アフリカ音楽を代表する女性シンガーの一人、ウム・サンガレの2020年作品。ほぼリハーサルなし、プロデューサーなし、オーバーダブなし、ヴォーカルを中心にギター、ンゴ二(アフリカの弦楽器)、鍵盤と極めてシンプルかつアコースティックな編成で録音された本作は、サンガレの声やメッセージが最大限に活かされている他、昔ながらの方法で録音されたことにより、その場の空気感まで感じられるような、臨場感のあるサウンドに。ある種の神聖さすら感じる荘厳な雰囲気に圧倒されると共に、アコースティックならではのダイナミクスと暖かみも感じさせてくれる一枚。

 


白地に描かれたウムの横顔。シンプルながら印象に残るアートワークなのだが音源の鮮烈さはそれ以上。女声コーラス、ギター、ンゴニ、鍵盤という編成による完全なるアンプラグドでヘッドホンなし多重録音もなし。スタジオ・ライブ盤は数あれどここまでシンプルなものはそうない。ある種の伝統回帰ではあるが挑戦だと感じるし、エフェクティヴな前作とは対称的にナチュラルなアンビエンスを見事に捉えており、そういうレーベルの特長を活かしきってるとこも何とも素敵だ。よく目の前で演奏しているかのようなんて言うけどまさにそれで、とくにウムの歌声が放たれるや否やトキメキのようなドキリが胸を撃つ。