志半ばで途絶えた夢の続きを追い求めて彼女がステージに帰ってきた。新たな魅力を加えて圧巻の存在感を発揮した待望のソロ・アルバム『Dreamer』では美しい新章の幕開けが轟いている!

手放さざるを得なかった夢

 Aldiousのヴォーカルとして活躍し、現在もカリスマ的な人気を誇るRe:NO(リノ)が、待望のファースト・ソロ・アルバム『Dreamer』を完成させた。Aldious時代の彼女を知らなくても、今年5月にリリースされたソロ第1弾シングル“You go your way”が配信のロック・チャートで1位に輝いたことで〈Re:NOってどんなアーティストなの?〉と気になっていた方も多いことと思う。

 まずは、Re:NOのこれまでの活動をおさらいしていこう。ストリート系のファッション雑誌でモデルを務めていたことで注目を集めた彼女だが、10代の頃から音楽活動を続けていたという。2013年にAldiousに加入してからは、プラチナブロンドのロングヘアに姫系のロングドレスというスタイルと、攻めのライヴ・パフォーマンスで一躍話題に。お姫様のようなファッションで激しくヘドバンする唯一無二の、かつ圧倒的なステージングは、海外のロック・ファンのハートも鷲掴み。イベントにも積極的に出演し、2016年には〈SUMMER SONIC〉〈LOUD PARK〉〈VISUAL JAPAN SUMMIT〉にて国内外の多くのアーティストと競演を果たしている。2017年には〈Summer Sonic Shanghai 2017〉で初の海外ライヴを敢行したほか、全国47都道府県ツアーで計50公演以上を行った。2018年に脱退するまでの6年間に、4枚のアルバムと2枚のミニ・アルバムに参加。Aldiousの持ち味であるメロディアスなメタル・チューンを見事に歌いこなしていたのはもちろんだが、バンドの音楽性にカラッとしたパンキッシュな空気感や、闇(病み?)の要素を取り入れることに成功したのもRe:NOの存在が大きく貢献していたように思う。すべてが順調に見えた。が、2018年、Re:NOに病魔が忍び寄っていた。聴覚に症状がある病気だったため、大音量での音楽活動にドクターストップがかかった。メンバー全員苦渋の決断だったようだが、同年12月17日の渋谷O-EASTライヴを最後にRe:NOはAldiousを脱退。志半ばで突然夢を手放さざるを得なくなった彼女は、さぞ失意の底を味わったのではないかと思う。

 

待たれていた復活

 Aldious脱退後のRe:NOは、絵を描くなどアート作品の制作に専念。2019年の1年間で書きためた詩と、LA撮影の写真や絵画作品を収録した初の詩集「生きづらい」が発表されたのは2020年。2~3月には東京・新宿マルイ アネックスにて初の個展「Re:NO展~生きづらい~」を開催してファンを喜ばせたが、その後も音楽活動に関するニュースはまったく入ってこなかった。

 風向きが変わったのは2022年。5月に大阪と東京でソロ初となるワンマン・ライヴ〈Re:NO Premium Live 2022〉を行うことが1月1日に発表され、高額チケットだったにもかかわらずソールドアウト。Re:NOの復活を3年半ずっと待っていたファンの期待度の高さを感じさせた。大阪・梅田Shangri-Laと渋谷CLUB QUATTROで開催された同公演は、事前情報を一切伏せ、まさかの〈オール新曲〉で敢行されたものだったが、入場時に〈いったい何を演るの?〉と言っていた観客たちも、退場時には〈アルバムはいつ?〉ととても満足しながら帰って行ったそうだ。ライヴ後には、先述のソロ第1弾シングル“You go your way”を配信リリースし、続いて7月には第2弾“Get over it”を、8月には第3弾“Re:play”を、9月には第4弾“Forget Me Not”と配信シングルを重ね、着々と歩みを進めてきた。

 シングル“Re:play”がリリースされた翌週、8月10日に渋谷O-EASTで行われたワンマンライヴ〈Dreamer〉は、まさにその名の通り、今回のアルバムの世界観をプレゼンするような内容だった。サポート・メンバーは、地獄カルテットの小林信一(ギター)、小山将平(ギター)、MASAE(ベース)、地獄カルテット/SADS/SUNS OWLのGO(ドラムス)。同ライヴではアンコール含めて全15曲が演奏されたのだが、これがほぼまるっとアルバム収録曲のまんまで、曲順も1~2か所入れ替わっているだけ。あのライヴを観た人は、リリースよりも一足早くこのアルバム『Dreamer』を体感したということになる。

