WHAT BREED NEUTRAL PUNKS
名義や作品によって見せる顔が違いすぎ!? 横山健を育てたさまざまな音楽たち
BBQ CHICKENSを聴けば、横山健がスレイヤーやアンスラックスといったスラッシュ・メタルを通っていることはあきらかだが、10代の頃の彼は、オジー・オズボーンやアイアン・メイデンといった往年のヘヴィー・メタルを中心に、ポップスからパンクまで幅広い音楽を聴いていたそう。
そんななか、バンドを始めるうえで彼がいちばん衝撃を受けた存在がブルーハーツ。彼らからは、〈まず自分らしくあれ〉ということを教えられた(しかし、その模倣から抜け出すにはそれなりに時間がかかったらしい)。
ほかにも、ラモーンズやクラッシュといったいわゆるオリジナル・パンクからハードコアまで、あらゆるパンク・サウンドを聴いてきたようだが、とりわけ忘れてはならないアクトが、ハイスタに影響を与えた英米のメロディック・パンクを代表するスナッフとNOFXの2組。特に前者からは音楽性のみならず、多種多様なカヴァーを楽しむユーモアセンスも含め、バンドの在り方からも近い感性が窺える。
また、たびたびカヴァーしてきた50~60年代のポップス抜きに彼のバックグラウンドを語ることはできない。特にお気に入りは“Kokomo”を取り上げたビーチ・ボーイズ。横山が作るメロディーやハーモニーからもそのテイストは感じられるだろう。それ以外にも、意表を突く改編ラインナップは彼のベースにある豊かな音楽性を伝えるもので、例えばデュラン・デュランといった80年代のMTVヒット勢に加え、「オズの魔法使い」の劇中歌〈虹の彼方に〉など、映画音楽からの選曲も少なくない。
そして新作の『Sentimental Trash』では、ギブソンやグレッチといった箱モノ・ギター(セミアコ/フルアコ)を弾きはじめたことを契機に、パンクに出会う以前に聴いていたチャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーらロックンロールの意匠がこれまで以上に表出。さらに巨人たちのなかでは、社会に物申すミュージシャンとしてウディ・ガスリーやジョン・レノンを尊敬しているという。加えて、トリビュート盤に参加した矢沢永吉やシンガー・ソングライターであるSION、柴山俊之(サンハウス)、内田勘太郎(憂歌団)といった日本の大先輩に対しても、精神的なメンターとして敬意を表す発言をしばしば残していることを付け加えておきたい。