豪華絢爛な夢のデュエット・アルバム、ふたたび。エンターテインメントの最高峰にディランもポールもスティングもマライアもアリアナも駆けつけた『Partners II』が普遍的な歌で表現するものとは?

友達の助けがあれば

 「最終的にはうまくいったけど、途中で恐怖の瞬間が何度かあったことは否めないね」と冗談交じり(本音?)にコメントを残しているのはポール・マッカートニー。ありとあらゆる局面をレコーディングやライヴで経験してきたであろう彼をそこまでの緊張で囲い込んだ張本人……バーブラ・ストライサンドは、「とても思い出深いセッションだった。〈友達の手をちょっと借りればやれる(With a little help from my friend)〉って本当なのね!」と余裕のひとこと。米国エンターテインメント業界の最高峰から招かれ、そのホームグラウンドで70人編成のオーケストラを従えてのセッションは流石のポールをも緊張させたようだ。そんな招待に応えた12名のアーティストがデュエット・パートナーを務める形で、バーブラ・ストライサンド通算37枚目のスタジオ・アルバム『The Secret Of Life: Partners, Volume 2』は完成した。

BARBRA STREISAND 『The Secret Of Life: Partners, Volume 2』 Columbia/ソニー(2025)

 言うまでもなくバーブラといえば、アメリカ音楽史上最高のヴォーカリストと称される伝説的なアーティストである。60年を超えるキャリアにおいてアカデミー賞、グラミー賞、エミー賞、トニー賞、ゴールデングローブ賞のすべてを獲得し、歌手、俳優、映画監督、プロデューサー、脚本家、作家、ソングライターとしてマルチに活躍してきた彼女だが、大御所らしからぬペースで近年もレコーディング作品は定期的に届けてくれている。ポールと同じ1942年生まれで、ビートルズと同じ63年にデビュー。そんなアイコンだけに、今回の『The Secret Of Life: Partners Volume 2』に参加したデュエット相手の豪華さも想像以上だ。ビリー・ジョエルやスティーヴィー・ワンダーらを迎えた11年前のシリーズ前作『Partners』(2014年)も凄かったが、今回はホージア、サム・スミス、ボブ・ディラン、レイヴェイ、マライア・キャリー&アリアナ・グランデ、ティム・マグロウ、ジェイムズ・テイラー、スティング、ジョシュ・グローバン、シール……と参加者の顔ぶれをサラッと並べてみたとして、この手の客演を受けるイメージのないボブ・ディランまで動かしているのだから、それだけでもとんでもなさは伝わるだろう(なお、この組み合わせは、ディランのほうから数十年前に共演を誘っていたそうだ)。そんな彼とバーブラは30年代のスタンダード“The Very Thought Of You”でバーブラと滋味深いデュエットを聴かせてくれる。