2020年のベストR&B作品のひとつがフィジカル化。グレイス・ジョーンズにリスペクトを捧げるアートワークからも伝わる誇り高い美意識で全編を覆いつつ、サウンド面では自身が夢中になっていたであろう90〜2000年代R&Bをオマージュしており、そして何よりシンガーとしての高い素養を披露し尽くした充実作となっている。今様なクールネスも漂うものの、カニエ作のアッパーな“Made It”や夫イマンと共演した“Wake Up Love”などの温かくソウルフルな路線、またアリシア・キーズを引用したDJキャンパー作の“Come Back To Me”や、エリカ・バドゥ“Next Lifetime”を本人を招いて再構築した“Lowkey”など、音楽的ルーツを曝け出すような場面でのエモーショナルな歌唱が抜群だ。