「冬ソナ」以来の大ヒット!? ネット発韓国ドラマ、その感動を音楽でも

 Netflixで配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」「梨泰院クラス」が大ヒットを記録している。「愛の不時着」は、韓国の財閥令嬢で自身もビジネスで成功しているヒロインのユン・セリ(ソン・イェジン)が、とある事故に巻き込まれて北朝鮮に不時着、そこで出会った堅物の将校、リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)と暮らすところからスタートするロマンティック・ラヴストーリー。一方の「梨泰院クラス」は、ソウルの飲食店激戦区である梨泰院を舞台に、主人公のパク・セロイ(パク・ソジュン)と個性豊かな仲間たちが、飲食業界での成功を目指して奮闘していく作品だ。いずれも1話が1時間以上で全16話と、日本のドラマに比べてボリュームが多い印象を受けるかもしれないが、立て続けに起こる予期せぬ展開にハッとさせられっぱなしで、あっという間に全話見終わっていた、なんて人も多いはず。

 韓国ドラマの特徴とも言えるのが、サウンドトラックに人気の歌手が次々と参加すること。物語の重要なシーンで流れる情感豊かな楽曲たちは、登場人物の気持ちに寄り添い、その思いを数倍にも膨らませ、視聴者である私たちに訴えかけてくる。名シーンを作り上げる重要な役割を担っており、物語が進み話題になるにつれて楽曲自体が大ヒットを記録することもある。例えば、昨年放送されたドラマ「ホテルデルーナ~月明かりの恋人~」は、韓国の音楽チャートである 〈Gaon〉の週間デジタルチャートで、関連曲が8週連続で1位を獲得、TOP5に複数曲がランクインしたことも記憶に新しい。今回ご紹介する2作品も例に違わず、「愛の不時着」はIUの“Give You My Heart”、「梨泰院クラス」はGahoの “はじまり”が、〈Gaon〉の週間デジタルチャートでトップに輝いている。

VARIOUS ARTISTS 『愛の不時着 オリジナル・サウンドトラック』 キング(2020)

 「愛の不時着」のサウンドトラックは、ラヴロマンス作ということもあり、出演者たちの切ない心情を表すようなバラードが多い。残念ながら、前述のIU“Give You My Heart”は、日本盤のサウンドトラックには未収録だが、R&Bシンガー、ラッパーとして活躍するユン・ミレの“Flower”は、ジョンヒョクが抱くセリへの思いを花に喩えた愛しさに溢れる楽曲。2019年で解散したアイドル・グループ、WANNA ONEのメイン・ヴォーカル、キム・ジェファンによる“ある日は”は、叶わぬ恋に胸を痛める主人公たちの気持ちを、情感豊かに歌い上げている。そのほかにも、女性2人組ヴォーカル・ユニットのDAVICHI、女性アイドル・グループgugudanのセジョン、JYPエンターテイメントで15&というデュオで活動後、ソロ歌手として活動するペク・イェリン、人気ドラマの楽曲に多く参加している男性シンガーのCrushなど、個性豊かなラインナップ。劇中を彩ったピアノ曲“兄のための歌”などが収められているのも嬉しいところだ。さらに、付属の32Pブックレットでは、未公開&メイキングの写真、名場面のセリフと対訳、多くの韓国映画やドラマの字幕を手がける根本理恵氏による歌詞のハングル&対訳も楽しめる。〈愛の不時着ロス〉の心を癒す必携の1枚と言えそうだ。

VARIOUS ARTISTS 『梨泰院クラス オリジナル・サウンドトラック』 キング(2020)

 「梨泰院クラス」は、自身の成功を目指して突き進む作品だけに、心を奮い立たせてくれるような曲がいくつもある。なかでも、劇中で繰り返し流れていた“はじまり”は、イントロを聴くだけで未来が開けていくような気持ちになる1曲。この曲を歌うGahoは、Planetarium Records(PLT)というレーベルに所属し、ヨーロッパ・ツアーを行うなど、注目を集めるアーティストの一人だ。一方で、ロック・バンドGUCKKASTENのヴォーカル、ハ・ヒョヌによる“石ころ”は、心を鼓舞するような力強い歌声で、主人公のパク・セロイの揺らがない信念と呼応するようなナンバー。そして、主人公を演じたパク・ソジュンと親交があるBTSのVの自作曲“Sweet Night”は、アコースティック調のポップ・チューンで、彼の甘いヴォーカルにドキッとさせられる。ほかにも、「愛の不時着」にも参加しているユン・ミレやCrush、男性アイドル・グループのVERIVERYらが名を連ね、イ・チャンソルによるベン・フォールズの “Still Fighting It”のカヴァーもあり、劇中のBGMもふんだんに収められているので、こちらもぜひチェックを。