米LAのシンガーソングライター/プロデューサー/マルチプレイヤーのラウヴ。数々の客演やトロイ・シヴァンとの大ヒット曲“i’m so tired...”で知られる才能が、デビューアルバム『~how i’m feeling~』(2020年)から2年、ついに待望の新作『All 4 Nothing』をリリースした。自分自身と向き合い、〈懐かしさ〉〈葛藤〉〈自己啓発〉などのキーワードを掘り下げ、リスナーに語りかけるような内容になっている本作。彼はここにどんな思いを込めたのだろうか? アルバムに収められた各曲について、ラウヴ本人が語った。 *Mikiki編集部
2年の沈黙からのワクワクする再スタート
BTS、アン・マリー、アレッシア・カーラ、トロイ・シヴァン、ソフィア・レイエスとのコラボレーションも話題になったファーストアルバム『~how i’m feeling~』をラウヴがリリースしたのは2020年3月。そこからツアーを含む快進撃が始まるはずだった。だが、COVID-19のパンデミックにより、アルバムのプロモーションも十分にされぬまま、多くのアーティスト同様、彼の活動は一旦ストップ。そこから2年近く沈黙が続いた。しかし2022年1月、突如沈黙を破ってニューシングル“26”を配信で発表。続いて4月にはシングル“All 4 Nothing (I’m So In Love)”が配信され、それと同時にニューアルバム『All 4 Nothing』のリリースもアナウンスされたのだった。この約2年をラウヴはどのように過ごしていたのだろうか。
「初めの頃は家にずっといて、音楽を作る時間がいくらでもあることをありがたく感じていた。自分はツアー中はライブに集中したいため、曲を書かないタイプだからね。なので、時間を気にせず制作に取り組めるのはありがたかったし、前向きだったよ。だけど自分を追い込みすぎちゃったところがあって、だんだんと生活が荒れだしてしまった。髪も髭も伸び放題でね。まあ、そんな時期もあったけど、そこから抜け出し、今は精神的にもいい気分だ。いいアルバムができたしね」。
そうして届いたセカンドアルバム『All 4 Nothing』は、VMLAS(Virgin Music Label & Artist Services)へと移籍しての第1弾。「再スタートという気持ちは間違いなくある。前作からずいぶん時間が経っているし、自分自身、ワクワクしているところだよ」とラウヴは言う。
成功を手にして空いてしまった心の穴
アルバムのオープナーは、先行で配信された“26”だ。曲調は決して暗いものではないが、語り掛けるように歌われるその歌詞は、赤裸々に本心を吐露したもの。「いくつか曲を作り、大ヒットして、やりたいことはなんでもできると思い込んだ。でもそのせいで心に穴が空いてしまった」と歌われる。
「“26”は新しいアルバムのプレリュードみたいなもの。僕が26歳になって考えたことや問い直したことを歌っている(現在は27歳)。傍から見たら僕は恵まれた生き方をしていて幸せそうかもしれないけど、実際はしばらくの間、苦しみを抱えていた。〈こんなふうにしか感じられないのなら、なんのための成功なんだ?!〉と自問している状態が続いたんだ。そんなときに、仲のいい友達が瞑想の仕方を教えてくれてね。もっと人生を大切にして、前向きだった自分に戻ろうと思った。それが新しいアルバムを作るにあたっての、ひとつの指針になったんだ。その第一歩が“26”というわけ」。
エレクトロな感触のトラックに乗せて伸びやかなファルセットを聴かせる2曲目“Stranger”に続き、3曲目はMVもユニークなこのアルバムからのサードシングル“Kids Are Born Stars”だ。
「これは、〈子供の頃の自分〉に影響を受けて書いた曲。大人になった自分は子供の自分から想像力を膨らませることを学び、子供の自分は大人の自分から自信を持つことを学んでいる。これはアルバム全体にも言えることだけど、ある種、子供の頃の無邪気さを取り戻すことが重要だったんだ」。
そこから疾走感のある“Molly In Mexico”へと続き、5曲目はこのアルバムのセカンドシングル“All 4 Nothing (I’m So In Love)”。ロマンティックで、歌詞もストレートなラブソングである。
「今の彼女と出会って、恋したときの気が気でない感じを歌にした。〈この気持ちを抑えられない。僕はこの人に恋をしているんだ〉って考えていたら、サビのメロディーが降ってきた。前作を作っていたとき、僕は不安に苛まれ、自分を大切にすることができなくなっていた。だけど彼女と出会い、一緒にいると、幸福な気持ちになれたし、癒されたんだ。おかげで前向きな自分を取り戻すことができた。〈この恋を手放したらダメだ。そうしたらあのときの自分に戻ってしまう。全ての意味がなくなってしまう〉。そういう思いを“All 4 Nothing”というワードに込めたんだ。実はこの曲、彼女と一緒に書いたんだよ」。