福岡発、宇多田ヒカル“SAKURAドロップス”のカヴァーも話題の4人組バンドがめざすのはシューゲイザー × J-Pop。彼らが初作に込めた〈希望〉とは――?

シューゲイザーとJ-Pop

 2018年5月に活動を開始した福岡発の4人組、クレナズム。これまで4枚のミニ・アルバムを発表し、初期はシューゲイザーからの影響を色濃く感じさせたが、リモートで制作された3作目『eyes on you』(2020年)ではネット・ミュージックにも接近。オルタナティヴな資質を根底に持ちつつも、ジャンルレスな次世代のJ-Popを鳴らすバンドへと進化を遂げてきた。

 「シューゲイザーに触れたのはきのこ帝国がきっかけで、そこから海外のアーティストも掘っていくなか、最初にハマったのがマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。いまもライブのSEは彼らの“Only Shallow”です。2020年にコロナ禍になって、全員DTMを始めた頃にネット・ミュージックへの興味が深まり、もともとみんなボカロは好きだったし、ヨルシカとかYOASOBIにも触れるようになりました。そういうトレンドに沿った曲もリリースすることで、そこを入口にしてクレナズムのコアなところ、シューゲイザーの部分に触れてもらうきっかけにもなるんじゃないかなって」(けんじろう、ギター)。

 「もともとバンドを組んだときから、ただシューゲイザーをやりたいというよりは、そこにJ-Popを混ぜたような感じをやりたいと思っていて。だから、オケの部分では変化があるけど、基本的なメロディーの作り方はずっと変わってないんです。2021年の4作目『Touch the figure』は本当に幅広い曲調で作れて、それが今回のフル・アルバムにも繋がってると思います」(まこと、ベース)。

クレナズム 『日々は季節をめくって』 MMM/RED(2022)

 まことの言葉通り、そのファースト・アルバム『日々は季節をめくって』はシューゲイザーの出自を確かに感じさせつつも、非常にヴァラエティー豊かな全9曲を収録。それはルーツの異なる4人のメンバーがそれぞれ作詞・作曲を行うからこその達成でもある。

 「いまはサブスクでプレイリストを聴くことが普通で、そこにはいろんな曲調やジャンルがあるから、今回のアルバムは2022年のクレナズムのプレイリストみたい」(けんじろう)。

 「2022年は〈10日に1曲作ろう〉っていう課題があったんですよ。出来上がった膨大な量のストックから選んだ9曲なので、僕たちの中ではどの曲も〈今年の推し曲〉です」(しゅうた、ドラム)。

 「いまはデモを作る段階で仮のテーマをバンドで決めて、それに合わせて4人がそれぞれデモを作って、そこで選ばれた曲を進めるっていう、コンペみたいな感じで制作していて。メンバーはライヴァルでもあり、すごく影響を受ける存在でもあるんです」(萌映、ヴォーカル/ギター)。