インタビュー

渡辺克也『Cantabile』ドイツのオーボエの正統に連なる奏者が入魂の録音作を語る

「聴いたひとの人生を変えてしまうつもりで演奏しています」

©Kiyoshi Kamatani.

聴くひとの人生を変えるような演奏を

 ドイツのオーボエの正統を志し、渡辺克也が渡独したのが1991年。ベルリン・ドイツ・オペラの首席奏者を11年務め、いまもソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルグの首席奏者を続けるほか、ドイツを中心に様々なオーケストラにも客演している。

 「素晴らしい歌手ともひととおり共演したし、ティーレマンともとてもいい演奏ができた。オペラは体力をつかうし、全力疾走ではもたないんですよ。ドイツに渡ってちょうど30年ですけれど、音楽人生の後半は指揮者にテンポを決められてしまうのではなくて、自分がいいと思えるように演奏したい。フルトヴェングラーならこういうテンポをとるんだろうな、と思いながらいろいろやっています」。

渡辺克也, 小林有沙 『Cantabile~渡辺克也』 Profil/キング(2021)

 オーボエのレパートリーを深く探求する試みを、連作レコーディングに結実させてきて、2020年1月下旬にも新作『カンタービレ』をベルリンのイエス・キリスト教会で録音した。

 「有名曲をほとんど録音してしまったので、あとは自分で発掘するしかない。僕が〈ひと耳惚れ〉した名曲ばかりを全力投球で詰め込んで、最初から最後まで曲順を大事に構成しました。録音した後、コロナで時間もできたので、いつも以上に細かいところまで編集に力を入れて」。

 シューマンの“アダージョとアレグロ”はもちろん、アウグスト・ドゥ・ブック、マルティン・グラーベルト、ジョヴァンニ・ボルツォーニ、レインゴリト・グリエール、ビル・ダグラスと他はほぼ19世紀から21世紀へと時代を下るように配されたどの曲も、しっかりとドイツのオーボエの薫りがする。

 「歳をとるにつれて、僕のなかでロマン派に対する思いがより濃くなってきました。音楽が巨大になってひとつ頂点を迎えた時代をきわめたい。シューマンの作品ではホルン奏者の意見も聞き、原曲の楽譜に沿ってオーボエで活きる表現をつくり上げるように努めました。現代のビル・ダグラスのソナタでも少しドイツに傾いてみたかった」。

 イタリアのベル・カントであれ、ジャズをにおわせるものであれ、渡辺克也の演奏の芯は確固として、ゆったりと濃密な表現を歌い込んでいく。個々の音が強い意志をもち、アルバムは巨大な画布を想わせる。

 「そうできているかはわからないけれど、フルトヴェングラーのように聴いたひとの人生を変えてしまうつもりで演奏しています。フルトヴェングラーにはドラマティックであることが大切だったと僕は思います。テンポや感情表現もそうですし、音楽が角張らず、直線的ではない。自然界もまるみを帯びた、流線型でできたものが多いでしょう。そうしたことを非常に大事にして、綿密に演奏していきたい」。

 


LIVE INFORMATION
渡辺克也と弦楽四重奏 ミラクルコンサート
2021年12月26日(日)埼玉 蓮田市総合文化会館ハストピア どきどきホール
開場/開演:13:30/14:00
曲目:クロンマー:オーボエ四重奏曲/ライヒャ:オーボエ五重奏曲/立原勇:彩なす時の記憶に(特別委嘱作品) ほか
http://www.hasudacity.jp/1536.htm

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