YMOのトリュビュートライブ〈Yellow Magic Children〉で、初めてステージに立って歌った13歳の少女、Hana Hope。その後、彼女はROTH BART BARONのアルバムに参加したり、映画「竜とそばかすの姫」(2021年)で声優に挑戦したりするなど、様々な経験を積んで2022年にシンガーとしてデビューした。

そんな彼女がファーストアルバム『HUES』をリリース。YMOのトリビュートライブで歌った“CUE”や、これまで発表したシングル曲に加えて、Black Boboi、ROTH BART BARON、Maika Loubté、ホンネ(HONNE)など様々なアーティストが提供した新曲を収録。彼女のイノセントな歌声の魅力を、多彩なサウンドが引き出した色鮮やかなアルバムに仕上がっている。

シンガーとして大きな一歩を踏み出した彼女に、アルバムについて話を訊いた。

Hana Hope 『HUES』 U/M/A/A/HINTS music(2023)

 

Black Boboiとの密なコラボレーション“HARU”

――ついにファーストアルバムが完成しました。Hanaさんはどんなアルバムにしたいと思っていました?

「いろんなジャンルの音楽を探検して、そこから自分に合うものを見つけていきたいと思っていました。そして、歌で自分を素直に表現できるといいなって」

――こんな曲をやってみたい、とか、リクエストしたりアイデアを出したりもしたのでしょうか?

「はい。私はノラ・ジョーンズとかジョニ・ミッチェルとか、アコースティックギターを使った曲が大好きなので、そういう雰囲気の曲をやってみたかったんです。それが今回、“HARU”という曲になりました」

『HUES』収録曲“HARU”

――曲を提供したBlack BoboiはHanaさんのデビュー曲“Sentiment”も手掛けていますね。“Sentiment”では、デモを聴いた時に感じたHanaさんのイメージを歌詞に反映させたそうですが、今回もそうだったんですか?

「今回は曲を作る前にアイデアを出し合って、そこからメロディーを作ってもらったんです。なので、“Sentiment”の時より密にコラボレートして作りました。

曲のはじめに子供の声が入っているんですけど、あれは私のアイデアなんです」

――あの子供の声はHanaさん?

「そうです(笑)。2~3歳の頃ですね」

――子供の頃の自分とのコラボレートでもあったわけですね。英語の歌詞ですが、どんなことが歌われているのですか?

「自然のなかを〈cloud-headed(空想にふけっている)〉な感じで散歩しているうちに希望が湧いてくる、みたいな曲です。

そこに子供の声加えることで、ピュアだった頃、何をやっても楽しかった頃の自分を振り返って、少し若返るみたいな(笑)」

――今でも充分若いですよ(笑)。確かに子供の頃の声は何の不安も感じさせない元気な声でしたね。そんな声と今のHanaさんの歌声が重なっています。レコーディングではどんな風に歌おうと思いました?

「部屋をモヤモヤした霧のようなもので包み込む。そんなイメージで歌いました。

思った以上に、子供の頃の声と馴染んでいたと思いますし、英語の歌詞に少しだけ日本語を加えることで私らしさも表現できたんじゃないかと思います。私は日本語も英語も喋るので、こうやって日本語で喋っている時に、ぽろっと英語が出たりするんです。その逆もあって」

――なるほど、Hanaさんの素顔が出ている曲なんですね。

信頼しあうROTH BART BARONとの共同作業

――ROTH BART BARONが“Dawn Dancer”と“SORA”を提供していますが、HanaさんはROTH BART BARON『けものたちの名前』(2019年)にボーカルで参加していました。今作に収録されたシングル曲“16 – sixteen”をROTH BART BARONがプロデュースするなど彼らとは以前から交流がありますが、“Dawn Dancer”はROTH BART BARONのカラーが出た曲ですね。

「歌詞を読んだ時、〈夜のコンビニ〉〈星をのんだ〉みたいに夜のモチーフがいっぱい入っていて、〈dawn(夜明け)〉になる直前の瞬間が頭の中に浮かびました。

ロットらしい壮大なサウンドで、不安や孤独を感じながらも〈dawn〉に向かって〈dance〉する。そんな希望が湧いてくる曲だと思います」

『HUES』収録曲“Dawn Dancer”

