歌は感情や想いの大切な出口
TOWA TEIやROTH BART BARON、am8らの作品にボーカリストとしてデビュー前から参加し、そのスモーキーでノスタルジックな歌声が話題となっていたHANA。これまでずっと謎のベールに包まれていた彼女が、ついにHana Hope名義でのファーストシングル『Sentiment / Your Song』でデビューを果たした。
音楽好きの家庭で育ち、物心がついたときにはすでに人前でよく歌を歌っていたというHana Hope。とりわけお気に入りだったのは、父親の車の中にあった『Songs For Japan』(2011年)。東日本大震災の復興支援を目的としたこのチャリティーアルバムに収録された、ジャスティン・ビーバーやブルーノ・マーズなどの楽曲を全て暗記するほど聴き込んでいた。
先日、筆者が行ったオフィシャルインタビューで歌が好きな理由について尋ねると、ひとつ一つの言葉を確かめるように、彼女はこう答えてくれた。
「歌は、自分自身の感情や思いを乗せて伝えることができますし、私にとって大切な〈outlet(出口、吐け口)〉なんです。それに、他の人よりもちょっと上手にできることがあるのは、自分に自信を持つうえでも大事なことだと思っていますね」。
その伸びやかで表現力豊かな歌声とは裏腹に、物静で落ち着いた印象の彼女。音楽以外で夢中になっていたのはバレエで、「音楽と同じように、自分が思っていることをカタチにできるところが好き」だと話す。「10年くらい続けたことは、音楽をやるうえでも役に立っている」という。
読書も好きで、最近読んだお気に入りの小説はエマ・ドナヒューの「部屋」とミン・ジン・リーの「パチンコ」だと教えてくれた。前者はブリー・ラーソンを主演に迎えた映画版がトロント国際映画祭で観客賞を受賞するなど、高い評価を得た作品。後者は日本に移住した韓国人家族の物語から始まる壮大な歴史小説だ。
「私は今、インターナショナルスクールに通っているので、日本の歴史などを習うことがあまりなくて。こういう歴史小説などから学ぶことがたくさんありますね」。
YMOのトリビュートコンサートでデビュー
そんな彼女がシンガーとしての活動を本格的にスタートしたのは2019年。YMO結成40周年を記念した、彼らゆかりのアーティストによるトリビュートコンサート〈Yellow Magic Children〉に参加したのがきっかけだった。このときHanaは高野寛とともに、YMOの“CUE”(アルバム『BGM』収録)をカバー、その類稀なる歌声を披露した。
「ものすごいレジェンドたちとステージに立って、観ているお客さんもものすごく多くて。とにかく、今まで経験したことのないようなことばかりでとても緊張しました。ただ、そこで色々と学ぶことができたので、他のステージに立つときはそこまで緊張しなくてすむようになりましたね(笑)」。
2019年には、ROTH BART BARONのアルバム『けものたちの名前』に収録された“けもののなまえ”にボーカルで参加。同作のリリースツアーの初日、11月27日の東京・渋谷WWW Xでの公演にも出演した。2020年には、Billboard Live TOKYOで開催されたライブイベント〈鈴木慶一ミュージシャン生活50周年記念ライヴ〉に坂本美雨や小池光子(ビューティフルハミングバード)、斎藤アリーナらとともにステージに立ち、堂々としたパフォーマンスを披露した。
そして2021年にはTOWA TEIの“MAGIC”でメインボーカルを務め、さらにアニメ映画「竜とそばかすの姫」で声優にも挑戦したほか、ソニーや日立といった企業のTV-CFで歌唱を担当するなど活躍の場を広げてきた。