Photo by Timothy Saccenti

2023年、メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドとラーズ・ウルリッヒは60歳、カーク・ハメットは61歳、ロバート・トゥルヒーヨは59歳を迎える。4人には白髪やその歴史を刻むしわも目立ってきているが、枯れるどころかまだまだ血気盛んな姿を見せてくれている。そんな常に第一線を走り続けるメタリカから、11枚目となるオリジナルアルバム『72 Seasons』※が到着した。そこで、Mikiki編集部は、83年作『Kill ’Em All』から2016年作『Hardwired... To Self-Destruct』までのオリジナルアルバム10タイトルと『72 Seasons』のレビューでメタリカの40年間のキャリアを振り返る。 *Mikiki編集部

※『Garage Inc.』(98年)はカバーアルバムのため、枚数換算から除外した


 

HR/HMシーンとメタリカの立ち位置からオリジナルアルバムを振り返る

80年代、HR/HMはNWOBHM(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の盛り上がりの影響で、世界中で数多くのバンドが生まれ、ジャンルが細分化していった。またMTVの流行もあり新しいHR/HMバンドたちが数多くのヒットを飛ばし、HR/HMシーンは隆盛を迎える。しかし、その勢いは90年代、オルタナの隆盛によって影をひそめるが、ディケイドの後半からはコーンやリンプ・ビズキット、リンキン・パーク、スリップノットなどラウド/ミクスチャーロックやモダンロック勢が音楽シーンに躍り出て、それらの要素も取り込みながらHR/HMは現在まで続いている。

その中でメタリカは、スラッシュメタル勃興期での名盤を誕生させた後、スラッシュメタルからヘヴィロックへの転換、ネットでの配信やファイル共有に対する訴訟などでファンの歓喜とヘイトを浴びながらも常に時代の一歩先を進んでいた。またメンバー内では、バス事故によるクリフ・バートンの死去、ジェイソン・ニューステッドの加入そして脱退、ジェイムズ・ヘットフィールドのアルコール問題等々、挙げたらきりがないほど、内紛や苦悩を抱えながら前進してきた。

そんなメタリカのキャリアを10枚のオリジナルアルバムで辿ってみる。 *Mikiki編集部


 

『Kill ’Em All』(83年)

METALLICA 『Kill ’Em All』 Megaforce/ユニバーサル(1983)

83年リリースの記念すべきデビューアルバム。スラッシュメタルとしての完成度は2作目、3作目に譲るが、この時点ですでに唯一無二のメタリカサウンドの基盤は確立している。それは本作収録曲が40年の時を経ても未だにライブでプレイされているという事実からも明らかであろう。自身のルーツであるNWOBHMの影響を色濃く投影した作品で、現在の貫禄ある野太いボーカルとは異なるジェイムズ・ヘットフィールドの若々しいシャウトが堪らない。

本作リリース前に解雇され、後にメガデスを結成するデイヴ・ムステインが4曲で作曲に関わっている。彼が敬愛するダイアモンド・ヘッドを彷彿させる、いかにもNWOBHM風の“Hit The Lights”、中毒性の高いリフがザクザクと刻まれる“The Four Horsemen”、文字通り鞭を打つようなスピード感溢れる“Whiplash”など、とにかく速く勢いのある楽曲が並ぶが、クリフ・バートンによるベースインストの真骨頂“(Anesthesia) Pulling Teeth”や、〈ブラック・アルバム〉路線の原点とも言えるヘヴィチューン“Seek & Destroy”など、単なるNWOBHMフォロワーや若手スラッシュバンドの枠には収まりきらない音楽性を発揮している。 *粟野

 

『Ride The Lightning』(84年)

METALLICA 『Ride The Lightning』 Megaforce/ユニバーサル(1984)

このアルバムについて端的に言えば、1曲目”Fight Fire With Fire”につきる。クリーントーンのギターを重ねた叙情的なイントロ、アグレッシブさ、曲の速さ、曲展開、そしてギターリフと、〈スラッシュメタルとは何なのか〉の全てが凝縮された1曲となっているからだ。

