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壮大な世界観

 ただ、ツアーやレコーディングなどの多忙ぶりに消耗したテダーはメンタルの不調を告白。それを機にバンドは目まぐるしいサイクルを見直すことになり、以降の活動ペースは自分たちを追い込まない緩やかなものへと移行していく。5枚目のアルバムは2018年のリリースを予定されるも、先行シングルにあたる切実な“Rescue Me”と“Wanted”が実際に出たのは2019年。制作の遅れにパンデミックも重なってさらに延期したアルバムは2021年にようやく完成を見た。その『Human』はプロダクションにおけるエレクトロニックの比重をさらに強め、チャート的には後退したもののトロピカルなハウス調の“Run”や雄大な“Someday”、抒情的でパッションに溢れた“Didn’t I”などワンリパ節の安定感を示す濃密な好曲が揃っているのは間違いない。同作リリース後にはアニメ映画「Clifford The Big Red Dog」の主題歌として軽やかな“Sunshine”も世に出された。

 それらを踏まえて心機一転の年になったのが、先述の口笛ポップ“I Ain’t Worried”で復権を果たした2022年だ。その成功に先駆けた配信シングル“West Coast”は、カリフォルニアに捧げたハーモニー・ポップ的な壮麗さも含めて、次なる6作目の作風を多少なりとも予見させるものかもしれない。いずれにせよ、まずはこのたびの『OneRepublic (Japan Paradise Tour Edition)』で彼らの壮大な世界観をおさらいしておくのがいいだろう。そして、今回の来日公演は早くもソールドアウトしているだけに、今後また違う形でパフォーマンスが観られる機会にも期待したいものだ。

ワンリパブリックのアルバム。
左から、2007年作『Dreaming Out Loud』、2009年作『Waking Up』、2013年作『Native』、2016年作『Oh My My』、2021年作『Human』(すべてMosley Music/Interscope)