セントチヒロ・チッチが多彩な嗜好と溢れる人間味を詰め込んだ、スパイシーでカラフルな音世界――大物ルーキーがいよいよ待望の初アルバムをリリース!

ひとりで生きていかない

 「セントチヒロ・チッチとしてBiSHで生きてきたから、私はいまこうして表現ができているので、まったく関係ない名前にはしたくなかったんです。だけど〈セントチヒロ・チッチ〉名義のままだと新しいことに自分が挑戦できない気がしてCENTという名前にしました。CENTって〈100分の1〉とか〈小さな〉っていう意味もあって、今回の『PER→CENT→AGE』みたいにいろんな言葉が生まれるし、言葉を送る(sent)気持ちにもなれるワードだなと思って。もしかしたらCENTは今後バンドになるかもしれないし、違う形の何かになるかもしれない。だから、どんな形にも変形できるCENTになりたかったんですよ」。

CENT 『PER→CENT→AGE』 WACK(2023)

 BiSH解散を経て、先日は〈加藤千尋〉名義での俳優デビューも発表したセントチヒロ・チッチ。そんな彼女の音楽プロジェクトが、昨夏の“向日葵”でお目見えし、“すてきな予感”を経て、このたび初のアルバム『PER→CENT→AGE』を届けたCENTだ。近年はTHIS IS JAPANやBIMの作品に参加したり、突然少年のMVを監督したり、「スパイストラベラー」を通じて櫻井誠(Dragon Ash)らとSPiCE TRAVELERSを結成するなど、持ち前の社交性と好奇心で多彩なアーティストと独自に交友関係を広げてきた彼女だが、自身のソロ始動については最後まで熟考していたという。

 「そもそも解散前に何かを始めるつもりは最初なくて、BiSHを全うするまではBiSHで生きていくっていう選択肢もありました。私の頑固な性格は自分でわかってるから、別のことに気持ちを向けたら自分に嫌気が差すんじゃないかと思って。だけど、5人が自分の生きていく方向に目を向けているなかで、これから先も音楽を続けたいのに、変に出し惜しみして〈BiSHを全うしてる自分〉を頑固に守ってるのってダサいなって思えてきて。BiSHが終わってからスタートするのもかっこいいけど、いま溢れそうなものを表現しないことには何も始まらないし、自分がどう生きていくかを自分で決めることが大事だと思って」。

 誰よりもBiSHの活動にこだわってきた想いは言うまでもないが、舞台裏では自己表現への試行錯誤も始まっていた。

 「曲作りはコロナ禍の前、いつか一人で動き出すための準備をしようって渡辺(淳之介:WACK代表)さんから提案してもらって、何にも決まってない頃から始めてました。1か月に10曲提出するっていうノルマは全然守れなかったけど(笑)。ギターもまったく弾けなかったのが、BiSHが全員コロナで1か月休んだ時期に急にコードチェンジとかちゃんとできるようになって、だんだん楽しくなって。そこからストックを貯めてって、2年くらい準備段階をやってました。今回アルバムに入ったものは、その頃に作ったお気に入りの曲たちです。“向日葵”や“夕焼けBabyblue”はギターから始めて、ちょっとずつLogicとかも教えてもらいながら色付けして、弾けないギターは友達に口頭で伝えて入れてもらったり、わかんないベースとかドラムのパターンも友達に相談したりして。〈ひとりで生きていかない〉って決めてるんですよ、私。だから、たくさん人に頼るし、人に助けられて生きるのって何も恥ずかしくないし、その時の私は音楽を作ることに対してはまっさらだったので、いろんなことを学んで、教えてもらいながら、自分も成長して曲を作っていくっていう感じでした」。