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ドリーム・シアター+スティーリー・ダン+J-Pop=“Cry Baby”

“Cry Baby”がファン層以外からも注目されている理由としては、〈ドリーム・シアター※4+スティーリー・ダン+90年頃のJ-Pop的〉な曲調の面白さ(どことなく「ファイナルファンタジー」シリーズのサントラに通じるところもある)も関係しているのではないかと思われる。

藤原が「主題歌という形でコラボさせてもらっていなかったら、開かれなかったかもしれないバンドの新しい扉が開けた気がしているんです」と言うように、この新境地を機にOfficial髭男dismがこれからも様々な名曲を生み出し続けてくれるのが楽しみである。

 

※1 ここでいう〈転調〉はキー・チェンジ(音階の中心音を変えること)であり、曲調の変化≒ビート・チェンジ(トラヴィス・スコット“SICKO MODE”などがわかりやすい)を指す誤用としての〈転調〉はこの曲にはあまりない。

※2 本稿中の引用コメントはすべてこの対談収載のもの。〈和久井健先生 × Official髭男dism対談 完全版

※3 イントロはG#マイナー、それ以降のサビ以外は基本的にFの平行調(歌メロに付随するコードによってメジャー/マイナーが切り替わり続ける)。最初のサビはDメジャーから〈不安定な〉でD♭メジャーに変化、終盤のサビではそれに加え最後の〈日々に〉でEメジャーに移行、続く〈瞳〉でD♭メジャー に戻って終了。終盤サビ前〈抉るような〉など歌メロの一部だけが移調している箇所をカウントするか否かで数が変わってはくるが、確かに全体(4分間)で10回前後転調している。

※4 藤原聡とaiko(目を閉じたままピアノを適当に弾いて出た音から作曲を始めるというエピソードは“Cry Baby”にも通じる)の対談で“Metropolis - Pt. I: ‘The Miracle And The Sleeper’”(92年作『Images And Words』収録曲)について語るなど、ドリーム・シアターをはじめとしたHR/HMからの影響を各所で公言している。
ちなみに、ドリーム・シアターの名盤『Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory』(99年)は時空を超えて連環する記憶をテーマにしたコンセプト・アルバムであり、「東京リベンジャーズ」と共通する要素をもつ作品ではある。

 


RELEASE INFORMATION

Official髭男dism 『Cry Baby』 ポニーキャニオン/IRORI(2021)

リリース日:2021年5月7日
配信リンク:https://hgdn.lnk.to/CryBaby

TRACKLIST
1. Cry Baby