他にも、ギターのリフレインから始まり、イントロからスピードが最高潮になる”Trapped Under Ice”、現在においてもライブのセットリストに入ってくる機会が多いメタリカの代表曲で、イントロ~ギターソロ~エンディングと曲中でスピードの緩急をつけた”Creeping Death”など、スラッシュメタルの佳曲が多く収録されている。

また、ファーストアルバムリリース前に解雇となったデイヴ・ムステインのクレジットが今作でも”Ride The Lightning”と”The Call Of Ktulu”で残っている。”The Call Of Ktulu”はインストであるが、ボーカルがない分、デイヴ・ムステインの影響もありメガデスで用いられるような転調の要素が色濃く感じることができる。ちなみに、デイヴ・ムステイン自身もメタリカ在籍時の自身作曲のフェイバリットソングで”The Call Of Ktulu”を挙げている。

ジェイムズ・ヘットフィールド、ラーズ・ウルリッヒという2人のメインソングライターによるファーストアルバムから受け継いだ衝動性に加え、今作から作曲に加わったクリフ・バートン、カーク・ハメットによる叙情的サウンドが織り交ぜた〈メタリカ=スラッシュメタル〉を決定づけたアルバムである。 *Mikiki編集部

 

『Master Of Puppets』(86年)

METALLICA 『Master Of Puppets』 Elektra/ユニバーサル(1986)

その昔、タワーレコード新宿店のマノウォーのコメントカードに〈天上天下唯我独尊 神はマノウォーの上にメタルを造らず〉という名キャッチがあった。この『Master Of Puppets』もまさに、〈天上天下唯我独尊 神は『Master Of Puppets』の上にメタルを造らず〉といえる歴史的大名盤だ。

メタル好きのバンドマンならば一度はコピーにチャレンジしたことがある曲が多く収録されているはず。Rolling Stoneによる〈歴代最高のメタルアルバム100選〉で第2位に選出されていることからもスラッシュメタルだけではなく、全てのメタルカテゴリーの中で渾然と輝く傑作だ。

”Battery”や“Master Of Puppets”、“Disposable Heroes”、“Damage, Inc.”における曲の速さ、複雑なリフに転調、曲のスピードにのったギターソロは、〈スラッシュメタルの1つの到達点〉と言っても過言ではない。また“Welcome Home (Sanitarium)”でのスローなスタートからギターソロに向けて速くなっていく展開など曲構成のバリエーションも豊富。メンバー4人での様々な試行錯誤を経て制作された本作は全8曲を通して聴いても非常に高い完成度を誇っている。失礼な言い方をすれば〈アルバムとしての完成度が高すぎること〉が逆に唯一のマイナス点と言えるほど隙のないアルバムだ。

メタリカ自身の他作品や他アーティストの作品と比べられない唯一無二の大傑作メタルアルバムと言える。 *Mikiki編集部

 

『...And Justice For All』(88年)

METALLICA 『...And Justice For All』 Elektra/ユニバーサル(1988)

「タモリ倶楽部」の空耳アワーでタモリに〈メタリカ〉というバンド名を覚えさせた大名作〈バケツリレー 水よこせ〉でおなじみの”Blackened”が収録されたアルバムだ(他にもメタリカは空耳アワーで『Metallica』収録曲“Through The Never”の〈寿司・鶏・風呂・寝ろ〉など多くの名作を残している)。

ツアー中のバス事故でベースのクリフ・バートンが逝去し、新たにジェイソン・ニューステッドの加入初となる本作。しかし、加入直後より他メンバーから除け者にされてしまっていたことが後々明るみになるが、クリフの死によってメンバー間で連帯ができていなかった当時のバンドの状況が如実に表れたアルバムだ。

