イギリスを代表するクィアアイコン
ペリー・エドワーズ、レイ・アン・ピノック、ジェイド・サールウォールの3人組ポップグループ、リトル・ミックス。この度初のベスト盤『Between Us』をリリースした彼女たちは、間違いなく2010年代のイギリスを代表するアーティストだ。UK版「Xファクター」初のグループ優勝者として2011年にデビューし、番組で披露したカヴァー曲“Cannonball”が全英首位に。その後も“Wings” (2012年)、“Black Magic”(2015年)、 “Shout Out To My Ex”(2016年)などヒット曲を連発。去年も6作目のアルバム『Confetti』からのリードシングル“Sweet Melody”で5度目の全英チャート1位を獲得するなど、デビューから今日まで着実な成功を収め続けてきた。
そんな彼女たちは同時に、世界のLGBTQ+コミュニティーからの支持を得ている〈クィアアイコン〉でもある。もちろん、それにはパワフルな女性グループはそのような層に好まれやすいという理由がまずあるだろう。シュガーベイブスやガールズ・アラウド、そしてもちろんスパイス・ガールズなど、先輩グループたちがいまだにLGBTQ+の人々の間で愛されているのがその証左だ。だが、それだけでは説明できないほど、いまの彼女たちのLGBTQ+からの人気には圧倒的な勢いがある。その背後にある理由とはなんなのだろうか。
本記事ではリトル・ミックスがこの10年でどのように〈アイコン〉としての地位を確立してきたのか、その軌跡をたどっていく。
セクシュアリティーを公にできない心情を代弁した“Secret Love Song, Pt. II“
リトル・ミックスとLGBTQ+コミュニティーの関係の大きな転換点になったのは、なにをおいても2015年にリリースした“Secret Love Song, Pt. II“である。
〈愛している相手との関係を公にすることができない〉という苦しみを歌ったこの曲は、リリース当初から多くのリスナーに〈セクシュアリティーを隠すことを求められる人々の気持ちを代弁している〉と解釈されることになった。その解釈はあるユーザーからTwitterを通じてリトル・ミックスに伝えられ、本人たちもそれを喜んで受け入れた。この曲は彼女たちとLGBTQ+コミュニティーのつながりを象徴する曲になったのだ。
“Secret Love Song, Pt. II“以降、彼女たちはLGBTQ+ファンダムを明確に重視するようになり、LGBTQ+の存在を自身の作品のなかで可視化していくようになった。
2017年のヒット曲“Power”のビデオでは様々な年齢・人種の女性たちと並んで、ドラァグクイーンたちが激しく踊る。DJユニット、チート・コーズとの曲“Only You”(2018年)のビデオでは、恋に落ちる女性二人の姿がファンタジックに描かれた。同年のアルバム『LM5』のリリース時には、大手ゲイ雑誌「Attitude」の表紙を飾っている。さらに、まだリリースされてはいないが、トランスコミュニティーに捧げる曲も完成しているそうだ。