
スティング、ダイアン・リーヴス、ジェフリー・オズボーン、サマラ・ジョイ、セシル・マクロリン・サルヴァント等豪華なシンガーをゲストに迎えた注目作がマックアベニューよりリリース!
ジャズ界のトップ・ベーシスト、バンド・リーダー、プロデューサーとして名声をほしいままにしてきたクリスチャン・マクブライドが率いるビッグバンドによる新作『Without Further Ado, Vol. 1』(前置きはさて置いて)は、豪華な顔ぶれのゲスト・シンガーが一曲毎に参加するという、とびきりゴージャスな内容をもった一作である。伝統的なビッグバンドの流れを受け継ぎながらも、精緻を尽くして磨き抜かれたバンドのパワフルな響きは、とても今日的。豊かな熱量をはなつバンドをバックに、旬のトップ・シンガーたちが歌い、見事なコラボレイションを演じてゆく。通常のビッグバンド・アルバムとはひと味違う企画の面白さもさることながら、注目すべきはシンガーの顔ぶれで、ジャズだけでなくロック、R&Bからコンテンポラリーなシンガーまで、大物ばかりを迎えているあたりは、クリスチャン自身が重ねてきた豊かなキャリアと幅広い音楽性を俯瞰するかのようでもある。

アルバムが生まれるきっかけは、クリスチャンが2012年からニュージャージーの〈パフォーミング・アーツ・センター〉(NJPAC)で毎年開かれるガラ・コンサートの音楽プロデューサーを担当していることに始まっている。このイヴェントのハウス・バンドをクリスチャンのビッグバンドが務めていて、そこでは毎年、豪華なシンガーが招かれており、アレンジのすべてをクリスチャンが書いてきた。そのコンサートで一度演奏されただけの譜面が溜まってきたので、あらためて録音してアルバムにしようということになったのである。「こんなに嬉しいことはないよ。僕のお気に入りの歌手たちと、もういちど一緒にできる素晴らしい機会になったんだからね……」とクリスチャンが嬉々として語っている。
まず名ロック・トリオだった〈ポリス〉の曲“マーダー・バイ・ナンバーズ”にはスティングとギタリストのアンディ・サマーズが参加。大ヒットした“見つめていたい”のシングルB面曲。“ポリスの2/3が再集結してくれたことは、とても光栄なことだ”とクリスチャンも興奮を隠さない。そしてソウル界のレジェンド、ジェフリー・オズボーンのバンド〈L.T.D〉77年のR&BチャートNo. 1曲“バック・イン・ラヴ・アゲイン”。「この曲を2013年のNJPACで僕らがオズボーンと一緒に演奏した時、イントロが流れ出すと観客が総立ちになって踊り出したんだ」とクリスチャンが振り返る。
ジャズ・サイドからは、25歳にして複数のグラミーに輝いているサマラ・ジョイが、古いスタンダード曲“オールド・フォークス”を歌う。「彼女のように若い人が、あんなに熟練した歌い方をするのは、ちょっと不思議だよ。30年後にはどうなっているのか、想像もできない」とクリスチャンが語っていて、おそらくリスナーの皆さんも同じような思いをもたれることだろう。さらに、やはり現代ヴォーカリストの中でも大注目株であるホセ・ジェイムズ、セシル・マクロリン・サルヴァントに大御所ダイアン・リーヴスと、スーパークラスが一堂に会している。
振り返ればクリスチャン・マクブライドのビッグバンド作品は、2011年の『The Good Feeling』、2017年の『Bringin’ It』、2020年の『For Jimmy, Wes And Oliver』と、過去の3枚が、いずれもグラミーの〈最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル作品〉に選ばれている。今作ももちろん、来年度のグラミー・ノミネートは確実と思われるが、さらに優秀賞の有力候補になるのも間違いのないところ。そのゆくえについても注目してゆきたいものだ。
Christian McBride(クリスチャン・マクブライド)
1972年5月31日生まれ。アメリカのジャズミュージシャン、ベーシスト、作曲家。ジャズやヒップホップなどジャンルやスタイルを問わず数多くのミュージシャンと共演。サイドマンとして参加したアルバムは数百枚にのぼる。その超人的とも言える多才なテクニックで現代ジャズ界で最も賞賛されているベーシストの1人。底知れないグルーヴ感や独特の感性はジャンルの枠をはるかに超え、ハービー・ハンコック、チック・コリア、ポール・マッカートニー、ビリー・アイリッシュ、パット・メセニー、クインシー・ジョーンズ、セリーヌ・ディオン、ダイアナ・クラール、ジェームス・ブラウン等、様々なアーティストたちとのコラボレーションにつながっている。
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