コラム

ヒロト&マーシー、未踏の地へ! 活動10年目突入&新作『JUNGLE 9』を機に振り返るザ・クロマニヨンズの足跡

ザ・クロマニヨンズ 『JUNGLE 9』 Pt.1

ヒロト&マーシー、未踏の地へ! 活動10年目突入&新作『JUNGLE 9』を機に振り返るザ・クロマニヨンズの足跡

密林からこんにちは! とことんシンプルに研ぎ澄ましたロックンロールをブン回し、プリミティヴな衝動をメラメラと燃やし続ける永遠の原始人が、またも姿を現した!

 EDMとの融合やヘヴィネスなアレンジなど、音楽的な武装/装飾によって、幾多のバンドが多種多様な進化を遂げている近年の日本のロック・シーン。そのなかで、ひたすらソリッドなロックンロールを研ぎ澄ませることで最前線をひた走ってきたザ・クロマニヨンズの存在は、それ自体がひとつのミラクルと言える。日本のロック史にその名を刻んできたTHE BLUE HEARTSTHE HIGH-LOWSを経て、甲本ヒロト&真島昌利の鉄壁コンビが描き出すザ・クロマニヨンズの楽曲は、結成から9年以上が経ったいまもなお、その強度と訴求力を増しながら、多くのリスナーのプリミティヴな情熱を揺さぶり続けている。

 

よりシンプルかつワイルドに

 2005年11月にTHE HIGH-LOWSが突如活動休止を発表、翌2006年7月には甲本ヒロトがソロ・デビュー・シングル『真夏のストレート/天国うまれ』をリリース。THE BLUE HEARTS以来20年に渡って続いてきたヒロト&マーシーのコンビもいよいよ別々の道を進むのか、とも思われた。が、その時すでに二人はnil小林勝(ベース)、Gargoyle桐田勝治(ドラムス)と共に新バンドを結成、アルバムのレコーディングまで完了させていたのだ。その後間もなく、バンド名以外すべての情報を伏せたまま、FM802主催のイヴェント〈MEET THE WORLD BEAT〉への出演を告知。そして2006年7月23日13時41分、ザ・クロマニヨンズが晴れて公の場に〈出現〉した。その直後の〈フジロック〉にも登場したかと思えば、同年9月20日のデビュー・シングル“タリホー”の発表と同時に初の全国ツアーを足掛け4か月に渡って開催(初日は超満員の下北沢SHELTER!)。10月にはファースト・アルバム『ザ・クロマニヨンズ』をリリースと、いきなりアグレッシヴな活動を展開する。

 ロックンロールの野性に忠実であることに関してヒロト&マーシーは極めて知性的であるし、それはTHE BLUE HEARTS/THE HIGH-LOWSの楽曲が何より雄弁に物語っている。そして、ロックにまとわりつく理屈や苦悩を全力で濾過し尽くすかのように、彼らは過去の2バンドよりもさらにシンプルかつワイルドなロックンロールへと向かっていった。『ザ・クロマニヨンズ』に凝縮された、〈私は全部 恥部なんだ/ネガチブ ポジチブ ネイチブ プリミチブ〉という“歩くチブ”の語呂合わせも、鉄道用語のメタファー越しにあっけらかんと下ネタを歌い放つ“連結器よ永遠に”も、〈理屈や計算を排除した野性的なロックンロールにしか鳴らせないもの〉を追求する二人の意志の産物に他ならない。

 『ザ・クロマニヨンズ』はわずか3日、セカンド・アルバム『CAVE PARTY』(2007年)は〈わざとダラダラ〉やっても5日で終了したというレコーディング・スタイル。『CAVE PARTY』や3作目『FIRE AGE』(2008年)をはじめ、古代人をモチーフとしたアルバム・タイトル。4作目『MONDO ROCCIA』(2009年)以降ほとんどの作品で採用されている、完全モノラル録音による一点突破サウンド――それらが渾然一体となって、ザ・クロマニヨンズという本能直結型ロックンロールの世界観を鮮烈に立ち上らせている。

 そして、衝動の化身のようなヒロトのヴォーカル、激しく鋭く聴く者の感情を突き動かすマーシーのギター・プレイと共にそのサウンドを特徴づけているのが、小林勝のタフなベース&桐田勝治のメタル直系ツーバス・ドラムというリズム隊の強力な肉体性である。“紙飛行機”“ギリギリガガンガン”“エイトビート”のようなダイレクトなロック・ナンバーだけでなく、モータウン風のビートを取り入れた“スピードとナイフ”、カントリー~フォーク的な開放感に満ちた“流線型”、ウエスタン映画の音楽を思わせるリズムが印象的な“飛び乗れ!!ボニー!!”といった多彩なサウンドを鳴らしながらも、それらすべてをタイトな躍動感と熱量を宿したスリリングなロックンロールとして叩き付けることで、THE BLUE HEARTS時代からのファンも若い世代のキッズも熱狂の渦へと巻き込んでいる。

 

ヒロト&マーシー、未踏の地へ

 これまで8枚のアルバムを発表、その都度若手パンク・バンドも顔負けの大規模な全国ツアーを展開しつつ、各地のフェスを熱く沸かせてきたザ・クロマニヨンズ。今年7月で活動10年目に突入した彼らがこのたびリリースしたのが、前作『GUMBO INFERNO』から約1年ぶりとなるニュー・アルバム『JUNGLE 9』だ。

ザ・クロマニヨンズ JUNGLE 9 ARIOLA JAPAN(2015)

 4人一丸の鋭利なサウンドと歌がエモーショナルに疾駆するシングル曲“エルビス(仮)”、ボ・ディドリー・ビート越しに〈つまらない生活なんて/笑い飛ばしちゃえよ〉と突き上げる“生活”、激しくスイッチングされるビートと共に生の実感を歌う“生きてる人間”、ラリー・ウィリアムズによる50年代のスタンダード“Bony Moronie”の薫り漂うストレートなロック・チューン“俺のモロニー”、行き場のない少年の憂鬱と恋心を〈パンチラ〉のリフレインと共に燃え上がらせる“中1とか中2”。そして、一瞬一瞬を完全燃焼させながら生きる己の在り方と太古のイメージを鮮烈に重ね合わせた爆走ナンバー“今夜ロックンロールに殺されたい”――2015年に生きる我々の日常を真っ向から抱き止めて、原始のヴァイタリティー渦巻く世界へと誘うような、ザ・クロマニヨンズの高純度結晶と呼ぶべき作品だ。

 11月からは本作を携えて、バンド史上最高の計70本に及ぶ全国ツアー〈TOUR JUNGLE 9 2015-2016〉を開始する彼ら。ヒロト&マーシーにとっては、ひとつのバンドで〈9枚目〉のオリジナル・アルバムを出すのはこれが初めてのこと。彼ら自身にとっての未踏の地をなおも意気揚々と突き進むそのエネルギーが、ロック・シーンの〈いま〉と〈これから〉を力強くリードしていく――そんな血沸き肉躍る期待感を、この『JUNGLE 9』は確かに伝えてくれるはずだ。

TOWER DOORS