ハイデルベルク交響楽団によるCDレコーディングの面白さ――多数リリースし続ける理由
1993年に指揮者トーマス・ファイが創立したハイデルベルク交響楽団は、進行中のハイドン交響曲全集など、50枚を超すCDをリリースしている。その魅力は、モダン楽器を基本にピリオド解釈を採用して、積極性と俊敏な力強さをもつことだ。
創立者のファイは2014年に不慮の事故で指揮活動を中断したが、2020/21年のシーズンからヨハネス・クルンプが指揮者となり、ハイドンの交響曲全集のレコーディングを再開した。
ヴィオラ奏者として参加し、国内盤の解説も執筆されている矢崎裕一さんに、オーケストラについてうかがった。
――どんなきっかけで参加されたのですか?
「マンハイム音楽大学に留学しているときから、さまざまなオーケストラに参加していたのですが、たまたま隣席のヴィオラ奏者と意気投合して、その人が誘ってくれたんです。メンデルスゾーンの交響曲全集の途中から録音に参加しています」
――どんな印象でしたか。
「とにかく新鮮というか、衝撃というか。面白い。こんなに思いっきり全力投球でひけるオーケストラがあるんだ、それを求める指揮者がいて、応えるオーケストラがあるんだということでした。自分はフリーランスの立場で、さまざまな歌劇場のオーケストラにも参加しているのですが、ほかでは体験できないものでした」
――新しい指揮者のクルンプは、どんなふうに決まったんですか。
「ファイが指揮できなくなったあと、何人かの指揮者が来てくれるなかで、フィーリングが合った。クルンプもファイの演奏が好きで、それまでも聴いていたんです。ファイとは音楽を作っていく方法が全然違うんですが、出てくる結果としての音楽は比較的近いものがある。共通項が多い音楽だと思います。それがクルンプの音楽なのか、ハイデルベルク交響楽団が弾いてるからなのか、どこまでがそのどちらなのかは、自分でもわかりませんが」
――楽員が作っていく部分も大きいのですね。今後の予定は?
「ハイドンは26集まで出まして、全部で35集になるはずです。録音は32集まで終わっていて、来年初夏までの3回のセッションで終わる予定です。コンサートではブラームスの交響曲をシリーズでやっていますが、録音する曲はハイドンのあとどうなるか、決まるのはまだこれからですね」
――全集の完成と、次のシリーズも期待しています。ありがとうございました。