[特集] WACK TO THE FUTURE '23 WACKの現在と未来
繰り返す思い出は振り向かずに駆け抜けてきた……というわけで、ありがとうBiSH! そして、しぶとく先へと進むWACKの未来はここからどうなる?
BiSH解散とメンバーのその後、WACKの変革、各グループの今後――渡辺淳之介がすべてを語る!
この6月29日に東京ドームで解散ライヴ〈Bye-Bye Show for Never〉を開催し、8年の活動に幕を下ろしたBiSH。6人がそれぞれキャリアの節目を迎えた一方で、彼女たちの躍進に牽引される格好で一大勢力となった所属事務所のWACKも大きな転換期に差し掛かっています。BiSやGANG PARADE、ExWHYZなど各グループの動きも活発になり、「BiSH THE NEXT」などの新展開も進むなか、まもなく設立10年目に入るこのタイミングで同社代表の渡辺淳之介に話を訊きました(取材は5月に行いました)。
WACKは変革期にある
――BiSHの解散が目前(取材時)というタイミングなんですけど、旧BiS解散の9年前と比べてまた違った感慨のようなものはありますか?
「いや~、日めくりカレンダーみたいな感じで、何も問題が起きないでくれって思うのはやっぱ変わんないっすね。BiSの横浜アリーナもそうでしたけど、東京ドームっていう初めての場所なんで、〈もう早く無事に終わってくれ〉としか思ってないです(笑)」
――BiSHはどんな8年間でしたか。
「8年やってきて、僕も最近よく振り返るんですけど、紅白もあったし、東京ドームもあって。長い夢を見てるみたいな感覚で、もちろんメンバーと一緒に見てきた夢ではあるんですけど、いろんな夢が叶いすぎちゃったなというのが正直な気持ちです。もともとここまでの規模の事務所にしたかったわけでもないし、ホントにマンションの一室とかでシコシコやりながら〈好きな音楽で一生メシ食えたらいいな~〉ぐらいの感覚だったんで」
――旧BiSの最後にTHE YELLOW MONKEYの“プライマル。”をカヴァーしていたのが、BiSHのラスト・シングルでは吉井和哉さんと直接仕事されて。確かに叶いすぎですね。
「そうなんすよね。たぶん一生かけてもできないようなことが、いろいろできちゃったので」
――そうなると、やりたいことが渡辺さんにこの先あるのかっていう(笑)。
「いや、ホントにそうなんですよ。29歳で会社を立ち上げて、30でBiSHが始まって……〈死ぬ気でがんばる時期は過ぎたよな〉とは思っていて(笑)。〈俺、次に何をやりたいんだろうな?〉みたいな感覚は正直ありますね。でも、そうは言いながら、やっぱりWACKはギャンパレをはじめとする子たちを背負っているので、彼女たちにも夢みたいなものを見たいし、逆に言うと、BiSHができたなら絶対に不可能ではないはずなんで、そこも含めて彼女たちを見ていかなきゃいけないと思ってます。それで言うと、ここ1~2年は後進に何をできるか考えていて、去年〈WACK塾〉っていうのを開講したのがおもしろかったんすけど、その成績優秀者だった高校生の子が立ち上げた会社(ALL INc.)に出資してたり。今回のKiSS KiSSもそうですけど、積極的に僕が関わって新しいことをするみたいなことは意識的にやっていますね」
――意識の変化にコロナもやっぱ関係ありました?
「コロナ禍には逆に助けられました。時間を逆に作ってもらえたというか、そのなかでBiSHのベストが出せたり、その利益をライヴハウスに還元するってことができたり、初めてアルバムがオリコン1位獲ったのもコロナ禍だったので。でもこの時期に〈いきなり何かがスパンッて絶たれることって実際あるんだな〉って感じたのは確かなので、後進に何かを伝えていきたい気持ちになったのは確かにコロナの影響もデカいかもしれないっすね」
――BiSH解散以外の大きな変化としては、松隈ケンタさんがサウンド・プロデュースから離れたことですね。
「はい。松隈さん本人も言及してますけど、話し合いを重ねるなかで、いわゆる独占的パートナーシップみたいなものは解消になりました。僕が死ぬ気でがんばった時期には常に松隈ケンタが一緒に死ぬ気でがんばってくれていたと思うし、逆に言うとずっとSCRAMBLESに頼りきって甘えてた部分がなくなったので、いまはみんな制作でヒーヒー言ってますね(笑)」
――どういう経緯で?
「BiSHの12か月連続シングルを出すのが一昨年の夏ぐらいにもう決まっていて、その前後から松隈さんとずっとディスカッションを交わしてたんですよ。僕がいまの音楽のトレンドに興味が出てきて、いろいろ聴くようになった時に〈あっ、これは変えていかないとマズいな〉って思ったひとつが、サウンド・プロダクションだったんすよね」
――そういう意見はあまりしてこなかった?
「それまでは僕がマネジメントの部分に必死すぎたのもあるし、単純に松隈さんがめちゃめちゃ良い曲を作ってくれていたのでトレンドとか何も気にしてなかったんですよね。でも変わらないことが僕の中でどんどん気になってきてしまって。松隈さんの思うところも含めてディスカッションを重ねて、これは僕の側からだけの意見ですけど、最終的にはお互いにどうしても譲れない部分があったっていう感じですね。まあ僕は結局松隈さんが気になっちゃうんで、新しい学校のリーダーズの曲とかも聴いちゃうんですけど(笑)」
――音そのものへの愛着もありつつ、昔から聴いてる人はお二人の関係性も込みで受け取っていた部分も大きいと思うんですよ。
「よく知ってる人ほどそうだと思います。でもお互い大人ですし、譲れない部分はあるわけで、長年やっているなかで方向性の違いというか……まあ、僕が松隈ケンタの一番のファンだというのはもうずっと絶対に変わらないので」
――そのへんの気持ちは今年のオーディション合宿内でもお話しされていた通りですね。
「はい、またいつか一緒にやりたいとは思ってるんですけど、現段階では……という感じですね」