三浦大知が、2020年11月にリリースした『Antelope』(タイトル・トラックの先行配信は10月)以来、約5か月ぶりのニュー・シングルにして2021年初の作品『Backwards』を4月21日(水)を発表する。

リリースに先んじて、3月6日にInstagramのストーリーでは謎めいたカウントダウンが始まっていた。〈新曲?〉〈いや、ニュー・アルバム?〉とファンが期待を膨らませていたところ、3月12日に新曲“Backwards”をリリースすることが発表されたのだった。ここでは、その先行曲“Backwards”について語ってみたい。

2020年の三浦大知は、前年から続くツアー〈DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2020 COLORLESS〉が新型コロナウイルス感染拡大によって延期に見舞われながらも、すぐさまInstagramを介して自宅から配信した〈1 Song Home Live〉を敢行、さらに多くのライブ映像作品を各プラットフォームから配信しつつ、オンライン・ライブ〈DAICHI MIURA ONLINE LIVE The Choice is _____〉を実施した一方で、新曲“I’m Here”“Yours”“Not Today”“Antelope”をリリースしている。また、UTAの呼びかけで多数のアーティストと共演した“Be One”Taka(ONE OK ROCK)と清水翔太が中心となったプロジェクト〈[ re: ]〉の“もう一度”絢香 × 三浦大知での“ねがいぼし”と、コロナ禍を逆手に取った新鮮なコラボレーションも多かった。

コロナ禍の閉塞感を吹き飛ばすような勢いに満ちた活発な動きっぷりと、フットワークの軽さ(これは、おそらく彼をサポートするチームの結束力もあってこそだろう)。〈僕はめちゃくちゃ切り替えが早いので(中略)次にできることは何かを考え始めました〉と語っていたとおりに力強い活動は、先の見えない日々を生きるファンを勇気づけていたはず。三浦大知は、コロナ禍における音楽活動や発信方法をいち早く模索して実行していたし、それはファンに歌やパフォーマンスを届けるのみならず、他のアーティストの道標にもなっていたのではないだろうか。

さて。今回の新曲“Backwards”は、作詞・作曲・プロデュースをNao’ymtが手がけている。“I’m Here”、『片隅 / Corner』(2019年)という近作はUTAとのタッグで作り上げられていたが、ここにきてNao’ymtとの新曲が届けられた。“Blizzard”(2018年)から3年ぶりのNao’ymtとの作品、ということになる。

“Inside Your Head”(2008年)以来、常にコラボレーションを続けてきた三浦大知とNao’ymtとの作品づくりは、ダンス・パフォーマンスも含めた総合的な作品『球体』(2018年)でひとつの頂点を極めたと言っていい。コンセプチュアルな構成力と静謐かつ透徹した音世界の構築によって高い評価を得た『球体』から一転、この“Backwards”では、力強く推進力を持ったビートと煌びやかなシンセサイザーのシーケンスが中心となっている。

“Backwards”の打ちつけるようなリニアなビートやシンセ・リフが楽曲を牽引するさまは、どこかウィークエンドのヒット・ソング“Blinding Lights”(2019年)をほうふつとさせる。一方で、s.h.i.が指摘するように、2番のAメロと2番のサビ後のCメロではテンポが1/4と1/2になる仕掛けが施されており、終始早いテンポで引っ張っていく楽曲だからこその試みを聴くことができる。この緩急のつけ方や音数が減るサビ前のBメロ(ブリッジ)などが、楽曲に緊張感とスリルをもたらしているのだ。それに応じて、歌やミュージック・ビデオで観られるダンスには、まるで伸び縮みしているような自由なリズム感覚があふれている。中心となっているビートはシンプルだが、楽曲全体としてはとてもドラマティックだ。

歌については、声が左右のチャンネルにパンニングされ重ねられたBメロから、それを蹴破るかのように〈気配〉という一言を歌い上げるヴォーカルが音場の中央から飛び出してくるサビ直前のパフォーマンス、およびヴォーカルのミキシングが素晴らしい。また、2番に入る直前のブレス遣いとラスサビのヴォーカルの掛け合い、絡み合いも、官能的で圧倒的だ。

三浦大知が表紙を飾った「Rolling Stone JAPAN vol.14」の巻頭特集(先のs.h.i.も、バイオグラフィーの詳説や近年の音楽性の分析などでがっつりと論考を寄せている)のロング・インタビューでは、Nao’ymtから届けられた“Backwards”について、閉塞感に対するフラストレーションや怒りを表現した攻撃的な楽曲だった、と感想を語っている。これまでの三浦大知の音楽にはなかったその攻撃性や怒りを、いかにして三浦大知流のエンターテインメントに昇華するか。その挑戦の結果は、実際の楽曲やMVを見れば明らかだ。

苦境に耐え忍びながら模索を続けた2020年。怒りに駆られることもあったかもしれない。しかし、そこから閉塞的な状況を打破して、前へと進む2021年へ。〈この場所にはもう未来はない〉と歌われる“Backwards”は、2020年の先にある新しい景色を描き出している。この曲は三浦大知の最新のモードを伝えるものであると同時に、共に歩む聴き手のハートに火をつけてくれるものだ。“Backwards”にはネガティヴな重みもあるが、聴いていると自分自身の内側で前向きなエネルギーが湧き起こり、ぐつぐつと煮えたぎるのを感じる。

4月21日にリリースされるシングルにはカップリングとして新曲“About You”“Spacewalk”“Didn’t Know”が収められ、計4曲となる。“About You”はNao’ymtが、“Spacewalk”と“Didn’t Know”はUTAと三浦大知が制作したものだということで、前半と後半でちがうテイスト、方向性を楽しめる構成になっていそうだ。全曲を聴けるのが、いまから楽しみでならない。

“Backwards”の配信リンクはこちら

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年4月21日(水)

■CD+Blu-ray
品番:AVCD-98070/B
価格:2,200円(税込)

■CD+DVD
品番:AVCD-98069/B
価格:2,200円(税込)

■CD ONLY
品番:AVCD-98071
品番:1,100円(税込)

TRACKLIST
CD
1. Backwards
2. About You
3. Spacewalk
4. Didn’t Know

DVD & Blu-ray ※2形態共通
1. Backwards -Music Video-
2. About You -Choreo Video-