――戦争やいろんなことで不穏な今の世の中を意識しているような曲ですね。もう一曲の“SORA”はフォーキーな曲で、きっとHanaさんがお好きなタイプの曲なんじゃないでしょうか。

「すごく好きです。三船さん(ROTH BART BARONの三船雅也)が書いた歌詞を読むと、〈空を駆け抜けてく〉という一節が“16 – sixteen”の〈飛んでいく〉〈走っていく〉というメッセージに通じるところがあって、三船さんが“16 – sixteen”の歌詞を意識して書いてくれたんじゃないかな、と思って嬉しかったです」

『HUES』収録曲“SORA”

 

13歳の自分に〈希望を持った方がいい〉と歌いかける“16 – sixteen”

――“16 – sixteen”の作詞作曲はHanaさん。13歳の時に書いたそうですね。そんな頃から曲を書かれていたんですか?

「一人で部屋にいた時に、ピアノで遊んでいて思いついたメロディーなんです。曲を作ろうと思っていたわけではなく、自然に出てきたメロディーなので、それが曲になって世に出るなんて自分でも驚いています(笑)」

『HUES』収録曲“16 – sixteen”

――遊んでいて思いついたメロディーをよく覚えていましたね。

「いいメロディーや面白いアイデアが思い浮かんだら、ボイスレコーダーに録音していたんです。

歌詞は13歳の時に少しだけ書いていたんですけど、それを書き直したり、書き加えたりしました。ひとつの曲のなかで、13歳と16歳の時の自分の視点がクロスオーバーしているんです」

――13歳のHanaさんはどんな少女でした?

「未来に不安を感じていて、ちょっとペシスミスティックでした。この曲では、16歳になった私が13歳の私に希望を持った方がいい、不安に思ったら逃げちゃえばいい、〈I wanna runaway〉って歌っているんです」

――3年で成長したんですね(笑)。三船さんはボーカリストなので歌にこだわりを持っていると思いますが、Hanaさんが歌入れをする時にアドバイスなどはありました?

「あまり何も言わずに私の歌うスタイルを尊重してくれました。私がROTH BART BARONの曲を歌う時に意識していたのは、なるべく最初のテイクで決めることでした。あまり考え込まずに、ありのままの自分を見せるようにしたかった。それが三船さんに伝わったんじゃないかと思います」

――お互い信頼しあっていたんですね。

ホンネ、Maika Loubtéとの新たな挑戦

――今回、初めてのコラボレートしたアーティストもいます。例えばイギリスのエレクトロユニット、ホンネ。彼らの参加はHanaさんのリクエストだったんですか?

「はい。私がホンネさんたちの曲が好きで、お願いしてみたら奇跡的にレスポンスがあったんです。私の声を気に入ってもらったみたいで、アルバムに参加してもらえることになりました」

『HUES』収録曲“We’ve Come So Far”

――曲を聴いてどう思われました?

「ホンネの特徴的なスタイル、エレクトロポップなサウンドとハーモニーの良さが全面に出ていて、空が〈パカーン!〉と開いたような曲だと思いました。普通は音をいっぱい重ねると〈やり過ぎだな〉と感じるんですけど、この曲は細かく作り込まれているのに気持ち良くて違和感を感じないんですよね。

これまでこういうアップビートでポップな曲はあまり歌っていなかったので初挑戦だったんですけど、この曲を歌ったことでシンガーとして変化できた気がします」

――Maika Loubtéさんも初顔合わせですが、彼女が提供した“the ace”もエレクトロニックなサウンドで、Maikaさんらしい曲になっていますね。歌ってみていかがでした?

「フランスの音楽みたいな雰囲気がある曲だなって思いました。ドラマティックな展開はないけど安定感がある。

私は感情を入れて歌うのに慣れているので、盛り上がるパートがない曲にどうやって歌を合わせたらいいんだろうって最初は少し心配だったんです。でも、出来上がった作品を聴いて自分にとって新しい曲になったと思いました」

『HUES』収録曲“the ace”

――フレンチポップとかボサノバとか、クールに歌う歌もHanaさんに合いそうですね。

「次のアルバムでやってみたいです(笑)」

 

ヒロインを演じるように歌った映画「あつい胸さわぎ」主題歌“それでも明日は”

――アルバムのラストに映画「あつい胸さわぎ」の主題歌“それでも明日は”が収録されています。映画のために書かれた曲ということで、歌う時の気持ちの入れ方はオリジナル曲とは違いました?

