全国のタワーレコードスタッフによる、世間で話題になる前のアーティストを己の耳と直感だけ信じて選んだ〈タワレコメン〉でK-Pop初の選出となったCIX。コロナ禍で活動が大きく制限されて、伝えられなかった想いやストーリーを楽曲に込めた、CIXから日本のFIX(ファンの呼称)へのポジティヴなメッセージとして〈未来への約束〉の一曲と位置づけたジャパン・セカンド・シングル『All For You』がリリース!

CIX 『All For You』 ワーナー(2021)

 

韓国では2019年7月に“Movie Star”でデビューして以来、“Numb”、“Jungle”と悩める若者を投影する楽曲が話題となったCIX。デビュー3か月後の2019年10月には早くもジャパン・ファーストEP『HELLO Chapter 1. Hello, Stranger』をリリース、翌月には日本でのDEBUT SHOWCASEが行われ、会場を埋め尽くした観客と大歓声に応えるようなパワフルなパフォーマンスを披露し、素晴らしい日本活動のスタートを切ったことも記憶に新しい。

その後K-Pop初のタワレコメンとして選出されたジャパン・ファースト・シングル『Revival』がリリースされたのは2020年4月1日。K-Popのデビュー曲としては異例のミディアムテンポのオリジナル楽曲(作曲・編曲は三浦大知や東方神起、BTSなどに楽曲を提供しているUTA)で、声の特徴をいかしたパート割の素晴らしさ、韓国の楽曲では気づかなかったメンバーのしなやかな表現力も印象的だった。恋愛がテーマではあるが、喜怒哀楽を積み重ねることで時間と共に苦しみから〈再生〉し成長する姿を描いた“Revival”という楽曲は、偶然とは言えこの時期に困難な状況で打ちひしがれていた私たちにとって、寄り添ってくれるような優しい世界観に癒しや救いを感じた人も多かっただろう。そんな中でリリース後の来日イベントやライブが次々と延期・中止を余儀なくされ、CIXもFIXも歯がゆい思いで日々を過ごしてきたに違いない。

それからまる1年、日本のFIXに向けて制作された楽曲“All For You”は――ずっと会えないこの1年間、毎日の日常の中で感じた伝えたい想い、いろいろな話がたくさんあって、まだ会えないけれども、きっと会える日が来るから、その日が来るまで信じて待っていてほしい。そしていつも心はずっと君のそばにいて、繋がっている――と1年間を振り返りながらも、未来への希望を切に願う姿を描いている。CIXからFIXに宛てた〈未来への約束〉というメッセージが柔らかなメロディーにのって、切ないメンバーの歌声でつづられていく。“Revival”で見せた新たなCIXの表情を更に感じることができるエモーショナルかつポジティヴな楽曲だ。

そして通常盤A、Bそれぞれに収録されるカップリング曲も“All For You”につながるストーリーが描かれている。通常盤Aに収録された“With you”は遠く離れているキミを思いながら、いつか会える日を待ちわびている切ない気持ちを歌い上げる。通常盤Bに収録された“Cinema(Japanese Version)”は韓国の最新アルバム『‘HELLO’Chapter Ø. Hello, Strange Dream』のリード曲。季節が巡り、新たに2人が会えた瞬間をまぶしく美しい、光輝くハッピーエンドの映画のラストシーンにたとえたポップな楽曲は、3連作〈HELLO〉シリーズのプロローグ曲として、辛く苦しい以前の美しい時代を表現した曲である。

苦悩した日々を描いたこれまでを乗り越えた末に、やっと答えを見出した彼らからのメッセージが2021年4月14日、FIXのもとに届けられる。まだ先の見えない暗闇のような道を歩いている我々にとって、いつか訪れる一筋の希望の光を指し示す〈約束〉がここにある。そしてその先には光り輝くハッピーエンドが待っている。その日を信じて、その日まで『All For You』を何度も聴いてもらいたい。〈きっと繋がっている〉――そのCIXの気持ちが感じられるはずだ。