UK史上最強のスーパー・ガールズ・グループといっしょにヘンテコにならない!? この楽しさ、このワイワイ感に胸が熱くならないなんてウソだよ!!

 TVオーディション番組の出身者をナメちゃいけないってことは、これまでにケリー・クラークソンウィル・ヤングをはじめ、何組ものアーティストが証明してきた。それにしても、だ。リトル・ミックスの野心と、それを正当化して余りある実力やセンスには驚かされる。UK版「The X Factor」の第8シーズンで優勝したこのグループは、ソロで応募した4人によって番組中で結成されたがゆえに、同様の過程で生まれたワン・ダイレクションの妹分と目されてきた。全員が対等な個性の集まりという点も、1Dとの共通項だろう。レイ・アン・ピノックはR&B、ペリー・エドワーズはロック、ジェシー・ネルソンはヒップホップ、ジェイド・サールウォールミュージカルといった具合に音楽の原点もさまざまなのだが、全員バッチリ歌って踊れるから、そういう意味では古典的な女性グループでもある。

 そんな彼女たちはデビュー時からUSを含む世界中で大ブレイクしながら、作品ごとにサウンド志向を大胆に塗り替えてきた。初作『DNA』(2012年)が全員の嗜好を反映させたコンテンポラリーなポップ・アルバムならば、2作目『Salute』(2013年)は90年代~2000年代初めのR&Bを独自に再解釈した作りに。そして、ここにお目見えしたサード・アルバム『Get Weird』でまたもや作風を刷新。キーワードは〈レトロ〉と言えようか。しかも一度完成しかけたアルバムをボツにして、1年がかりで100曲近くを書いた末に誕生した力作とのこと。

LITTLE MIX Get Weird Syco/Columbia/ソニー(2015)

 「当初のアルバムは、曲ごとの出来は良いのにスムースに流れなくて、一貫性に欠けていたの」(レイ・アン)。

 「ハードだったけど、完璧な作品になるまで十分な時間をかけて良かったわ。作業が長引いたうえになかなかシングル曲が書けなくて、不安を感じはじめたの。このまま書けなかったらどうしようかって。でも、こういうことって無理強いはできないでしょ!?」(ジェイド)。

 このように少々行き詰まっていた時に4人が巡り会ったナンバーこそ、3曲目の全英No.1ヒットとなる先行シングル“Black Magic”だ。80sポップの影響が色濃いカラフルでキャッチーなこの曲に刺激された彼女たちは、当時のプリンスマドンナマイケル・ジャクソンの作品を聴き漁りながら作業を続行。まさに80年代調の“Weird People”や“OMG”、あるいは60年代調の“Love Me Like You”や“A.D.I.D.A.S.”などなど、どこかノスタルジックな匂いの曲が次々に生まれたという。

「今回はポップに回帰した気がするわ。いまの音楽シーンにはウィークエンドをはじめ、アーバン系のアーティストが多くて、R&Bが溢れているから、これなら自分たちを差別化できて、新鮮に響くんじゃないかと思った。それに、古いサウンドをリフレッシュするのが私たちは好きなのよ」(ジェイド)。

 もちろん音は変わっても、過去2作品で確立したリトル・ミックスらしさは健在。等身大の題材を扱う歌詞然り、楽曲のクォリティー然り、かつてなく簡素プロダクションでより強調された美しいハーモニー然り。毎回強く打ち出しているメッセージも今回はズバリ、〈ヘンテコになろう(Get Weird)〉と呼び掛けるタイトルに込めた。

 「このタイトルは私たち自身を表しているわ。4人全員が変わり者だし、みんなも変わり者であって構わないんだと訴えているの。他人がどう思おうと自分らしく振る舞って、自信を持って楽しめばいいのよ。私たちはお互いからヘンテコな部分を引き出していて、リトル・ミックスの一員でいると、退屈な日なんか1日もないわ!」(レイ・アン)。

 そして、ほぼアカペラのラスト曲“The End”では〈こんなに遠くまで来たけど、まだ始まったばかり〉と歌い、このアルバムを締め括る4人。妥協せず、結束は固く、ますます頼もしい彼女たちに、ポップスの未来を託したくなる。