「そうですね。どうやって曲に向き合えばいいか、最初はいろいろ考えました。そして、映画のヒロインの思いをきちんと表せるように歌うことを意識して、ヒロインを演じるように歌ったんです。映画の脚本を読んで、〈私だったらどうするだろう?〉と思って歌ったら素直に歌えました」

『HUES』収録曲“それでも明日は”

――歌詞をシンガーソングライターの柴田聡子さんが書いています。歌詞については、どんな風に思われましたか?

「素晴らしい歌詞だと思いました。曲の出だしの〈わたしに聞こえる わたしのこの声〉という一節からは、ヒロインが自分に言い聞かせているイメージが浮かんできました。シンプルな歌詞なんですけど、そこからいろいろな感情を引き出すことができるんです」

――この曲の出だしは声だけ。演奏がないアカペラ状態ですが、歌う時の気持ちも変わってきますか?

「音の支えがなくて自分だけだったので、主人公の孤独な気分になれました。そういう点では、アカペラで歌えてよかったと思います」

歌っている時は素直に、正直になれる

――話を伺っていくと、今回のアルバムではいろんな歌い方、感情表現に挑戦したんですね。子供の頃から思いついたメロディーを録音していたということでしたが、歌うことの楽しさを知ったきっかけがあったのでしょうか。

「特にきっかけみたいなものはなくて、気がついたら歌が身近なものになっていました。

歌っている時は、いろんな感情を自分の中に迎え入れて、それを素直に表現できる。いつもより〈honest(正直)〉になれるのが歌の魅力だと思います」

――とくに惹かれる、あるいは表現しやすい感情はありますか?

「悲しさや切なさです。そういう歌が昔から好きなんですよね」

――そういった繊細さがある一方で、このアルバムには希望を見出そうとする力強さもありますね。

「そうですね。今の世の中だと、そういうテーマになってしまうところもあって。それに、そういう歌だったらどの年代でも共感できると思うんですよね」

――確かにそうですね。希望を歌うようになったということは、ペシミスティックだった少女時代を卒業した?

「どうでしょう(笑)、まだわからないですね」

 

歌なら弱いところもさらけ出して通じ合うことができる

――アルバムのタイトル、『HUES』とは〈色彩〉という意味だそうですね。とてもカラフルなアルバムになったと思いますが、Hanaさんが好きな色は?

「深い緑です。子供の頃、週末になると両親が森につれて行ってくれたりして、自然に触れ合う機会が多かったんです。それで自然が好きなりました。深い緑を見ると森に囲まれているような気がするんです」

――森を見ていると気持ちが落ち着きますよね。

「そうなんです。自然に触れ合っていると、都会にいる時の自分とは違う自分になれる。そんな風になれる曲を作りたいと、今回のアルバムで思っていました。

音楽の魅力は、いま自分がいるところと違う世界に連れて行ってくれること。そんなアルバムになっていたらいいなって思います」

――ファーストアルバムを発表したことでアーティストとしてスタートラインに立ったともいえますが、デビューしてから、成長したな、と自分で思えるところはありますか?

「以前よりは、自分が考えていることを周りの人に伝えられるようになったと思います。プロのアーティストとして自分の名前で音楽を発表しているので、きちんと私が納得いく作品を出したい。そうできるように、自分の気持ちを人に伝えるということは大切にしていきたいと思っています」

――これから挑戦してみたいことはありますか?

