THE BLUE HEARTSの新ベスト・アルバム『ALL TIME MEMORIALS II』のリリースと、シングル・ベスト『ALL TIME SINGLES SUPER PREMIUM BEST』の再発を記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! ここでは中面に掲載されているコラムを掲載いたします。
※タワーレコードオンラインは除きます。※別冊TOWER PLUS+は無くなり次第終了となります。※天候や交通事情により配布が遅れる場合がございます。

THE BLUE HEARTS 『ALL TIME MEMORIALS II』 トライエム/メルダック(2020)

THE BLUE HEARTS 『ALL TIME SINGLES SUPER PREMIUM BEST』 トライエム/メルダック(2020)

 

日本語のパンクロックのオリジネーターにして、いまなお数多くのバンド、ミュージシャン、シンガーソングライターに影響を与えて続けているTHE BLUE HEARTS。この不世出のバンドの結成35周年を記念して、新たなベストアルバム『ALL TIME MEMORIALS II 』がリリースされた(結成25周年で発売されたシングルベスト『ALL TIME SINGLES ~SUPER PREMIUM BEST~』(高音質CD Blu-spec CD2)も再発)。

“パンク・ロック”、“チェインギャング”、“ながれもの”などを収めた〈DISC1:meldac side〉、“殺しのライセンス”、“俺は俺の死を死にたい”、“トーチソング”などを収録した〈DISC2:WARNER MUSIC side〉で構成された『ALL TIME MEMORIALS II』を聴けば、このバンドの奥深い音楽性、豊かな詩の世界をたっぷりと体感できるはずだ。

ザ・コーツのボーカリストだった甲本ヒロト、THE BREAKERSのギター・ヴォーカルだった真島昌利。80年代前半の東京モッズ・シーンを象徴する2人が1985年に結成したスーパーバンドで後に河口純之助(ベース)、梶原徹也(ドラムス)が参加したバンドが、THE BLUE HEARTSだ。前身バンドの時代から、パンク・ロック、ロックンロール、ブルース、ソウル、R&Bなどのルーツ・ミュージックを濃密に感じさせるオリジナル・ソングを生み出してきた甲本と真島。両者の才能とカリスマ性が合わさり、よりシンプルな日本語のロックに昇華させたのがTHE BLUE HEARTSの
音楽だ。

〈DISC1:meldac side〉は、初期の3作のアルバム(『THE BLUE HEARTS』、『YOUNG AND PRETTY』、『TRAIN-TRAIN』)から選曲されている。まず紹介したいのは、1曲目の“パンク・ロック”。研ぎ澄まされたバンドサウンドとともに響く、〈僕 パンク・ロックが好きだ〉〈やさしいから好きなんだ〉という歌詞は、“リンダ リンダ”の冒頭のフレーズと同様、THE BLUE HEARTSの無垢な精神性、そして、人間の本質をシンプルに射抜く表現力を端的に示している。少なくとも彼らより前に、こんなにもピュアで普遍的な歌を紡ぐロックバンドは存在しなかった。当時の若者が〈このバンドは自分たちのことを歌っている〉と直感し、熱狂したのも当然だろう。

また、豊かなルーツ・ミュージックを反映した音楽性にも注目してほしい。高速の8ビートとともに突っ走る“ダンス・ナンバー”、初期のビートルズを想起させる叙情的なロックンロール“ロマンチック”、甲本のブルースハープと鋭利なブルースを響かせる真島の歌が絡み合う“ブルースをけとばせ”、カントリーのテイストを取り入れたアッパーチューン“ながれもの”。これらの楽曲からは、性急でダイナミックというパブリックイメージだけではない、彼らの豊潤な音楽世界を実感してもらえるはずだ。

〈DISC2:WARNER MUSIC side〉は、90年代のアルバム(『BUST WASTE HIP』、『HIGH KICKS』、『STICK OUT』、『DUG OUT』、『PAN』)から選出されている。この時期の彼らの音楽はさらに多様性を広げ続けた。グループサウンドの頃のようなノスタルジックな旋律が心に残る“悲しいうわさ”、モータウン直系のビートと洗練されたポップネスが気持ちいい“ 真夜中のテレフォン” 。もしかしたら「え? THE BLUE HEARTSってこんな曲もあるの!?」と驚く人もいるからもしれないが、甲本、真島はロックンロール、ブルースを中心に音楽に対する造詣がきわめて深く、知識も豊富。浴びるように聴いてきたレコードを血肉化し、誰にもマネできない(そして誰もが楽しめる)日本語のロックに結びつける天性のセンスこそが、このバンドの核なのだと思う。オーセンティックなレゲエのリズムと〈永遠のルーキー〉をテーマにした歌が一つになった“キング・オブ・ルーキー”はその好例だろう。

