Page 2 / 3 1ページ目から読む

相手の意見を尊重して自分の思いを伝える

──加藤さんはこの曲の歌詞について、〈ありがとう、ごめんなさいが言える子になろう〉と書かれた新聞広告に違和感を持ったことがモチーフになったとコメントされていました。結果的に、誰のことも否定しない内容に昇華されているのが素晴らしいなと。

「私が好きなのは、〈時間はシャボン玉〉というライン。確かに時間って一瞬にして過ぎ去っていくし、すぐ思い出に変わってしまうなと思うんです。気づく暇もなく時間が過ぎ去っていく、そんな誰もが共感する気持ちをユーモアも交えながら綴っていくのが素敵だなと」

加藤登紀子のインタビュー動画

──優しくて暖かい歌詞のようで、実は今の世界情勢に対する強烈なメッセージが込められている。しかも、そうと感じさせない優しさがあるんですよね。

「言いたいことをそのままダイレクトに伝えるよりも、優しい言葉や抽象的な言い方で伝えたほうがより効果的な場合もありますよね」

──違う意見に対してどう向き合うのか、今後ますます重要な課題になっていくと思います。Hanaさんは全く意見の違う人と話し合うときにはどんなことに気を付けていますか?

「自分と意見が合わない人と話すときはまず相手の意見を尊重し、〈相手がどういう感じに思っているのかな?〉と考えてみてから自分の思いを伝えるようにしています。

今はSNSなどで、深く考えずに言ってしまったことがトラブルの原因になったりするじゃないですか。私も時には深く考えず、ダイレクトに言っちゃうこともあるんですけど(笑)、発信するときはまず立ち止まって考えることが大切なのかなと思っていますね」

 

13歳で書いたメロディーをもとに揺れ動く感情を表現した“16 - sixteen”

──“16 - sixteen”は、Hanaさんが作詞作曲を手掛けているのですね。ライブでも、自分の曲だからこそ背伸びせず等身大で歌っているのがとても心地よかったんです。

「ありがとうございます。

“16 - sixteen”は、私が13歳の夏休みに書いた曲です。ピアノを遊びで弾いているときにふと思いついたメロディーが基になっているのですが、あれから3年が経ち、こういう形で世に出せることをとても感慨深く思っています」

“16 - sixteen”

──〈今すぐこの場所から飛び立ちたい〉〈違う世界を覗いてみたい〉という強い思いが歌詞の中に刻まれていますね。

「ティーンエイジャーの頃は、まだまだ経験も浅く自分の世界がすごく小さいじゃないですか。世界の大きさをまだ何もわかっていないけど、それでも好奇心旺盛で。早くここを飛び出していろんな場所へ行き、いろんな人に会ってみたいという気持ちでいっぱいだったんですよね。

その反面、未来への不安というか、〈私は5年後にどうしているのかな?〉みたいな気持ちもあって、その両方で揺れ動く感情をそのまま歌詞にしました。

それをROTH BART BARONさんがとても素敵にアレンジしてくださって、嬉しい気持ちでいっぱいですね」

──ちなみに今16歳のHanaさんが、13歳のHanaさんに会えるとしたら、どんな言葉をかけてあげますか?

「〈いっぱい楽しいことが待っているよ〉と教えてあげると思う(笑)。13歳のときは、〈この先もずっと歌い続けられるのかな?〉みたいなことをよく考えていたので、そのときよりも少しは自信がついた今の私なら、(“16 - sixteen”の歌詞〈Wish I could fly away〉にかけて)〈You can fly away〉って言ってあげられるんじゃないかな」

 

映画「あつい胸さわぎ」の力強い主題歌“それでも明日は”

──来年公開の映画「あつい胸さわぎ」のために書き下ろした主題歌、“それでも明日は”についても訊かせてください。作詞を柴田聡子さん、作曲をUTAさんが手掛けたこの曲は、緊張感たっぷりのアカペラで始まり次第に美しく壮大なアレンジへと発展していくのが聴きどころの一つだと思いました。

「力強いメッセージソングですよね。私は今までこういうタイプの楽曲を歌ったことがなく、少し不安な部分もあったのですが、よくできたかなと思っています(笑)。

先月、東京国際映画祭で特別上映されたので鑑賞してきたのですが、そこで初めて監督のまつむらしんごさん、主演の吉田美月喜さんにお会いすることができて嬉しかったです。

エンドロールで自分の歌声が流れてくるのを、お客さんと一緒に映画館で聴くのはものすごく不思議な気持ちでした。ドキドキもしたし、ちょっとだけエモーショナルになっちゃいました」

映画「あつい胸さわぎ」予告編

──(笑)。たくさんのオーディエンスの前でライブをするのと、映画館で自分の歌声が流れるのを観客と一緒に体験するのとでは、やっぱり意味合いが違いますか?

「まったく違いましたね(笑)。映画館で観るときは、映画のメッセージと組み合わせてその歌が盛り上がっていくので、パワフルな感じが既にできあがっているけど、ライブで歌うときは、そのメッセージを伝えるのが私の責任。なのでライブの方が、断然緊張しますね」