トロイ・シヴァンとの最新シングル“i’m so tired...”やSpotifyの再生回数が全世界で5億回を越える“I Like Me Better”などのヒットで知られるシンガー・ソングライター、ラウヴ(Lauv)。5月末より東名阪で開催するジャパン・ツアー〈Lauv JAPAN TOUR 2019〉の東京公演が早々にソールドアウトするなどここ日本でも人気を集める大型新人が、このたび来日を記念した2枚組の日本独自企画盤CD『I met you when I was 18.』をリリースした(CDでのリリースは初)。同作は、2015年のデビューからデジタルで発表された楽曲を網羅した20曲を収録した、ラウヴの現在の名刺代わりな一作と言えよう。

ここでは、ちょうどひと月後に迫る来日公演に向けてその歩みを総括しながら、本格的なブレイクが期待される理由を紐解いた。 *Mikiki編集部

LAUV 『I met you when I was 18.』 Lauv/AWAL/Traffic(2019)

 

エド・シーランも魅了する、ストリーミング時代の自己完結型アーティスト

当時ニューヨーク大学でミュージック・テクノロジーを学んでいたアリ・レフが、ラウヴの名義でブレイクアップ・ソング“The Other”を公開したのは、4年前のことだ。この曲は早速影響力のあるブログなどに取り上げられて注目を浴び、以来実に20曲以上を発表した彼は、トータルで20億回の再生回数を記録。着々と知名度と評価を築いてきた。しかし未だ正式なファースト・アルバムを用意している気配は見えず、フォーマットにこだわらないで、淡々と曲を作りながらワールドワイドにライヴの集客力を上げた彼は、ストリーミング時代の申し子のような現代的アーティストである。

『I met you when I was 18.』収録曲“The Other”

もっともこの手の人たちは、いったいどのポイントで〈ブレイク〉したのかを見極めるのが困難だったりもする。ラウヴの場合はどうだろう? 2017年5月に発表したシングル“I Like Me Better”は、オーストラリアやドイツをはじめ世界各地のチャートでトップ10に入ると共に、アメリカでもロングヒットと化して、翌年秋に最高27位まで上昇。最終的にはプラチナ・セールスを達成し、同時期に、全米ビルボード・イマージング・アーティスト・チャート(ブレイクが期待される新進アーティストの番付)の1位を10週間独走しており、すでにブレイクしていると評して過言ではないだろう。

『I met you when I was 18.』収録曲“I Like Me Better”

現代的と言えば、ポップ・パンクにハマって10代前半からバンドでギターを弾き、2000年代にアトランタに住んでいたことでR&Bとヒップホップにも親しんできた彼の、ジャンルレスな嗜好も然り。かつラウヴは、ほんのり憂いを含んだ美声に恵まれていながらも、当初は歌よりスタジオワークとソングライティングに関心を抱いていたそうで、ギターの弾き語りでも成立する古風な佇まいの曲に、みずから洗練されたコンテンポラリーなプロダクションを施す、自己完結型のアーティストでもある。

実際、“The Other”も他のアーティストに売り込むつもりだったという彼は、間もなくして曲提供にも乗り出し、チャーリーXCXの“Boys”やチート・シートの“No Promises”といったヒット曲にソングライターとして参加。また、DJスネイクの“A Different Way”ではヴォーカリストに起用され、自身の曲でも積極的にコラボレーションを行なっている。“Getting Over You”ではR&B界からティナーシェを共作者に迎え、“Enemies”はレディー・ガガとの仕事でお馴染みのブラッドポップと共同プロデュースし、多方面に人脈を広げているが、中でもラウヴのキャリアに大きなインパクトを与えたミュージシャンは、『÷(ディバイド)』(2017年)のワールド・ツアーの一部公演で彼を前座に指名したエド・シーランだろう。エドの怪我で2017年秋の日本公演はキャンセルされたものの、東南アジアではアリーナ、北米ではスタジアムのステージに立つという貴重な機会を得ている。

DJスネイクの2017年のシングル“A Different Way (with Lauv)”