再発されたシングル・ベスト『ALL TIME SINGLES ~SUPER PREMIUM BEST~』(高音質CD Blu-spec CD2)には、“人にやさしく”、“リンダ リンダ”、“TRAIN-TRAIN”、“TOO MUCH PAIN”などの有名な楽曲が網羅され、入門編としても最適。2作のベストとじっくり向い合いながら、日本のロックを大きく変え、決定づけてしまったこのバンドのキャリアをぜひ追体験してほしいと思う。

 


THE BLUE HEARTSを愛する著名人の方々からコメントが到着!

片寄明人(ミュージシャン)
〈GREAT3〉、〈Chocolat & Akito〉としての活動の他、DAOKO、TENDOUJIなど多くのアーティストの作品をプロデュース。NHK-FM日曜16時からの70's 80's洋楽専門番組「洋楽グロリアス デイズ」DJも好評を博している。

結成直後のブルーハーツをライブハウスで観たのは1985年、17歳になる直前でした。心が一瞬で吹き飛ばされ、涙があふれ、暴れまわりたくなるほどのエネルギーが身体を駆け巡る。その夜から世界の見方が変わるような体験でした。平易な言葉で強烈に真実を射抜く、僕にとってはブルーハーツこそが永遠のパンク・ロックです。

 

つじあやの(ミュージシャン)
11月6日(金)スタートWOWWOWオリジナルドラマ「竹内涼真の撮休」の劇中音楽を担当。ポップシンガー〈むぎ(猫)〉のセカンドEP『窓辺の猫 e.p.』にコラボレーションゲストとして参加した“窓辺の猫 feat. つじあやの”収録。

熱に浮かされたようにブルーハーツの歌を歌っていた兄を、最初は姉と笑っていたけど、結局私も姉もブルーハーツの虜になってしまった。それから大人になって、歌詞の凄さにはっとした。ヒロトさん天才って。でも訳も分からず好きになったあの恋が、ブルーハーツそのものだ。10代の頃にブルーハーツに出会えて幸運だった。

 

森田まさのり(漫画家)
「ろくでなしBLUES」「ROOKIES」「べしゃり暮らし」などの作品で圧倒的な人気を誇る漫画家。絵本分野に初挑戦した仏教絵本「とびだせビャクドー! ジッセンジャー!」発売中。

「多分先生好きですよ」とスタッフに教えられて、1stと2ndを続けて初めて聴いた。カッコいい!カッコいいしかない!でももしカッコつけてる人達だったらいやだ。カメラを睨みつけて悪ぶったバンドは見た目で嫌いになる。でも見るとボーカルはボウズ頭で安そうな服着て雪駄履いてにこやかに笑ってた。あれにシビレたんだよ僕は!

 

大久保佳代子(タレント)
お笑いコンビ〈オアシズ〉を結成して今年で28年。テレビやラジオ、雑誌でのコラム執筆など幅広い分野で活動中。Twitter:@OOKUBONBON

“夕暮れ”を聴くと、身体の中の赤い血がいつもの1.5倍早く流れ出して、何かをギュッとしたくなる。ギュッとできる何かのために頑張ろうと思う。生きてるのはすごい事だと思わせてくれてありがとうございます。ブルーハーツに何度も助けられました。

 

森田哲矢(お笑い芸人)
2008年にお笑いコンビ〈さらば青春の光〉結成。株式会社 ザ・森東代表取締役社長。自身初となる著書「メンタル童貞ロックンロール」発売中。Twitter:@saraba_morita

17歳の時、地元の友達に借りて聴いた“情熱の薔薇”の歌詞とメロディがぶっ刺さり、そこからブルーハーツにのめりこんでるうちに気がつけば高校を留年していました。今回のアルバムリリースめちゃくちゃ嬉しいですが、けしてのめり込み過ぎないように気をつけたいと思います。