サウンドプロダクションにおいて、ベース音が小さく、非常に悪いバランスとなってしまっている点やクリフの死と向き合いながら制作されているため、前作『Master Of Puppets』での練りに練られた展開には及ばないが、ジェイムズ・ヘットフィールド、ラーズ・ウルリッヒのリフや作曲センスはより複雑にヘヴィに進化、成長や進歩を感じ取れるフレーズも多く、アルバムとしての評価は賛否両論となっている。また、小説「ジョニーは戦場へ行った」からインスパイアされた”One”では初のミュージックビデオを制作とこれまでのメタリカにない新しい試みも行われ、バンドとして新たな道を進みだしたアルバムでもある。 *Mikiki編集部

 

『Metallica』(91年)

METALLICA 『Metallica』 Elektra/ユニバーサル(1991)

ニルヴァーナ『Nevermind』、ガンズ・アンド・ローゼズ『Use Your Illusion』と並び、時代の転換点である91年を代表する一枚。自身のバンド名を冠した通称〈ブラック・アルバム〉と呼ばれるこの作品は、彼らのキャリアにおける重要作であるだけでなく、後のロックシーンにも絶大な影響を与えた歴史的名盤だ。

鈍器を振り下ろすかのような強力なリズムが身体を震わせる“Enter Sandman”、うねるようなギターリフの“Sad Bad True”、重厚なバラード“The Unforgiven”……スピード命だった初期のスラッシュメタルスタイルから重さとグルーヴに比重を置いたサウンドへとシフトし、その後のメタリカサウンドの基本軸ともいえるヘヴィネスを本作で確立した。

ジェイムズ・ヘットフィールドの表現力を増したボーカルによってキャッチーさを増したこともあり、従来のメタルファンのみならず多くの人々を飲み込んだこのアルバムは、全世界でトータル1,500万枚以上を売り上げるモンスターアルバムとなった。そして本作の大ヒットにより、後のメタル/ヘヴィロックシーンは大きく変わっていくこととなる。このアルバムが無かったら、コーンをはじめとしたラウドロックの隆盛や、ニッケルバックらモダンロック勢の台頭は無かったと言っても過言ではないだろう。 *粟野

 

『Load』(96年)

METALLICA 『Load』 Elektra(1996)

前作『Metallica』でのセールス的な成功でメタルシーンの頂点に君臨したメタリカ。次なる一手への期待値が跳ね上がったなか発表されたのが『Load』 だ。

スラッシュメタル系譜のファストチューンはない。複雑なリフ構成や曲展開もない。シンプルでソリッド。そして、メンバー全員が髪を切った。むさくるしい長髪からグリースが似合う短髪へ。強い日差しが降り注ぐ中、砂漠に走る一本道を爽快に走るピックアップトラックでかける音楽にぴったりな“Ain’t My Bitch”や“2 X 4”など極太なヘヴィロックを屋台骨に、グルーヴを重視し、オルタナやブルース・カントリー的な要素を結び付けたことが特徴的だ。

前作で打ち出した方向性で更にヘヴィネスを強くした方向にシフトし、メタリカがスラッシュメタルに決別を宣言したアルバムと言える。それはドラムのラーズ・ウルリッヒが早いリズムを叩けなくなったというまことしやかな噂がささやかれるほどで、メタリカのパブリックイメージが180度変わった作品だった。当然、オールドファンからは拒絶されてしまったが、日本でも”Until It Sleeps”がトヨタ〈RAV4〉のCMに起用と世界で多くのポピュラリティを獲得した作品でもある。

余談であるが、発売時の国内盤特典は洋楽では珍しく凝ったもので〈メタリカ学習帳〉であった。ジャポニカ学習帳と同じ体裁の凝った特典で、メタリカ年表や”Until It Sleeps”の縦笛楽譜などがついたノートであった。 *Mikiki編集部

 

『Reload』(97年)

METALLICA 『Reload』 Elektra/ユニバーサル(1997)

大ヒット作『Metallica』の後、一発目のオリジナル作『Load』の続編ともいうべき本作。グルーヴを重視し、当時流行していたオルタナ勢への接近も見せていた前作のように、ここでもメタルという要素は鳴りを潜めた重厚な作品作りを実行している。

