鮮烈に第5期としての活動をスタートさせたWANDS。2020年10月にリリースされたアルバム『BURN THE SECRET』以降、新曲を待ち望む声にこたえる形で、遂に2021年第1弾のシングルが発売決定! 第5期からの歩みを振り返りながら、WANDSの新境地を示すこのニュー・シングルの魅力に迫った。

WANDS 『カナリア鳴いた頃に』 D-GO(2021)


1991年のバンド結成以降、数々のヒット曲を世に送り出した伝説のバンド・WANDSが、2000年の〈解体〉以来となる再始動を果たしたのは2019年のこと。柴崎浩(ギター)と木村真也(キーボード ※現在は活動休止中)というバンド黄金期のメンバーにあらたなヴォーカリストの上原大史を迎えて現在の編成となったいわゆる第5期WANDSは、2020年1月に通算16枚目となるシングル『真っ赤なLip』でそのヴェールを脱いだ。スリリングなバンドサウンドと上原の色気のあるヴォーカルは瞬く間に話題を集め、同年5月には爽やかなメロディが印象的な17thシングル『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』をリリースし、シーンにもその存在を強く示していった。そして同年10月にリリースされた第5期初のアルバムとなる『BURN THE SECRET』ではそんな2枚のシングル曲を含む新曲群と、“Secret Night ~It’s My Treat~”などかつての名曲たちのセルフカヴァーも収録した、WANDSの過去と現在が交錯した充実作となった。

これら2020年にリリースされた一連のシングル・アルバムといった作品群は、かつてのファンにも〈あのWANDSが帰ってきた〉と納得させる仕上がりであったが、同時に第5期WANDSという現代シーンに生きる新しいバンドとして魅力を感じさせるものでもあった。そのなかで上原大史のバンドにおける役割は大きく、作詞などソングライティング面においても多くのフレッシュなアイディアが続々と加えられ、先輩である柴崎・木村にも負けない存在感を発揮していった。1990年代という時代を駆け抜けたレガシーを現代に甦らせること、そしてそこに新しい才能が加わることで、WANDSはバンドとしてのリボーンを見事果たしたのだった。

そうした充実したリリースのあと、2020年11月には初のライブ配信〈WANDS Streaming Live ~BURN THE SECRET~〉を開催し、バンドとしてのネクストステップへの期待が高まっていた2021年。そんななかリリースされる待望のニュー・シングル『カナリア鳴いた頃に』は、まさに彼らが次のフェーズに突入したと感じさせる1曲となっている。物悲しいピアノのフレーズから始まるこの曲は、別れた恋人を想う切ないラブソングとなっている。これまで聴かれたWANDS印ともいえるサウンドのダイナミズムはやや鳴りを潜め、穏やかなバンド・サウンドに上原の優しいヴォーカルが胸に響くミディアム・ナンバーに仕上がっている。特に〈カナリア鳴いた頃に あなたは別の道へ〉と歌うサビが素晴らしく、独特な起伏を感じる柴崎のメロディメイクが絶品である。また上原のヴォーカルもさることながら、歌詞においても〈これから幾つも 歳を募れど 思い出してしまうな〉などといった言葉が実に美しい。こうした、何気なく思えて印象に残るワードをチョイスするあたり、ソングライターとしてのセンスも感じさせる。まさに新章を迎えるに相応しい、バンドとして新しい景色を見せてくれる一曲なのだ。

また、カップリングは恒例となった過去の名曲たちのセルフカヴァーとなる〈WANDS 第5期 ver.〉を収録。今回は1997年9月リリースの12thシングル“錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう”(初回限定盤収録)と、1998年2月リリースの13thシングル“Brand New Love”(通常盤収録)をそれぞれ収録。いずれも1990年代後期に木村が在籍していた、いわゆる第3期WANDSの楽曲で、当時バンドにいなかった柴崎がこの楽曲をカバーするというのも非常に興味深いし、上原のヴォーカルによってオリジナルとはまた違った魅力を発見できる。また一方であえて第3期の曲をカヴァーすることで、今のWANDSも新しいフェーズに入ったのだというメッセージでもあるのかと勘繰ってしまうが、いずれにせよ第3期の名曲にスポットが当たるのもうれしいファンは多いだろう。

2021年に入ってバンドとしても新しい季節を迎えた、そのなかで聴かれる“カナリア鳴いた頃に”が聴かせるサウンドは、穏やかでありながらも、これが〈今のバンド〉としてのWANDSであるというものを改めて宣言するようにも感じさせる。9月には待望のワンマンライブ開催も予定しているなかで、彼らはどんな姿で今を鳴らしていくのだろうか。