「弾き語りのライブに憧れているので、楽器が弾けるようになりたいですね。今、コールドプレイの曲でギターの練習をしているんですけど、すぐ飽きてしまう性格なのでなかなか上達しなくて(笑)。

でも、歌の練習は全然飽きないんですよね。何時間やってても楽しい」

――やっぱり歌が好きなんですね。

「もっともっと練習して歌の表現を広げていきたいと思っています。

映画や小説も好きなんですけど、やはり自分にとっていちばん身近な表現は歌。歌だったら自分の弱いところもさらけ出して、人と通じ合うことができる気がするんです」

 


RELEASE INFORMATION

Hana Hope 『HUES』 U/M/A/A/HINTS music(2023)

リリース日:2022年12月14日(水)
配信リンク:https://lnk.to/HanaHope_HUES

TRACKLIST
1. HARU (Lyrics, Music & Arranged by Black Boboi)
2. 16 – sixteen (Lyrics & Music by Hana Hope Produced by ROTH BART BARON)
3. Weʼve Come So Far (Lyrics & Music by Andrew Clutterbuck James Hatcher Produced by
HONNE)
4. Your Song (Lyrics by Yui Mugino Music by 會⽥茂⼀ Arranged by 浦上想起)
5. きみはもうひとりじゃない (Lyrics by 加藤登紀⼦ Music & Arranged by 江﨑⽂武)
6. Dawn Dancer (Lyrics & Music by 三船雅也 Produced by ROTH BART BARON)
7. CUE (Lyrics by ⾼橋幸宏 細野晴⾂ Peter Barakan Music by ⾼橋幸宏 細野晴⾂ Arranged by toshi808)
8. the ace (Lyrics by Keisei Loubté Music & Arranged by Maika Loubté)
9. SORA (Lyrics & Music by 三船雅也 Produced by ROTH BART BARON)
10. Sentiment (Lyrics, Music & Arranged by Black Boboi)
11. それでも明⽇は (Lyrics by 柴⽥聡⼦ Music by UTA Arranged by UTA for TinyVoice, Production)

 

LIVE INFORMATION
Hana Hope Live ーHUESー ハナ・ホープ ライブ ヒューズ
2023年4⽉6⽇(⽊)東京・表参道 WALL&WALL
開場/開演:18:45/19:30
出演:Hana Hope(ボーカル)/永井聖⼀(ギター)/網守将平(キーボード)/toshi808(シーケンサー)/Smooth Ace(コーラス)チケット⼀般発売⽇
2023年3⽉15⽇(⽔) チケット発売開始
前売り/当⽇:3,000円/3,500円(いずれもオールスタンディング/ドリンク代別)
学割:受付で学⽣証、および⾝分証明証をご提⽰いただきましたら、500円キャッシュバックいたします。
プレイガイド(ZAIKO):https://wallwall.zaiko.io/item/355148
年齢制限:3歳以上チケットが必要

■注意事項
・公演延期、中⽌の場合を除き、チケットの払い戻しは⾏いません。
・チケットご購⼊後のキャンセルはできません。
・写真撮影、録⾳、録画は⼀切禁⽌とさせていただきます。
・ライブ会場には撮影のカメラが⼊ります。お客様が映り込む可能性がございますので、あらかじめご了承ください。撮影した映像や画像は、インターネットを含む各種媒体、映像作品等で使⽤する可能性がございます。

主催:HINTS music
企画・制作:HINTS music/TAPES PRODUCTION
協⼒:U/M/A/A Inc.

 


PROFILE: Hana Hope
2006年、東京都出⾝。2020年、伝説のレコーディングスタジオ、⾳響ハウスの映画「Melody-Go-Round」に出演、テーマソングを歌う。2021年には細⽥守監督の映画「⻯とそばかすの姫」で声優デビュー。2022年2⽉に、シングル『Sentiment / YourSong』でデビュー、国内外における数多くのプレイリストやチャートに⼊り話題のニューカマーとなる。11⽉3⽇、加藤登紀⼦ × 江﨑⽂武の⼿になる待望のセカンドシングル“きみはもうひとりじゃない”、そして⾃⾝の作詞・作曲による“16 – sixteen”をリリース、同⽇には表参道WALL&WALLにて初のソロライブを開催。同年12⽉14⽇にはサードシングル“それでも明⽇は”(作詞:柴⽥聡⼦/作曲:UTA)を発表。同曲は2023年1⽉公開の映画「あつい胸さわぎ」の主題曲である。これまでに⽇⽴、ソニー・コンピューター・サイエンス研究所、花王、JR東⽇本などのコマーシャルソングの歌唱、ナレーションなども⾏っている。〈17歳とは思えない表現⼒〉という評価を集めるHana HopeはデジタルネイティブなZ世代。⼩さな枠にとらわれることのない幅広い⾳楽性を表現する新世代のフィーメールシンガーである。