パンデミックや戦争を前にして歌う〈人々の意志〉
ではなぜそのような作風になったのか。答えは作品中の言葉を拾い集めることで見えてくる。ミューズは前述したように世の中の情勢に感じる怒りや危惧が制作の原動力になっている。それはこれまでの作品のタイトルからも想像できるだろう。なかでも今回のタイトルは『Will Of The People』(人々の意志)と抜きんでて直球。マシュー自身は「不確実性と不安定性の増した世界、パンデミックやヨーロッパで起こってしまった戦争、自然災害などが本作に影響を及ぼしている」と語っている。ようするに各曲を制作するに至った理由が明確で、それらに抱くさまざまな想いを、奇をてらうことなく言葉とサウンドに乗せたからこその結果なのではないだろうか。
冒頭のタイトル曲で〈変革が必要だ 誰の目にもわかるような 革命が必要だ〉、〈裁判官は監獄された、未来は僕らのものだ〉と高らかに宣言するところから始まり、“Liberation”では〈歴史から消し去ってやるつもりだ(政権執行)〉、“Won’t Stand Down”では〈今こそ復活して、反撃だ、お前の手口で弄んでやる〉と、未来への意志と気迫に満ちた攻撃的な言葉が並ぶ。
〈殺すか殺されるか〉というタイトルを連呼する“Kill Or Be Killed”は切迫感と解放感が交差し覚醒を煽られる。〈キスしよう、毒された唇で〉、〈もう僕らを止められない、君を一人で死なせない〉と歌う“Verona”はパンデミックのなかで大切にすべきものを改めて実感したことによって生まれた曲だろう。ラストの“We Are Fucking Fucked”は災害やウイルスや戦争など、世界が直面している問題に対して〈僕らはもう完全におしまいだ〉と投げ出している。だからまた“Will Of The People”に戻る。
明るい未来に向かってアップデートしていこう
この数年間、そんな人生の常と言えるような感情のループや原点への回帰を、今までの何十倍も何百倍も激しい起伏と短いスパンで味わってきた。37分という短い時間や、そこに詰め込めまれた根源的であり真新しさも感じるさまざまなタイプのサウンドも併せて、今作は我々がパンデミックや戦争によって掻き乱された心のカオスそのもののよう。一寸先の予想ができないコンセプトなき世界観。
その先に待っているのは決して絶望ではない。それでも私たちは生きていかなければならないのだから、ともに明るい未来に向かって意識をアップデートしていこう。私は今作からそんなメッセージが見えてきたことで、心が少し軽くなった。ありがとうミューズ。
そしてひさびさの来日を待つ。彼らの世界最強たる所以は、ライブにあるのだから。
RELEASE INFORMATION

■完全生産限定盤
リリース日:2022年8月26日
品番:SICX 30146~7
仕様:CD+DVD/高品質Blu-spec CD2/二方背スリーヴ付ジュエルケース
封入特典:アルバムタイトルロゴステッカー
価格:3,500円(税込)
■通常盤
リリース日:2022年8月26日
仕様:1CD/高品質Blu-spec CD2/ソフトパック
品番:SICX 30148
価格:2,640円(税込)
TRACKLIST
CD
1. Will Of The People
2. Compliance
3. Liberation
4. Won’t Stand Down
5. Ghosts (How Can I Move On)
6. You Make Me Feel Like It’s Halloween
7. Kill or Be Killed
8. Verona
9. Euphoria
10. We Are Fucking Fucked
DVD
1. Won’t Stand Down(ミュージック・ビデオ)
2. Compliance(ミュージック・ビデオ)
3. Will Of The People(ミュージック・ビデオ)