう感じですけど、本来のライブってそういうものかもしれませんね。

「そうですね。家の近所にjamboreeというバーがあって、そこはすごくいいシステムで、ロック・ステディのレコードをかけてくれるんです。その店にちょいちょい通っていたので、実はラヴァーズ・ロックに出会う前に、ロック・ステディが好きになっていて。そういう下地があって『The Story Of Loversrock』を観たので、余計スムーズに入ってきたのかもしれません。ほぼ同時期に、asuka andoさんの“あまいひとくち”を聴いて、さらにグッとラヴァーズ・ロックに心を掴まれた記憶がありますね」

「ちなみに、ラブワンダーランドの存在はそのjamboreeでラブワンダーランドのドラマー、小池茅と飲んでる時に知ったんです」

――お、映像監督としても個人的に大注目している茅さんの名前が。

「お互いの近況報告をしてる中で〈最近ラヴァーズ・ロックやってんねん~〉って言うと彼が〈え? 僕も!〉って。ラヴァーズ・ロックというジャンルを掲げてるバンドって滅多にいないのに、そのバンドのメンバーが隣にいて、〈すげー!〉って感じで。その年の年末に、Bagus!とラブワンダーランドが対バンすることになって、そのタイミングで〈軽く鍵盤弾いてみない?〉と誘ってもらったのがきっかけで、ラブワンダーランドに参加することになりました。

ただ、Bagus!とラブワンダーランドは、ラヴァーズ・ロックを掲げてはいるものの、その捉え方というか表出はある意味対極的だとも感じます。その心は……?と訊かれそうなのですが、それは実際に聴いてみて感じでください。ラブワンダーランドもアルバムと7インチが出る予定なので!」

白川も籍を置くラブワンダーランドのライブ映像
 

 

少しくらい恋のことなんか考えて、ドキドキしてなきゃやってられない

――今回の新型コロナウイルスの騒動を受けて、これまでのようなライブ活動ができなくなったとお聞きしました。

「はい。上記の様なライブを中心とした活動ができなくなってしまったので、代わりに〈Lovers From Home〉と言う宅録企画を始めました。だいたい2週間に1曲くらいのペースで新曲・既存曲織り交ぜてSoundCloudにアップしています」

――第1弾の“春に抱かれて”は連載〈Mikikiの歌謡日!〉でも取り上げさせていただきました。

「“春に抱かれて”は、サポート・ギターの酒井さんのパートが、良い意味で異物感があり曲に深みが出たと感じています。ギター以外にも小物のパーカッションも録音してくれていて、じぶん一人でなく、誰かと音楽をやる楽しみを改めて感じました。

彼はMAGARI BOOKSという移動式の本屋をやっていて、文化的なものに見識が広いので、そこが活きた様な気がします。ちなみに、奈良は生駒の宝山寺にある、家賃3万ほどのあばら屋をおしゃれにして住んでいるのですが、家そのものが傾いているので、とても心配です」

――(笑)。そして〈Lovers From Home〉は第2弾の“忘れるでしょう”、第3弾の“誰も知らない”と続きます。ラヴァーズ・ロックではあるけれど、また違った顔つきの楽曲で。

「ここでは、ギターの小西誠がミックスや打ち込みで大活躍してくれていて、特にタイコはこんなに生っぽくなるんだな!とびっくりしました。ちなみに彼は、もともと大阪の茨木でスクリーモのバンドをしていたのですが、当時流行っていたギター回しをレスポールでして、見事ドラムにギターを突っ込ませ、もちろんギターは壊れ、そのままアメリカに行きました。そこで、ブルース・ギターと打ち込みに熱心に取り組んでいたみたいです。学校にはあまり行っていなかったみたいですが」

――ちょくちょくメンバーに関する小ネタが挟まる(笑)。楽曲のクォリティーは高いように感じたんですが、宅録でどうやって作るんですか?

「メンバーで一緒に音を出して作るわけではなく、ベーシック・トラックが完成すると、それをそれぞれのメンバーに振って、割と自由に音をつけてもらっています。その中で、バンドで音を出したことのない新しい曲に対するアプローチにそれぞれの個性が発揮できている感じがして嬉しいです。一緒に音を出す時とは違い、全体を俯瞰しながら、組み立てていく感じがあるからかもしれません」

――なるほど。今回のコロナ禍と、楽曲ごとのメッセージは何か関係がありますか?

「特に今の環境下における、メッセージを込めた曲はありません。が、最初にアップした2曲の選曲(“春に抱かれて”は4月末、“忘れるでしょう”は5月の中頃)については、クサクサするなぁという日々だったので、少し背中が押される様な歌詞のものを選びました。……とは言え、Twitterで発信する際に少し言葉を添えました。

1曲目の“春に抱かれて”の時は〈みんなの気持ち一つで、春は来ます!〉。この時、関西は緊急事態宣言が出て2週目くらいだった様な気がします。コロナ自体も得体がしれないもので、気味悪かったですが、それよりも嫌な行いや発言をする人(一般人、有名人問わず)に結構当てられました。そんな状況だったので、上記の言葉を添えた気がします」

――それはよくわかります。すごく息苦しかったので。

「2曲目の“忘れるでしょう”の時は〈私たちの生活、色々あるけど歩いて行かなきゃいけないです〉。改めて見ましたが、まあそのままですね(笑)。ただ、しんどい中でも状況は捉えよう、ということを言いたかった様な気がします。それは歌詞的にも……というか、書きながら無理やり歌詞と社会の状況を繋げようとしている気もしてきました……。いや、やっぱり、ただの気分で書いたのかも……。

とは言え、今は3.11の時と少し似てると感じているのですが、いったい何が本当のことか全然わからない状況ですよね。なので、少しくらい恋のことなんか考えて、ドキドキしてなきゃやってられないですよ」

――こんな時世だからこそ、ドキドキしようと。バンドの今後の目標はありますか?

「冒頭にも書きましたが、〈お茶の間〉で流れたい、ということですね。なんだかんだ言って、たくさんの人に聴いてもらいたいです。それも、特に〈音楽が好きだ!〉というわけでもない方にも聴いてもらえると、嬉しいです」

――音楽が特段好きでない方にも届けたい。

「はい。“チークタイム”のPVの監督もしてくれた友人の松浦真一という映画監督がよく〈少数派による多数派に向けた表現〉ということを言うのですが、そういう表現ができると良いなと思っています。

あとは7月16日(木)にひとまず新しいミニ・アルバム『恋はうたかた』がストリーミングで解禁されますし、8月8日(土)には東洋化成が主催の〈CITY POP on VINYL 2020〉という企画で、大阪・中津のHawaii Recordというレコ屋さんのレーベル〈Hawaii Label〉からファースト・シングルの7インチがリリースされます。ニュー・アルバムもたくさん聴いて欲しいし、アナログに関しては色んな場所でセレクターにプレイしてもらいたいです。目標というよりは、〈たくさん聴いて欲しい〉という願望ばかりですが、そのために色々と考えながら、楽しくやっていきたいです」

ミニ・アルバム『恋はうたかた』トレイラー
 
ミニ・アルバム『恋はうたかた』ジャケット
 

 


LIVE INFORMATION
Bagus!『恋はうたかた』リリースライブ
2020年7月19日(日)京都府・西院ネガポジ
開場/開演:18:30/19:00
出演:Bagus!、CuBerry
料金(前売り):2000円+ドリンク代
※配信、人数制限等は追って告知いたします