“If The World Was Ending”(2019年)が第63回グラミー賞の〈最優秀楽曲〉部門にノミネートされたことでワールドワイドな注目を集めた、トロント出身のシンガー・ソングライターによるファースト・アルバム。全曲で親しみやすいメロディーを奏でており、余計な装飾がない手堅いプロダクションもグッド。ヴォーカルを丁寧に聴かせる静謐な曲が多い一方で、“Tension”では叙情的かつ壮大な曲調に合わせて絶叫するような歌唱を披露するなど、抑揚をつけたアルバムの構成には高いエンタメ性が際立っている。亡くなった母親に捧げた“Sing Myself To Sleep”を筆頭に、情感を鮮やかに描いた歌詞も上質だ。R&B、ロック、ジャズといった要素を上手くまとめるアレンジ能力も光る。