直系が提示するウェザー・リポート・サウンドへの愛

 ピーター・アースキン。その経歴は、過去から現在に至るまで、一線で活躍し続けるファーストコール・ドラマーであり、様々なアーティストのサポートからアルバム制作、プロデュース業はもちろん、近年はウェザー・リポートのストーリーテラーとして書籍を出版。その他にバークレーの名誉博士号の授与、カリフォルニア大学で教鞭をとるなど、アカデミックな領域での話題が多かった氏が、ようやく原点回帰とも言えるドラマーとしての自分を再定義するようなアルバムを完成させた。

PETER ERSKINE Dr.UM Fuzzy Music/ワーナー(2016)

 プレーヤーとしての情熱が再燃するきっかけとしては、コ・プロデューサーとしてクレジットされている2人の存在も大きいだろう。1人は、キーボーディストのジョン・ビーズリーリー・リトナーマイク・スターンを始めとする著名アーティストのサポートなどで有名な凄腕。本作には彼のオリジナルも2曲収録。ウーリッツアーのエレピサウンドが気持ちよく、アルバム全体の雰囲気づくりに大きく貢献している。もう1人がベースのヤネク・グウィズダーラ。日本では渡辺香津美のトリオアルバム参加などで名前を知っている人も多いかも知れない。ピーターの評価は非常に高く 「ジャコ以来の天性の才能を持つベーシスト」と評している。

 この3人の屋台骨にボブ・シェパードジェフ・パーカーなどの優秀なソリストが参加したサウンドは、紛うことなき、2016年版ウェザー・リポート。彼らが自己の個性を抑制することなく、それぞれの原点にあるであろうウェザー・リポートへ愛情をまとめ上げることで、どこか懐かしくも現代的なサウンドに仕上がっている。

 未だに様々なバンドがウェザー・リポートの質感やサウンドを模索する現代において、その直系が提示する一つの正解と言ってよい。タイトルの言葉遊びにしても、ドラマーとしての矜持が感じられて頼もしく思う限り。あと国内盤ボーナストラックには、ジャコとアースキンのデュオによる《インヴィテーション》を収録。これはこれでやっぱりうれしいもんです!

 


LIVE INFORMATION

ピーター・アースキン フィーチャリング・ジョン・ビーズリー、ヤネク・グウィズダーラ&ボブ・シェパード
○3/4(金)[1st] 18:30開演/ [2nd] 21:00開演
○3/5(土)3/6(日)[1st.] 17:00開演/[2nd] 20:00開演
会場:COTTON CLUB(東京)
www.cottonclubjapan.co.jp/