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メロディーやリズムへの言葉のハマり方が大事

――現在の、ルーパーを使ったライブのスタイルに行きついた経緯は?

「地元の先輩がルーパーを使っていたので存在を知ったんですけど、秦さんや山崎まさよしさんのような自分が好きなアーティストも、結構ライブでルーパーを使っているんです。僕は〈やってみたいことは、とりあえずやる〉というシンプルなスタンスで活動しているので、とりあえず使い始めてみました。ルーパーは、ライブの流れに緩急をつけることができたり、アコギ1本の弾き語りスタイルを崩したりせずに、自分がイメージした世界を表現できるところがいいなと思いますね。

ただ、それこそ秦さんのように、根本的にはギター1本の弾き語りで勝負できないといけないと思っているので、ルーパーはアリだけど、同期を使うのはイヤなんですよ。あくまでもリアルタイムで、作りものじゃなくて〈その場〉でやる。そのライブ感が僕にとっては大事ですね」

2019年のライブ映像
 

――弾き語りでルーパーを使う人たちって、リズムやグルーヴという部分を非常に重要視している人たちが多い印象もあって。伊津さんの楽曲も非常にリズムを大切にしているように感じるんですよね。それは、歌詞の乗せ方なんかにも表れていると思うんですけど。

「リズムの強い音楽は好きですね。今まで挙げてきた人たちとは別のジャンルですけど、小3くらいからずっとマイケル・ジャクソンが好きなんです。なので、子供の頃からリズム感は根付いていたと思うし、あとは、星野源さんとかにも影響は受けていると思いますね。実際、対バンのバンドのドラムの人に〈ドラムをやった方がいいんじゃない?〉とか、〈ドラマーの視点から見ても(リズムの存在感が)すごかった〉と言われたこともあって。我ながら、リズム面はいいものを持っているんだと思います(笑)。そういう部分が、言葉の跳ね方なんかにも繫がっていくんだろうなと」

――今回のアルバムのなかでも、“カラフル”なんてヒップホップのフロウのようだし、“そんなこんな”も韻の踏み方が気持ちいいですよね。

『DREAMERS』収録曲“カラフル”
 

「例えば“カラフル”の2番のAメロなんかは、自分としてもものすごく気持ちのいい言葉の乗り方をしていると思います。〈上手くいかないことばかり/画面の中リア充のストーリー/交代したい 辛い事ばかりが重なり合う世界〉っていう、この部分ができたときに、〈新しい! 楽しい!〉と思いました(笑)。今まで、こうやって言葉を詰め込んだようなハメ方をやったことがなくて、やってみたいと思っていたんですよね。

やっぱり、メロディーやリズムへの言葉のハマり方ってすごく大事。曲を作っていると、メロディー、リズム、言葉が一緒に出てくることもあるんです。そのときの気持ちよさって、すごくて。きっと、さっき挙げたような普遍的な曲たちも、メロディーとリズムに対して、言葉がいちばん気持ちいい形でハマっているんだろうなと思う。自分の曲もそうあればいいなと思います」

――歌のリズムにフォーカスしたときに、すごく不思議な、独自のリズム感になっていく人もいるじゃないですか。例えば、崎山蒼志さんのような。でも、伊津さんの歌のリズムはリスナーも共有できる。曲を聴いている人たち同士で一体感を得ることができるものだと思うんです。

「そうですね。今って、他の人がやらないことや、新しいことをやらないといけない、みたいな風潮があるような気がするんですけど、僕は普遍的なもの、時代を超えて残るものを作りたいと思っているので。そうなってくると、今の〈新しいことをやらないといけない〉という風潮に対しては、〈そういうことじゃないんじゃないの?〉と思ってしまうんです。今回の作品も、〈みんなに向けて〉なんて大仰なことではないですけど、自分と同じような音楽が好きな人は、きっと好きになってくれると思うんですよ」