2017年に結成された英レスター出身の5人組、イージー・ライフ。初のシングル“Pockets”(2017年)でインディーシーンにて早くも注目を集め、メジャーのアイランドと契約、〈BBC Sound Of 2020〉に選出されるなど、UKでいま最も勢いのあるバンドだ。そんな彼らが、全英2位のデビューアルバム『life’s a beach』(2021年)に続く待望の2作目『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』を2022年10月7日(金)にリリースする。ジャンル横断的な志向性はますます強まり、マレー・マトレーヴァーズ(Murray Matravers)の歌うリリックは深みを増した本作。今回は、新作や彼らを取り巻くカルチャーについて、マレーに話を訊いた。大いに盛り上がった単独来日公演と〈SUMMER SONIC〉出演を終えたマレーにインタビューをしたのは、国内外のシーンを熱心に追っているインディペンデントメディア〈ORM〉の3人だ。 *Mikiki編集部
このアルバムでは僕の感情を本当に深いところまで書いているんだ
――まず初めに音楽について訊かせてください。前作『life’s a beach』と比べて、今作の『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』は、ブロックハンプトンのケヴィン・アブストラクト(Kevin Abstract)とのコラボレーションなどもあり、より実験的で深掘りしたようなヒップホップ路線だなという感想を持ちました。今作を作るにあたり、バンドとしてどのような変化を加えようと思ったのでしょうか?
「良い質問だね。僕たちはいつもヒップホップにインスパイアされてきたんだ。特に制作に関してはね。だから、ラップトップで全てプロデュースしているし、使うのはMIDIキーボードだけ。他のものはあまり使わないからとてもヒップホップ的なメンタリティーだと思う。
でも『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』では、もっとオーガニックな楽器を使って70 年代のようなレトロなサウンドにしたかったんだ。ピアノや生ドラム、ストリングスを使った、エルトン・ジョンやビー・ジーズのようなクラシックなものにね。彼らからの影響もあって、今はヒップホップの要素が少なくなっていると思う。
だけど、サンプルでカットインしたり、たくさんの言葉をサンプリングしたり、ドラムを録音せずに全てサウンドボードで作ったりしていて、今作にもヒップホップの要素はあるね。
ケヴィン・アブストラクトとは、長い間お互いにフォローしあっていて、良い友達なんだ。だから、ずっと一緒に仕事をしたいと思っていて、1月にLAに行った時に一緒に曲を作ってみたんだ」
――アルバムタイトルにもなった〈MAYBE IN ANOTHER LIFE...(もしかしたら、別の人生では…)〉という言葉はアルバムの中で何度も出てきます。あなたにとって、この言葉はどのような意味を持つのでしょうか?
「制作に入る前にアルバムのタイトルが決まっていたんだ。だからこのフレーズをたくさん反映させて、作品に一体感を生むことができたんだと思う。
『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』は自分の決断と向き合う作品なんだ。自分の取る行動には〈もっと良い曲を書いていたら〉とか〈もっと友達のことを気にかけていたら〉みたいに、いつも後悔がつきまとう。そんなことがアルバムのテーマになっている。だから、アルバムを通してこのフレーズを何度も繰り返しているんだ」
――そのような思いはパンデミックやバンド活動を通して生まれたのでしょうか?
「そうだね。20代前半は自分の行動がもたらす結果について、あまり考えずに過ごしていたように思う。バンドをやっていて、波に乗っているような感じだったんだ。それはそれでクールだった。
でも、バンド活動が休みになって、振り返る時間ができた時に、自分が多くのことにうまく対処できていなかったことに気づいたんだ。アルバムを書いているときと同じように、自責の念に駆られ、もっとうまく対処すべきだったと思うようになったんだ。あるいは、自分ではどうしようもないことが自分に影響を及ぼしているのかもしれない。
それもあって、今作はより内省的になったんだと思う。このアルバムでは、僕のパーソナルな感情について多く書かれているんだ。本当に深いところまでね。その点については謝るよ……(笑)」
――謝らないでください(笑)。