クーラ・シェイカーが実に6年ぶり、待望の新作『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』をリリースした。激動のコロナ禍のなかで制作され、21曲からなる壮大なコンセプトアルバムとして生まれた本作は、多彩な音楽性に挑みながらも〈まさにクーラ・シェイカー〉としか言いようのないサウンドが健在で、バンドの新章を告げる力作に仕上がっている。〈SUMMER SONIC 2022〉への出演を控えるなかで届けられた、miletも〈胸が熱くなる〉と絶賛する本作。その〈サイコー〉なロックサウンドについて、今回は特別に音楽評論家/DJの大貫憲章に寄稿してもらった。 *Mikiki編集部

KULA SHAKER 『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』 Strangefolk/ソニー(2022)

 

クーラ・シェイカーの新作との出会いは神の御技?

クーラ・シェイカーの新作が大きな話題になっている。そのザワつきはネット社会のみならず、こんなに対面の機会が失われたコロナ禍の現実社会でもまさに人づてにざわめきが波紋のように押し寄せてくる。コレってスッゲ〜〜ことなんじゃない? 自分のまわりのナローコミューンとはいえ、近年ついぞなかった事件なのだ。

そして我が事を言えば、こんなに心を膨らませ、踊らせ、ときめかせある種のカオスな感覚に陥らせたアルバムはこの何年もなかった。それくらいこの長〜い風変わりなタイトルの作品は少なくとも自分には稀有な究極的なものだと言っても過言ではない。いやいや、ロックってやっぱり素晴らしい。

しかし、正直なところ、そもそもクーラ・シェイカーが今何をしているか? なんて全然知らないでいたし、音楽情報自体もすんなり入手出来ることもないわけで、このニュースに出会えたことが奇跡で幸運の賜物なのだ。クリスピアンじゃないがこれぞ神の御技か?

 

モヤモヤが一瞬で吹き飛ぶロックのマジック

ここまでの彼らの歩みは栄光と誤解と挫折と執念の20余年なのか、ともかく、順風満帆ではない。前作の『K 2.0』(2016年)で復活したかと思われたが逆に任務終了とのアラームも出たり、モヤモヤだらけでまた6年待った。これは放蕩息子のご帰還なのか、はたまた新たなる聖者の行進なのか。ファンシーなロッキン・グールー(導師)の読めない振る舞いにヤキモキ。

それがどうだ。音を聴いたら、サウンドに触れたらすべて雲散霧消。これぞ彼らのマジック。ロックのマジック。そう! こういう気持ちになれるからロックが圧倒的に好きなんだ。モヤモヤが一瞬で吹き飛びスカッとする。こうしてバンド、ミュージシャンの生み出す音楽と素直に向き合い、対峙することでハートは満たされ空虚さは消える。それを15〜6の頃から自然に感得してきた。分かるのだ。

『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』収録曲“The Once And Future King”

ただ、そういう思いにさせてくれる音楽はそうはない。出会えればそれは幸運で僥倖なのだ。ある意味、運命的なことだし、極めて個人的なことだ。図らずもこのクーラ・シェイカーというバンドもそうしたスーパーナチュラルなポテンシャルを抱えた稀有な存在。古代インドの聖人の名をバンド名に冠し音楽それ自体もインド寄りというかヒンドゥーの香り芳しく、その所作も流麗で名曲“Govinda”ではないけど、真にマントラを唱えるごとき。その流儀が今ここにより際立ってロックミュージックとして新たに打ち立てられた。そういう鮮烈な煌めきが実感できる。

96年作『K』収録曲“Govinda”