注目はなんといっても、1曲目の“Fuel”だろう。各々のパートが最高到達点で鳴り響き、暴走気味に疾走していくヘヴィなロックチューンに仕上がっている。また、メガデスやパンテラなど数多くのHR/HMバンドを手掛けてきた巨匠、ウェイン・アイシャムがミュージックビデオを監督した。「ワイルド・スピード」シリーズよりも早くカーレースに目をつけ、レースをメンバーの顔のドアップ(いずれもいい顔)と交互に見せていくスピード感満載の映像からは、ど真ん中の〈カッコよさ〉しか感じられない。

ほかにも、60年代から波瀾万丈な人生を送ってきた歌手で女優のマリアンヌ・フェイスフルによる年季の入ったコーラスが入る“The Memory Remains”や、『Metallica』に収められていた“The Unforgiven”の続編で、感情を揺さぶるドラマティックなメロディーが印象的な“The Unforgiven II”などを収録。

メタリカにとっては、チャレンジを続ける難しい時代のアルバムということで曲の出来にもバラつきがあり、発売当時は賛否両論の声もあったが、改めて今の耳で振り返ってみると聴き応えのある良曲が揃っていることに気づかされる。 *Mikiki編集部

 

『St. Anger』(2003年)

METALLICA 『St. Anger』 Elektra/ユニバーサル(2003)

ジェイソン・ニューステッドの脱退、バンド内の不仲、ジェイムズ・ヘットフィールドの入院(アルコール依存症のリハビリのため)など、トラブルや不幸が一気に襲い掛かっていた当時のメタリカ。バンドの解散すらチラつく危機的状況下、彼らが作り上げたのは〈怒り〉が全編にわたって炸裂する異端な作品だった。

本作に感じる〈怒り〉の矛先は、自身の心に潜む悪魔やバンドを追い込んでいった運命や世界。なかでも、ジェイムズの〈怒り〉は強烈で、どの曲においても〈激怒〉としか言い表せない感情でボーカルを披露、〈なぜこんなことになってしまったんだ〉とばかりに、過去に自分が行なった選択に後悔と怒りをぶつけていく。ラスト曲“All Within My Hands”の終盤、呪いにも近い鬼気迫る声で〈Kill〉を連発していくジェイムズの本気度に震えろ。

また、表題曲のミュージックビデオは、本物の刑務所を舞台に実際の囚人たちを前にパフォーマンスを行なうというもので、限りなく近い心情を持つ者同士が楽曲に鼓舞されていく映像は、野次馬的な立場からでは絶対に描き出せない真の迫力に満ち溢れている。

しかし、〈失敗作〉〈黒歴史〉など本作に与えられた数々の批判は、発表から20年という月日が経っても鳴りやむことはない。曲が長い、ギターソロがない、ドラムの音が変といったことが主な要因となっているが、果たして再評価のときはやって来るのか。サウンド的には人を選ぶ作品であることに違いないが、聴く人間の〈怒り〉の捉え方によっては生涯の一枚にもなり得る、本物の〈ヤバさ〉を内包したカルトな名盤と断言しよう。 *Mikiki編集部

 

『Death Magnetic』(2008年)

METALLICA 『Death Magnetic』 Warner Bros./ユニバーサル(2008)

ロバート・トゥルヒーヨ加入後初のアルバム、プロデュースは御大リック・ルービン、そしてかつてのスラッシュメタルの名盤『Master Of Puppets』を意識して制作された……ということでリリース前から話題を呼んだ作品。

ほとんどの曲が長尺の大作であり、前作ではほとんど聴けなかったカーク・ハメットのギターソロが復活していることから、『Master Of Puppets』を引き合いに出されるのも納得ではあるが、彼らが単に過去の焼き直しなどするはずも無い。ラフな感触のサウンドはどちらかというと90年代の『Load』や『Reload』に近いものがあり、そして冒頭から破壊力抜群のファストチューンが並んでいるが、それらの楽曲構成は『Master Of Puppets』のように完璧に構築されたものというより、90~2000年代を経て巨大化したバンドの無尽蔵なエネルギーが暴発した結果の産物と言える。