Re:NO 『Dreamer』 Village Again(2022)

 バンドで活動していたヴォーカリストがソロ作品を制作する場合、アプローチの方法というとざっくり2種類。ひとつは、それまでの活動の延長上というか、作風を変えないやり方。もうひとつはそれまでできなかったことを取り入れるべく、外部の作家たちに詞曲を依頼したり、曲によってアレンジやミュージシャンを変えたり、イメチェンを計るパターン(極端な場合は過去の路線を封印するケースも)。ヴォーカリストとしての魅力や変化を引き出すことだけが目的なら後者のやり方も手段のひとつだと思うが、本作のベクトルは前者だ。全曲の作詞をRe:NO自身が担当し、作曲も共作の形を取りながら彼女自身の意見のもと、制作が進められたという(“AWL”は完全にRe:NO単独での作詞・作曲)。そうやって生まれた楽曲群を、Aldious時代から何度もタッグを組むShinYMGと小林信一のアレンジで仕上げたのが今回のアルバムである。レコーディングでは全曲GOがドラムを叩き、ギターとベースはほぼ小林が演奏。ライヴ・バンドのメンバーからは小山将平がギターで3曲、MASAEがベースで2曲に参加。さらにShinYMGが3曲でギターを、レルエのsayaがバイオリンとキーボードを演奏。そして、元MONDO GROSSOの吉澤はじめが2曲ピアノで参加している。要するに、楽曲アレンジからライヴ、レコーディングまでの一連の制作を信頼できる仲間たちによるチームが一丸となって取り組んでいるのだ。

 

夢を追い続けること

 こうしてバンド・サウンドを軸に制作された『Dreamer』、全体の印象としては実にRe:NOらしさが詰まった作品だ。ツーバスのパワフルなドラムと速弾きギターを活かしたAldious時代を彷彿とさせるメタル曲から、パンキッシュなガールズ・ロック、ライヴでサークルモッシュが起きそうなメロコア曲、シンプルで温かなミディアム・バラードなど、Re:NOの歌声が映える楽曲が並ぶ。同時に新しい要素もふんだんに取り入れており、例えばゴシックホラーのような雰囲気に彩られた“Realize”ではスパニッシュ・テイストのギター・ソロがフィーチャーされていたり、引きずるようなヘヴィーなベースラインで始まる“Burn!”ではヴォーカルに深くエフェクトをかけ、オクターヴ上下のダブルで歌っていたりと、これまで聴いたことのないRe:NOの一面を垣間見ることができる。

 特にRe:NOらしさを感じられるのが歌詞で、彼女の人生への向き合い方がまんま綴られているようにも思う。昔から彼女の書く歌詞は本当にストレートで、ラヴソングなら狂おしく燃え尽きるほど激しく、はたまたパンクな曲ならメッチャ攻撃的。思わず口を突いて出たセリフをそのままメロディーにはめていったんじゃないかと思うくらいノンフィクションな感じの曲も多い。『Dreamer』というタイトルが象徴しているが、今作では失って気づいた大切なことや大切な人、夢を追い続けることこそが自分にとって重要なんだと気付く過程がいくつも描かれる。夢なんか見なかったことにすれば楽に生きられるのかもしれないけれど、自分に嘘はつけない。結局すべては自分次第、夢を叶えるまでやるって覚悟を決めた!みたいな決意表明がアルバム全体に貫かれているのである。一周も二周もまわった後に〈やっぱり自分にはこれしかない〉と腹を括った人はブレない。彼女の夢の行く先を一緒に追いかけていきたいと思わせられる、エモーショナルなロック・アルバム――Re:NOのファースト・ソロ・アルバム『Dreamer』はそんな存在感と輝きを放つ意欲作なのである。

Re:NO在籍時のAldiousの作品を一部紹介。
左から、2015年作『Radiant A』、2017年作『Unlimited Diffusion』、2017年のミニ・アルバム『We Are』2018年のミニ・アルバム『ALL BROSE』(すべてRadiant A/Village Again)

演奏陣の関連作を一部紹介。
左から、SADSの2018年作『FALLING Ultimate Edition』(SPACE SHOWER)、小山将平が在籍するCYANOTYPEの2021年作『PORTRAITS』(よしもとミュージック)、レルエの2020年作『Eureka』(ビクター)、吉澤はじめが率いるMANTASAの2021年作『MANTASA』(dbr-music)