悲しみも愛しさもすべて思い出にして、この街で息をしてきた彼女の生活と記憶――武道館の大舞台とその先を見据えた2021年の心境をアユニ・Dが語る!
傑作『浪漫』を引っ提げた昨秋の〈LIFE IS HARD TOUR〉をLINE CUBE SHIBUYA公演で締め括り、来たる2021年2月13日に日本武道館での単独公演〈生活と記憶〉の開催を発表したPEDRO。田渕ひさ子(ギター)、毛利匠太(ドラムス)とのトライアングルも一体感を増すなか、まだBiSHでも立っていない大舞台に、ベースを始めて3年で辿り着いたアユニ・Dはいま何を思うのか。そんな晴れの日に先駆けて映像作品「LIFE IS HARD TOUR FINAL」とニュー・シングル“東京”を同時リリースする彼女に話を訊きました。
武道館に立てるイメージ
――まず、「LIFE IS HARD TOUR FINAL」は昨年行ったツアーのファイナル公演を収めた映像作品ですが、総括するとこのツアーはどんなものでしたか。
「その前の春にやる予定だった〈GO TO BED TOUR〉がなくなっちゃって、正直いろんな面でけっこう暗い気持ちにずっとなってた部分があって。それでも凄い勇敢なスタッフの方々に恵まれて無事にやれたツアーでした。人数が絞られたり、マスク必須で声は出しちゃダメとか、いろいろルールが決められてたけど、やっぱり同じ空間で同じ時間を過ごせて同じ音楽を楽しめるライヴができたのは凄い大きかったです」
――ファイナル以外の全国8か所は1日2公演でしたが、フルのライヴを1日2回やった経験は?
「なかったですね。BiSHでも1日2公演ってホント2~3回くらいしかやったことなくて。なので、1日で合計40曲以上もやって、もう指は血だらけになるわ、肩はボロボロになるわ。ひさ子さんも毛利さんも同じだったんですけど、精神的にも体力的にも壁が高かったぶん、達成感は凄かったです。疲労も凄いあったんですけど、気持ち良さも倍でしたね」
――ツアーのドキュメンタリー映像を拝見しても、いわゆるバンド感やチーム感みたいなものが、スタッフの方々も含めて凄い高まっている雰囲気を感じました。
「そうですね。ホントにチームというか、関わってる皆さんが愛を持って一緒に支えてくださって。どっちも楽しいんですけど、BiSHって言葉で表せない独特な関係性なので、ほぼ毎日一緒にいるっていうのもあって、プライヴェートではメンバーともそんなに会わないし。でもPEDROは季節労働なので、会う時って必ず久しぶりなんですよ。そこがたぶんBiSHと大きな違いなのかなって思います」
――そんななかで決まった武道館はもう即完しているわけですけど、改めてその場所に臨む気持ちを教えてください。
「私は絶対的にここに立ちたいって目標がそんな明確にはなくて。BiSHは私が入るずっと前からメンバーが〈東京ドームに立ちたい〉〈武道館に立ちたい〉とか思ってやってきているので、大好きなこの人たちがそこをめざしてるから私もがんばろうって思ってきたんですけど。正直、いままで活動してきたなかで、武道館に立てるっていうイメージを持ったことすらなかったので、武道館って東京ドームよりも夢のまた夢という認識がありました。決まったって聞いた時は衝撃と興奮で膝から崩れ落ちたんですけど、数秒後には混乱と恐怖が同じくらいの勢いで来ましたね。〈私なんかが立っていいのかな〉とか、いろんな感情がずっと心の中にあります」
――観る側の立場で武道館に行ったことはありますか?
「ないんですよね。だからたぶん〈あの超カッコ良いステージが夢だ〉みたいな感覚が湧いてこなくて。映像では何度も観てるんですけど」
――ということは、自分のステージが本当に初の武道館ってことですね。当日の構想などはもうありますか?
「う~ん、私、部屋でベースを弾いて歌ってるのも凄い楽しいんですよ。ずっと一人でやってるだけなんで、投げっぱなしのキャッチボールみたいな、キャッチしてくれる人も投げ返してくれる人もいないんですけど。楽しさで言ったらライヴには全然及ばないけど、一人の部屋だと人目も何にも気にしないで勝手にいろいろ妄想したり、好き放題に暴れられるというか。小さい頃から内弁慶の外地蔵みたいな性格なので、人に見られる場所で目立つことをやると、会場の大きい小さい関係なく、緊張で縮こまっちゃうんですよ。ビビってるっていうか。それを凄いなくしたいなって思ってるので、武道館でも自分の部屋でベース弾いてるくらい気持ち良く演奏できればいちばんいいなって凄い思ってます」