コラム

ピーター・アースキン(Peter Erskine)『Live In Italy』コロナ禍以降の静謐と熱狂をドキュメント ピアノトリオの歴史を更新する快作

©Alessandro Travi

ポスト・コロナ・パンデミック時代の幕開けを告げるライヴ・アルバム

 2021年秋にピーター・アースキン(ドラムス)は、長年共演しているアラン・バスカ(ピアノ)、ダレク・オレス(ベース)とのトリオを率いて、2週間のイタリア・ツアーで巡った。その最終日、11月19日のイタリア、カモーリでのコンサートの、ライヴ・アルバムである。ポスト・コロナ・パンデミックの幕開けを告げるコンサートに、有観客の演奏を求めていたアーティストと、ライヴ・ミュージックを渇望していたイタリアのオーディエンスが見事に一体となり、静謐と熱狂が共存するパフォーマンスを、克明にドキュメントしている。

PETER ERSKINE TRIO 『Live In Italy』 Fuzzy Music(2022)

 10曲のアルバム収録曲の中で、8曲はメンバーのオリジナル。アラン・パスカは5曲を提供している。“New Hope”は、パスカが2018年に脳卒中で倒れたキース・ジャレット(ピアノ)に捧げたチューンだ。キースのリリカルな側面にフォーカスし、アースキンの繊細なシンバル・ワークと、オレスのベースラインが、パスカの美しいピアノ・タッチを際立たせる。エンディングを飾る“Dear Chick”は、昨年ガンで急逝したチック・コリア(ピアノ)のオプティミスティックで、アグレッシヴな音楽性を投影している。アースキンのハード・スウィングで、3人が一体となった疾走感が痛快である。リーダーのアースキンのオリジナルは“Three-Quarter Molly”1曲だが、セット・リストの中で異彩を放っている。3/4拍のシンバル・レガートのみのスペースの中で、オレスとパスカが静かに舞う。満を辞したドラム・ソロで、ついに解き放たれたかの如く、激しいエモーションが迸る。ライナー・ノートを手がけたジョン・パティトゥッチ(ベース)は、「その制約を課した美は、日本の水墨画のようだ」と讃えている。ダレク・オレスは自らのベース・ラインをフィーチャーしたバラードの“Snowglobe”と、激しいグルーヴの“The Honeymoon”で、そのワイド・レンジなプレイを誇示している。美しいメロディと三位一体のインタープレイで、ジャズ・ピアノ・トリオの歴史が、またアップデートされた快作である。