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思いを昇華して

 楽曲が近しい雰囲気にならないよう、作家陣とは〈優しい作品〉というテーマを共有したり、しなかったりと調整しつつ、自身も3曲の作詞を担当。和田唱の作曲によるジェントルなミディアム“どうしようもなく辛い夜は”、佐伯youthKと共作したリズミックな疾走チューン“確かにそうだ”、nikiieとのコラボとなった繊細なピアノ・バラード“優しさは誰のためにあるんだろう”がその柱となっている。

 「“どうしようもなく辛い夜は”を書いたのは去年の10月ぐらいかな? 当時自分が受けた傷だったり、その当事者だったりを思いながら、どこか救いのある曲というか……自分が歌いながら、あと、聴いてる人が耳にしたときに少しでも気持ちが楽になるような曲になればいいなと思って書きました。この曲はアルバムの中でも2曲目か3曲目に生まれた曲だったんですけど、〈和田さんに書いてもらえたらいいね〉って夢物語みたいに語ってたらディレクターが話をしてくれていて、〈デモが届いてビックリ〉みたいな(笑)。
 “確かにそうだ”は改めて聴くと今の世の中の状況にかぶるようなところもあると思うんですけど、もともとは自分と、自分を見てくれてる人たちに対してのメッセージというか……自分はどんどん変わっていったりするし、結局変わらない部分もあるけど、ファンの皆さんは僕の何が好きなの? 自分が変わっていくとみんなはいなくなるの?とか、逆に僕が離れていってるのか?とか。人間の考えは生きてるものだから、こうじゃなきゃいけないとか、それに縛られることは絶対にしたくないし、とか……そんなふうにぐるぐるぐるぐるしてることを、愚痴っぽいことも含めて書いてみた感じで、自分の拙い言葉を詩的に、音楽にマッチした表現にしてくれたのが佐伯君です。
 “優しさは誰のためにあるんだろう”は自分の身の回りで起きたことが題材になっていて、見方によっては恋愛っぽい雰囲気がありますけど、実際は友人との関係性を書いた曲です。物凄くつらくてどうしようもなくなったとき、まあ、良かったことも含めてですけど、アーティストは曲にすることでその考えや思いを昇華するっていう話を聞いて、自分もやってみようかと。〈優しさは誰のためにあるんだろう〉って言葉はnikiieさんが考えてくれたんですけど、自分でも〈ああ、確かに〉と思って。自分が書いた言葉がこんなふうに変化するんだ、と。共作の良いところですよね。優しさはその人のためにならないかもしれないけど、じゃあ、この気持ちは誰にあげたいものなんだろう、この気持ちはどこにいっちゃうの?っていう思いがメロディーに乗ったときは衝撃でした」。