音楽愛に溢れた豊崎愛生のディスコグラフィー
声優ユニット、スフィアとしての活動と並行して、ソロ・アーティストとしても多くの作品を残してきた豊崎愛生。ここでは、彼女の音楽好きな面が多岐に渡って投影されているアルバム群を順に紹介していこう。
まずは、2011年に届けられた初作『love your life, love my life』。Rie fu、谷山浩子、Chara、つじあやの、クラムボンらとコラボしたシングルのほか、初出の曲ではコトリンゴが手掛けた可憐な“march”など、豊崎の愛らしい歌声を活かしたオーガニックで柔和なムードの一枚となっている。続いては、本文にも登場する〈最高の幸せ歌〉=ミト製の“music”を含む2作目『Love letters』。豊崎の嗜好がより広く反映された本作では、言葉のリフレインがクセになるたむらぱんとの“パタパ”、羊毛とおはなとの繊細なバラード、sasakure.UKとのファンタジックなエレポップ、ウォーミーなハナレグミとのアコースティック・ポップ、田淵智也とのカントリー調など、初顔合わせ組との楽曲を挙げただけでもサウンド面のヴァラエティーは大幅に拡大。それらをふんわりと束ねる主役の歌声が、作品全体にフェミニンなトーンを与えている。その後も佐藤タイジとのグラム・ロックや、バック・ビートにダビーな意匠をまぶした蔡忠浩(bonobos)との夏ソングといった挑戦を重ねた彼女は、2016年に3作目『all time lovin’』を発表。ここではさらに、ROLLYによる華やかなロックンロールや、密やかな歌声で夜の叙情を映し出す永野亮(APOGEE)との“タワーライト”など、曲調もヴォーカリゼーションもさらに振り切った表現を開拓。そのうえで、どんな楽曲であっても甘くたおやかな空気で包まれている点が、彼女らしさだと言えるだろう。
そして、何度もコラボを重ねている安藤裕子との軽快な新曲“猫になる”を含むベスト盤『love your Best』を挿み、2018年にはカヴァー集『AT living』をリリース。はっぴいえんど、荒井由実、大滝詠一……と70年代の日本の名曲からセレクトした全11曲となっており、どれも原曲に沿ったアレンジと歌い口を意識していたことが窺える仕上がり。先人に対する豊崎のリスペクトと音楽愛が伝わる一枚に。 *bounce編集部
左から、豊崎愛生の2011年作『love your life, live my life』、2013年作『Love letters』、2016年作『all time Lovin’』、ベスト盤『love your Best』、2018年のカヴァー集『AT living』(すべてMusicRay'n)