数々のチルアウト~バレアリックの名盤を世に送り出してきた音楽家の、『before -いままでのむこうがわ-』からちょうど1年ぶりとなる新作は、彼特有の展開豊かな長尺アレンジを封じ、これまでの作風とは一線を画した初のビートレス・アルバムに。ゆったり流れる鍵盤のメロディーがどこまでも深い夜空を喚起させる表題曲や、郷愁感漂うサックスの音色に感情がヒリヒリする“Moonage Daydream”、流麗なエレクトロニカが心を震わせる“Ray”などのシンプルな音数で紡がれるサウンドは、彼の内面を映し出したような寂寥感を孕んだ温もりに満ちている。ピアノとサックスのアンサンブルが過ぎ去る時を慈しむような“Aigato Arigato”の、繊細な揺らぎ具合もまさに至高。