〈冬のジャマイカ音楽〉がマイスサウンドな“Snowman Footprint”
――そして、3月14日にリリースされる第3弾配信シングルが“Snowman Footprint”です。金澤さんが作曲を手掛けた、ウォーキングテンポの、心が温まるようなナンバーです。
森寺「僕らの初期の曲である“ネモ”(2003年)に引き続き、冬のイメージとジャマイカンミュージックが結びついた一曲ですね。
実はこういうのって、割と珍しいんじゃないかと、マイスサウンドの一つとして定着してほしいなって考えてます」
――たしかにこの曲を聴いたとき、ホーンの和声や響き、テンポ感が、まさにTHE MICETEETHにしか描けない色調だなって思って、グッときました。
森寺「個人的には、シンプルなスカの楽曲の録音がとくにリモートでは難しく感じて。できるだけ、スタジオでみんなでセッションしてるイメージを作って、ライブのようなテンションで録音したんです。
リモートなので、ホーン隊の録音が上がってきて〈みんな楽しそうに吹いてるな~〉って思って、一気にテンションが上がりました。管楽器がこんなに伸び伸び吹ける曲も珍しいと思うので、特に管楽器をやってる方にはぜひ聴いてほしいです」
THE SKA FLAMESの伊勢浩和が作曲した“Dance on the Road”
――そして、4月22日にリリースされるのが、第4弾配信シングル“Dance on the Road”。こちらは7インチでもカットされるそうですね。この曲は、THE SKA FLAMESのボーカリスト、伊勢浩和さんが作曲したナンバーで、さらに録音されたのも19年前だという。
金澤「そうなんです。19年前に、当時のメンバーで録音したんですが、諸事情によってお蔵入りになっていたんです。
それが、2022年10月ぐらいに、THE SKA FLAMESの伊勢さんから連絡をいただいて、大阪でライブをやるからとご招待いただいて、久々にお会いしたんです。
さらにタイミングがいいことに、その翌週、僕が家族と奄美大島へ旅行することになってたんですが、滞在期間中に伊勢さんも、ご自身の故郷である奄美大島でライブをやることになっていて。なので、奄美大島でも合流して、じっくり酒を飲みながらお話しする機会ができたんです」
――いろいろタイミングが重なりましたね(笑)。
金澤「その時に、19年前に諸事情でお蔵入りになった、あの曲なんですけど……って訊いたら、伊勢さんも覚えてくれていて。いつか出したいと思っているんです、と相談したら、〈いいよ!〉ってOKしてもらえたんです。そこから正式に話を進めていって」

若くてキラキラした19年前の録音
――音源を聴かせてもらいましたが、陽気なオーセンティックスカで、THE SKA FLAMESとの共通性も感じさせる曲ですよね。やっぱりTHE MICETEETHのメンバーから生まれる曲とは、どことなく雰囲気が違う、その面白さもあって。これだけいい曲が、19年間埋もれてしまっていたのはもったいないと思うけど、時間を経て世に出たのは喜ばしいことですよね。そもそも、伊勢さんがこの曲をTHE MICETEETHに提供することになったいきさつは?
森寺「伊勢さんが〈曲が出来たんだけど、なぜかTHE MICETEETHが演ってるイメージしか浮かばない〉って仰ってくれて、それで録音させてもらうことになったんですよね。伊勢さんからそう言われて、本当に嬉しかったことを覚えてます」
次松「当時、大阪の四天王寺ってところに、賃貸物件でTHE MICETEETHがスタジオを借りてたんです。そこに伊勢さんが来て、曲を口頭で伝えてくれて」
――デモ音源があるとかではなく、メロディを口伝えしたってことですか?
藤井「そうですそうです。そのメロディに対して、コード進行はこれか、みたいに打ち合わせをしましたね」
――それまでに、THE MICETEETHでそういった作り方をした曲はありましたか?
