(左から)武田砂鉄、西山 瞳

ジャズピアニスト西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第101回は、前回に続いて特別対談をお届け。西山さんがファンであるライター武田砂鉄さんとメタルやメタル文化、伊藤政則さんの偉大さについて語り合いました。「武田砂鉄 ラジオマガジン」の放送直後、文化放送の会議室でおこなった対話の模様をお楽しみください。

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メタルファンの生態は掴めない

――西山さんはなぜ武田さんと対談したかったんですか?

西山瞳「長いことTBSラジオリスナーなもので……もちろん文化放送も聴いてますよ(笑)! 『ヘドバン』の連載(〈ヘドバン大学 教養学部課題図書〉)も読んでいて、私自身、社会問題に興味がありますし、武田さんのご活躍を音楽と社会的な面の両方で見てきました。とても面白い方で同世代でもあるので、バックグラウンドなどを聞いてみたかったんです」

――武田さんは西山さんのことをご存知でしたか?

武田砂鉄「もちろん。CDも持っています」

西山「恐縮です!」

武田「〈政則十番勝負〉に出ていらっしゃいましたし、(伊藤)政則さんを介せばみんな友だち、という世界でございます。この連載も読んでいました」

西山「私も『紋切型社会(言葉で固まる現代を解きほぐす)』に始まり、いろいろ読ませていただいています」

武田砂鉄 『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』 朝日出版社(2015)

――武田さんのリベラルな社会批評とメタル好きがどう結びついているのか、すごく興味があります。

西山「私も気になります。だいぶ違う世界なので(笑)」

――一部のメタルにはトキシックでマッチョな価値観が残っていますよね。

武田「そうですね。(ドナルド・)トランプを批判するミュージシャンが多いなか、〈誰だよ、いまだに彼のことを支持してるのは?〉と思ったら、知っているメタルミュージシャンだったり。歌詞の内容も、雄々しいのはまだしも、マッチョで独りよがりなものも多いですよね。とはいえ、メタルという音楽ジャンルが新人からベテランまで縦に長く、あらゆるジャンルとつながって横にも広く、多種多様になっているので、メタル=〇〇と語りにくいジャンルではありますよね。

メタルファンって、〈LOUD PARK〉などに行けばわかりますが、おとなしいじゃないですか。フェスが終わって会場を出て、駅に向かう道中、〈この人たち、ほんとにライブへ行ってたの?〉というぐらい静かになる(笑)。メタルファンの生態は掴めないままですね」

西山「〈LOUD PARK〉で、遊び疲れて地面に寝転がっているおじさんたちを見ると、〈この人たちはこれに救われているんだな〉と愛おしく感じます(笑)」

武田「明日から会社で大変なんだろうけど、この瞬間だけは忘れているんだろうなって。そう思っている自分も同じようなものですが」

 

メタル不遇の90年代、B’zが入り口になった2人

――武田さんは1982年生まれ、西山さんは1979年生まれです。B’zがメタルの入り口になっていることなど共通点が多いですね。

武田「西山さんもB’zなんですね。何が入り口でしたか?」

西山「“LADY NAVIGATION”や“BLOWIN’”が流行っていた頃に父が聴いていて、私も聴くようになったんです。それでB’zのインタビューを読んでいたら、セックス・ピストルズとクイーンとディープ・パープルとボン・ジョヴィを影響源として挙げていて、全部聴いたなかでセックス・ピストルズだけハマれなかった(笑)。そこから洋楽ロックを聴くようになりました」

武田「僕は、松本(孝弘)さんがTOKYO FMでやっていた『BEAT ZONE』という番組のリスナーだったんです。中学生にとって深い時間だった夜11時、眠い目をこすりながら聴いていたんですが、松本さんのボソボソしたしゃべりがとにかく眠くなる(笑)。

当時、松本さんが〈Rock’n Roll Standard Club〉という、近しいミュージシャンたちと70、80年代のハードロックをカバーする企画をやっていて、のちにアルバムが発売されましたが、その曲を番組で紹介していたんです。マイケル・シェンカー、ゲイリー・ムーア、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、フリーとか。それを聴いて、B’zの音楽がどこから来たのかを知ったんですね。その頃から『BURRN!』も読みはじめ……というのが入り口です。

ROCK'N ROLL STANDARD CLUB BAND 『ROCK’N ROLL STANDARD CLUB』 VERMILLION(1996)

ただ僕が中高生だった90年代中盤から後半にかけてって、いまから振り返ってもヘヴィメタルが寒々しい時期だったわけですよね。アイアン・メイデンにはブルース・ディッキンソンがいない、ジューダス・プリーストもロブ・ハルフォードが抜け、グランジに色気を出し、これまでやっていた音楽に自信をなくす、そんな流れがあった。メタリカも『Load』『Reload』の時代です。でも、リアルタイムに出た作品である限り、無理やりにでも、〈これはいい!〉と思い込むように聴いていました(笑)。なので、メイデンのブレイズ・ベイリー時代やティム・リッパー(・オーウェンズ)期のプリーストは、いまだに思い入れがあります」

IRON MAIDEN 『The X Factor』 EMI(1995)

JUDAS PRIEST 『Jugulator』 SPV(1997)