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LGBTQ+コミュニティーを支持するメッセージを打ち出し、自らも実践

本人たちがSNSやライブを通し、LGBTQ+コミュニティーに向けメッセージを送ることも忘れなかった。積極的にLGBTQ+ファンとネット上で交流し、ヘイトの書き込みに対しては自らも声をあげ対抗した。さらに欧州最大のLGBTQ+人権団体〈ストーンウォール〉と協力しロンドンやマンチェスターでのプライドにも参加。LGBTQ+の若者たちと語り合い、一緒にパレードを歩いた。

2019年には同性愛が違法であるドバイ(UAE)でのライブで巨大なレインボーフラッグを掲げながら“Secret Love Song, Pt. II”を披露。同年11月のマンチェスターでのライブ中には、MCで同性カップルのプロポーズを手助けする微笑ましい一幕もあった。ゲイクラブでのライブやLGBTQ+イベントにも積極的に出演、メンバーのジェイドが主催している〈ドラァグクイーン〉をテーマにしたバースデー兼チャリティパーティーでは、募金箱を設置し、支援団体への寄付を呼び掛けている

ドバイでのライブでの“Secret Love Song, Pt.Ⅱ”
 

まさに怒涛といってもいい勢いで、彼女たちはLGBTQ+コミュニティーを支持するメッセージを打ち出し、自らも実践していった。このような活動を通し、彼女たちはイギリス芸能界を代表する〈アライ(LGBTQ+の支援者)〉とみなされるようになったのである。

 

パワフルなヴォーカルとゴージャスなサウンド

2015年以来LGBTQ+ファンを重視する姿勢を鮮明にしたリトル・ミックスだが、実はそれ以前から自分たちにそのようなファンがいることは認識していたという。なぜならジェイド曰く「どのゲイバーに入ってもリトル・ミックスの曲が流れていた」から。なぜリトル・ミックスのサウンドは、LGBTQ+ファンに強くアピールするのだろう?

まずその理由としてはパワフルなヴォーカルがある。圧倒的な歌唱力でメロディーを歌い上げる、いわゆる〈ディーヴァ〉タイプの歌手がLGBTQ+コミュニティーで人気になりやすいのは周知の事実だ。メンバー全員がメインヴォーカル、といってもいいほど高い歌唱力を誇るリトル・ミックスも、その系譜に連なる存在だろう。R&Bに影響を受けた力強い歌声が紡ぐハーモニーは、どの曲においてもゴージャスな魅力を感じさせる。

また、多くのヒット曲の主題が挫折し苦しむなかで自分を貫きそれを乗り越えるという、いわゆる〈クィアアンセム〉の定義にあてはまるというのも重要だろう。

 

挫折から始まったリトル・ミックスが歌うのは〈ありのままの自分を信じよう〉ということ

そもそも彼女たちのキャリアは、大きな挫折からスタートしている。「Xファクター」出演時、最初のオーディションは突破したものの、続く〈ブートキャンプ審査〉では全員失敗。落選ギリギリのところで審査員だったケリー・ローランドの采配によりグループとして編成され、生まれたのがリトル・ミックスだった

※結成当初のグループ名は〈Rhythmix〉だったが、既に同名の慈善団体があったためリトル・ミックスに改名
 

結成後も彼女たちがデビューできるとは誰も予想しておらず、〈期待しないように〉とまで言われたそうだ。そんな彼女たちは優勝後、初めてリリースしたオリジナル曲“Wings”において〈どう言われようと傷つきはしない/この翼は羽ばたくためにある〉と堂々と宣言してみせた。〈もう二度とあなたのことで落ち込むことなんてない〉と過去の恋愛を爽やかに吹っ切る“Shout Out To My Ex”(2016年)、〈あなたは男かもしれないけれど/パワーを持っているのはこの私〉と性差別に挑戦する“Power”(2017年)。どの曲においても共通しているのは〈どんなことがあっても、ありのままの自分の尊厳を信じることで道は切り拓いていける〉という、LGBTQ+の生に響くメッセージだ。

『Between Us』収録曲“Wings”