これが第5期の俺たちだ。力強く鳴らされるのは、90年代の残像を打ち消すロック・サウンド。二ュー・アルバム『Version 5.0』は〈今〉を全力で楽しむことを高らかに肯定する!!!

 90年代のJ-Popシーンを数々のヒット曲で彩ったWANDSが、オリジナル・メンバーの柴崎浩(ギター)、第2期・第3期の活動を支えた木村真也(キーボード)、3代目ヴォーカリストの上原大史によるWANDS第5期として19年ぶりに復活したのが2019年11月のこと。翌年にはアルバム『BURN THE SECRET』を届け、その後、木村の体調不良による活動休止といった出来事はありつつ、ライヴを含め間断なく活動を行うなかで制作を進めていたのが、このたびリリースされるニュー・アルバム、その名も『Version 5.0』だ。

 「ひとつ前のアルバムは〈いままでのWANDS〉を意識して作っていたところがあったけど、今回はふっきれた感覚がある。2枚目にして、ようやく第5期らしくやっているなと」(柴崎)。

 「ライヴも重ねて、柴崎さんも僕の特性を理解してくれたうえでの制作だったので、90年代のWANDSにはなかったような楽曲がガンガン出来て。これが第5期なんだ、という感覚がありました」(上原)。

WANDS 『Version 5.0』 D-GO(2023)

 その新作は、“世界が終るまでは…”と“MILLION MILES AWAY”という90年代にリリースした名曲の第5期編成でのセルフ・カヴァーも含みつつ(通常盤には“ありふれた言葉で”の第5期ヴァージョンも追加収録)、残りは現体制で作り上げた楽曲で構成。アニメ「名探偵コナン」のタイアップ曲である“YURA YURA”と“RAISE INSIGHT”、柴崎のメロディーメイカーぶりが発揮された名曲“カナリア鳴いた頃に”、壮大なロック・バラード“愛を叫びたい”といった既発曲に加え、アルバムの幕開けを飾る勇ましいハード・ロック“We Will Never Give Up”、エモコア感覚でも聴けるモダンな“GET CHANCE GET GROW”、エモーショナルな“WONDER STORY”といった、聴き手の背中を押す力強いナンバーが並ぶ。

 「ツアーをやったときに感じた〈こういうタイプの曲が欲しい〉という気持ちを反映して作ったものが多い。特に“We Will Never Give Up”はライヴの残像が頭の中に残っているなかで作りましたね」(柴崎)。

 「前回のアルバムでは、自分にない部分をフィクション的に作っているところがあったけど、今回は自分のいまの心境が溢れ出た感じがあって。最近、人生は本当にドラマティックだと感じることが多いし、だからこそ失敗を恐れず後悔がないように生きていきたい。それで〈人生を謳歌しようぜ!〉的なメッセージの曲が増えました」(上原)。

 その一方で「全部サビみたいな曲を作りたくて、刺激だらけのスパイスカレーみたいな感じになりました(笑)」(柴崎)と語るカオティックな“官能SADISTICに濡れて”や、上原がスマホのアプリを使って即興的に制作したという小品“SHOUT OUT!!”といった楽曲も収録。従来のイメージに捉われない自由な作風こそが、彼らが〈伝説のバンド〉ではなく〈今のバンド〉として存在感を強めている要因だろう。

 「90年代のWANDSもそうだったけど、要はメンバーが個性を発揮して得意なことをやればいいんですよね。その意味でも、いまの第5期WANDSを示せるアルバムになったので、第5期になってからの曲を知らない人にも届けばいいなと」(柴崎)。

 「最初の頃は〈WANDSっぽさ〉を意識しすぎていて、自分の得意な声やポテンシャルを出せないもどかしさがすごくあったんです。ようやく自分を出せた感覚があるので、ここからの評価がすごく楽しみ。90年代のWANDSを知らない世代に先入観なく聴いてもらって、好きになってもらえると嬉しいです」(上原)。

WANDSの過去作を一部紹介。
左から、2020年作『BURN THE SECRET』(D-GO)、KT Zepp Yokohama公演の模様を収めた2022年の映像作品「WANDS Live Tour 2022 FIRST ACT 5th period」、ベスト盤『BEST OF WANDS HISTORY』(B-Gram)