DEVU(LOVE)CHANGES EVERYTHING!
日本のオペラ界をリードする歌手4名と歌を知り尽くしたピアニストによる5人組。コロナ禍の自粛中にそれぞれが自分をみつめ直し、〈歌うこと〉の喜びと情熱を結集させた5年ぶり待望のサード・アルバムが登場。
IL DEVU 『LOVE CHANGES EVERYTHING』 Columbia(2020)
前半は幅広いジャンルから日本語の作品をセレクト。岩谷時子(作詞)& いずみたく(作曲)コンビの傑作で、故本田美奈子も闘病中にアカペラの名唱を遺している“夜明けのうた”を皮切りに、どの曲も人生の意味について問いかけるような重みのある曲ばかり。スローなテンポで〈大人のうた〉に生まれ変わった“アンパンマンのマーチ”もそんな楽曲のひとつ。
「これまでもコンサートでやなせたかしさん作詞の歌曲をとりあげてきたが、子どもの頃から親しんでいる楽しい主題歌にこんなにも深いメッセージが込められていたことにあらためて感動を覚えました」【青山】
東日本大震災復興支援プロジェクトから生まれたお馴染み“花は咲く”も書き下ろし編曲の妙で聴かせる。
「練習にも立ち会ってくれたアレンジャー本人から曲に対する想いを伺ったことで、解釈がより深まった。時代を超えて歌い継がれるべき名曲ですね」【山下】
デビュー作から毎回、収録を続けている現代の人気作曲家・木下牧子作品は今回の“鷗”も必聴だ。
「独唱版を元に木下さん自らが編曲を担当。我々ひとりひとりが持っている声の個性を引き出しつつ、一方ではこの4人にしか出せない4層からなるハーモニーの美しさを見事なまでに活かしてくれました」【望月】
後半にはアルバム表題曲でもある、巨匠アンドルー・ロイド・ウェバー作のミュージカル・ナンバーを始めとする世界のうたを4曲。注目はビリー・プレストンの楽曲を1975年にジョー・コッカーがあの男性的な声でカヴァーしてヒット・チャートを賑わせた“ユー・アー・ソー・ビューティフル”だろう。
「個人的にも大好きな曲です。この歌のコツは、何度も繰り返される You are so beautiful それぞれに同じではなく違う感情を込めることだと思います(笑)。Can't you see の部分はテノール・チームの美しい高音の響きをお楽しみ下さい」【大槻】
今作も4人が織りなす声に寄り添うピアノが絶品。
「歌唱をただ追いかけるだけでは物足りないし、かといってピアノが道を示すので、俺についてこい!でもダメ。バランスを保ちつつ、上手くみんなをレールに乗せられるようにいつも奮闘しています」【河原】
中止になっていたコンサートも10月の後半から徐々に開催の兆しが見え、期待に胸が膨らむ。
「どんなに困難な状況でも音楽にできることはきっとある、信じていれば全てを変えられるはず」【一同】