BANDING TOGETHER
フレッシュな顔ぶれの台頭で百花繚乱の季節を迎えた日本のバンド・シーン

 羊文学が〈フジロック〉のメインステージに出演し、Kroiは年明けに控える武道館公演をソールドアウトさせるなど、近年に台頭してきた日本のバンドがより大きな舞台へ進みはじめた感のある2023年。ここでは彼らに続く躍進が期待される次世代の顔ぶれを紹介していこう。まず、新作『Welcome to My Castle』を発表したばかりのChilli Beans.はネクスト・ブレイク候補の筆頭だ。Vaundyとコラボするなど以前からオーセンティックなバンド・サウンドに止まらない開かれた音楽性を示してきた彼女たちだが、新作ではコンテンポラリーな感覚がさらに開花。打ち込みのビートからヒューマンビートボックスまでを自在に操りつつ、キュートでモダンなポップソングに仕上げる手腕は、ジャック・アントノフ仕事への日本からの回答、とでも言いたくなる鮮やかさを湛えている。

 ロック・バンドならではのアンサンブルと現代的なポップネスの両立という点では、chilldspotの『ポートレイト』もおもしろかった。プロダクション重視なChilli Beans.と比較すると、彼らは高度なプレイヤビリティーに裏打ちされたソウル~ジャズ的なグルーヴが特徴。比喩根の艶と陰りが同居する歌声は、より広い層に届くポテンシャルを感じさせる。

 また、カネヨリマサルやアカネサスといったストレートなギター・ロックを鳴らすバンドもフレッシュな魅力を放っていた。エモ~ポスト・ロック影響下の緻密なアンサンブルを聴かせるなきごと、センティメンタルなラヴソングに長けたmoon drop、男の弱さや情けなさをなど赤裸々な言葉と蒼い演奏で綴るヤングスキニーなども含め、彼らは乱暴に括れば王道〈J-Rock〉の系譜にあたるバンドと言えるだろう。一方、パンク~パワー・ポップ・サウンドが痛快なジャンキー58%、ドリーム・ポップをルーツに持つハク。、グランジやオルタナへの愛情をノイジーなギターで表現するSAGOSAIDといったバンドからは、いわゆる洋楽インディー的な感性が香る。

 あたらよ、クレナズムといったバンドは、シューゲイザーを出自にしながら邦楽特有の思春期性や抒情性を掘り下げて表現を深めてきた面々。後者が2023年を通じて発表した楽曲の総集編にあたる『Whisper of the heart』は、その美学を結晶化したマイルストーンと言うべき傑作だった。さらに、クスリとさせつつグッとこさせる歌心が少年ナイフやドクロズに連なるサバシスター、フォーキーなメロディーセンスが人懐っこいケプラ、歌謡曲やGS的な楽曲に個性を刻むブランデー戦記といったバンドにも、日本のロックならではの旨味が備わっている。

 そして、メタルコアをベースにしたエクストリームな音楽性を武器に、日本のみならず世界に名を轟かせんとしている4人組が花冷え。だ。ハイパーポップ的な突破力もあるメジャー初作『来世は偉人!』を引っ提げ、11月にはブリング・ミー・ホライズンがキュレートしたフェス〈NEX_FEST〉に出演。2024年にさらなる注目を集めていくのは間違いない。

 以上、見てきたように、音楽性やムードは千差万別ながら、いずれも固有の魅力を持った新進バンドの登場が後を絶たない日本のロック・シーンは百花繚乱の時期を迎えている。2023年は特に女性を中心とするバンドが存在感を示していた印象で、“ファジーネーブル”がヴァイラル・ヒットになったConton Candyのように、今後はますますTikTokを起点にブレイクする存在も増えていきそう。この国のバンド・カルチャー、なかなかおもしろいことになっていますよ!