次松「なかったですね。だから、めっちゃ新鮮やったもん。あ、こうやって作っていくんだ!って」
金澤「伊勢さんが、口頭で曲を伝えに来てくれたとき、僕自身は時間をミスってスタジオに到着できてなくて。で、ついた時にはデモがだいぶ出来上がってたんです。ホーンの和声とかアレンジも出来上がってて。それ聴いて、めっちゃエエ曲やなって思って。うわー勝った!みたいな感じでしたもん(笑)」
次松「ちなみに、イントロに、アタマ拍でカウベルが鳴ってるんですけど、あれを伊勢さんが叩いていて。それが、妙に上手かったんですよね。なんていうか、拍の説得力がすごかったんです。なんか目が覚めるような感じで、スゴっ!と思って(笑)。なんやろ、リズム感かな」
金澤「後日談ですけど、伊勢さんってボーカルやし、楽器とか演奏しないから、作曲やアレンジも感覚でやってはるんやって思ってたんです。でも、つい最近、伊勢さんと話している時、これ最近作ったデモなんだけどって、携帯のアプリでつくったデモ音源を聴かせてくれて。それは簡単なデモだったけど、ベースライン、裏打ち、ドラム、メロディが入ってて、頭の中で全部鳴ってるんやってわかって。
だから、19年前に“Dance on the Road”を、僕らと一緒にスタジオで作ってくれていた時にも、伊勢さんの頭の中で全部鳴ってたはずなんですよね」
――それを、当時のTHE MICETEETHのメンバーたちと話しながら、具現化していったと。19年前の音には、やっぱり初々しさというか、瑞々しさが出てますよね。
次松「僕も聴いて、そう思いました(笑)」
金澤「最初、手元に当時の音源がなくて、学がレコーディング音源を持ってて。それを送ってもらって聴いたら、めっちゃキラキラしていて。これなら出せる!と思って」
藤井「僕は最初聴いて、〈いやあ、純粋に若いな〉って思って。なんか元気ですよね(笑)。
こんなんやってたんやって驚きもあったり。もちろん聴いたら、当時のこともおぼろげに思い出すんですけど、それでもやっぱり新鮮でしたし、ちょっと感傷的にもなったり」
金澤「演奏はたしかに粗いんですけど、逆に代え難い魅力もあって。その時にあって、今失われてしまったもの。あるいは、今はあるけど、その時は持ってなかったもの。そのどちらも感じられて。やっぱり、昔の音源はちょっとセンチメンタルな気持ちにはなっちゃうんですよね」
森寺「僕は、19年の間自分としてはさまざまなギターのプレイやスタイルを模索してきたつもりだったんですけど、久々に聴き返してあまりにも自分のプレイに変化が感じられなかったのでびっくりしましたね。同時に諦めというか、〈これが俺なのかな〉と妙に納得する部分がありましたね。
やっぱり、リテイク無しで、19年前の音源をそのままリリースできることは、とても嬉しく思ってます」
――19年前に、みんなで一つのところに集まってつくった音源が当時のままに出る。その一方で、11月から配信が続いている、今現在のTHE MICETEETHのメンバーが、リモート環境も駆使しながら作った音源と並べてリリースされるわけで。このタイミングで、過去と未来が交差する感じは、なんだか不思議な感覚もありますね。連続して配信音源がリリースされてますが、この先にはアルバムも見越している?
金澤「もちろんです。このリリース形態を10曲続けるってことを目標にしています。10曲貯まったら、まとまったパッケージにしたいという考えはあって。ライブも、いろんなところから呼ばれれば出ますけど、10曲達成するまでは、録音に集中していきたいです。なので、みなさんも楽しみにしていてほしいです!」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2023年4月22日(土)
品番:MT-009
フォーマット:ドーナツホール7インチEP/45 r.p.m.
価格:2,200円(税込)
初回生産限定盤/2023年カッティング盤
TRACKLIST
SIDE A
Dance on the Road (Instrumental)
作曲:伊勢浩和
SIDE B
322 Flames (from STUDIO TENTO ver.) (Instrumental)
作曲:金澤義
Produced by THE MICETEETH
金澤義(Drums, Conga)
次松大助(Flexatone, Guiro)
藤井学(Piano)
森寺啓介(Guitar)
吉田明生(Guitar)
和田拓(Bass)
田淵公人(Tenor Saxophone)
村岡健志(Trumpet)
佐々木一右衛(Trumpet, Claves)
樋口嘉一(Trombone)
リリース日:2023年3月14日(火)21:00
配信リンク:https://linkcloud.mu/a44130b0
TRACKLIST
1. Snowman Footprint
PROFILE: THE MICETEETH
99年、大阪で結成。日本語詞による歌ものを中心としたオリジナルスカバンド。結成当初より一貫してライブ、音源制作を自主的に行っている。2002年にデビュー。以降フルアルバム7作、ミニアルバム4作、シングル6作、DVD 2作をリリース。加えて、数々のコンピレーションアルバムに参加。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉〈SUMMER SONIC〉〈COUNTDOWN JAPAN〉のほか、多数のフェスへの出演を果たしている。2014年、活動再開を機に自主レーベル〈MASTER THRONE〉を設立。以降、『GREETING CD』(完売のため現在入手不可)、『COSMOS EP』を発売。また数々のTV CMの音楽を担当。スカというジャンルの壁を越え、音楽好きからの評価は高く、日本国内だけでなく海外からも賞賛の声を多数受けている。現在は普段のライブとは一味違った自主企画イベント〈THRONE NIGHT〉を開催するなど、とてもマイペースに活動している。2022年11月、サブスクやYouTubeで公開予定の新曲を大量に制作。2022年11月26日、第1弾配信シングル“屋根の上のピーナ”をリリース。2022年12月11日、第2弾配信シングル“KILLER KHAN”をリリース。2023年3月14日、第3弾配信シングル“Snowman Footprint”をリリース。2023年4月22日、“Dance on the Road”と“322 Flames (from STUDIO TENTO ver.)”を収録した7インチアナログレコードをリリース。同時に第4弾配信シングルとして“Dance on the Road”を解禁。2023年、さらなる活発なリリースを予定している。