不穏なイントロから空気を切り裂くリフが炸裂する“That Was Just Your Life”、バウンシーな序盤からスラッシュへの展開が見事な“The End of the Line”、名曲“One”を彷彿させるドラマティックな“The Day That Never Comes”、9分を越えるインスト・ナンバー“Suicide & Redemption”など、ズッシリと聴き応えのある楽曲が並ぶ。彼らは過去と同じ作品は二度と作らない、そして常に時代の先端を行く傑作を生み落とし続ける……という2つの事実を再確認させられた傑作。 *粟野

 

『Hardwired... To Self-Destruct』(2016年)

METALLICA 『Hardwired... To Self-Destruct』 Blackened/ユニバーサル(2016)

前作『Death Magnetic』から8年。メンバーも全員50代に。音楽シーンがどんなに変わろうともメタリカはメタリカであった。前作からのゴリゴリとしたサウンドとザクザクとしたリフはそのまま、原点回帰とはまた違う、メタリカが今できる自然体のままで体現されたアルバムが今作だろう。

1曲目からスピード全開の”Hardwired”から始まり、『Load』『Reload』のモダンヘヴィネス路線を感じさせる” Dream No More“など旧作のにおいを感じるものもあれば、表現力に広がりを見せるジェイムズ・ヘットフィールドの歌やブラック・サバスやダイアモンド・ヘッドのようなリズム刻み方も垣間見せ、新しさを感じさせるところもある。また、モーターヘッドのレミー・キルミスターを追悼した”Murder One”は、スローでヘヴィな展開に〈Ace〉、〈Fist〉などモーターヘッドの曲名の一部を歌詞に引用しており、メタリカ流のレクイエムとなっている。そして、最後が”Spit Out The Bone”。スピード、リフとともに曲のテンションも非常に高い。1曲目と同じテンションの曲をラストにもってくるこの配置は、『Master Of Puppets』における”Damage, Inc.”と同じ配置で、このアルバムへの絶対的な自信を感じさせる。

これまでの作品でもそうであったが、彼らは今作でも常に1つの場所にとどまらない姿勢を見せつけてくれている。それこそがメタリカのメタリカたるゆえんなのかもしれない。そんなことを改めて感じさせてくれる作品だ。 *Mikiki編集部

 

『72 Seasons』(2023年)

METALLICA 『72 Seasons』 Blackened/ユニバーサル(2023)

前作『Hardwired... To Self-Destruct』から約7年。ミックスには『Death Magnetic』以降のゴリゴリ感は多少感じるが、ギターやスネアの音とトーンが初期・中期に近いサウンドの印象を受ける。古くからのファンは受け入れやすい音像と言えるかもしれない。

ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズの”Misirlou”を思わせるギターリフから始まる、メタリカの代名詞と言えるファストチューン”72 Seasons”で幕を開ける本作。収録曲は、初期スラッシュを彷彿とさせる高速チューンもあれば、『Metallica』、『Load』、『Reload』期のグルーヴ感たっぷりのヘヴィロックナンバーやヘヴィネスが渦巻く低速チューンもありと、これまでのオリジナルアルバムを総ざらいしたような曲が並び、アルバム全体を通してだれることなく聴けるバランスの良い内容となっている。

そして、どの曲のどこを切り取っても〈やはりメタリカだ〉と言える高いクオリティだ。ギターリフに加え、今作がここまで〈メタリカ印〉を感じるのは、カーク・ハメットのソロでの速弾きやワウギターの功績が非常に大きい。一聴でメタリカだとわかる楽曲のピースにはまったギターソロワークはやはりカーク・ハメットだからこそのなせる業といえる。

疾走感あふれるヘヴィロックナンバー”Screaming Suicide”のグルーヴ感は”Fuel”(『Reload』収録)、”Sleepwalk My Life Away”は”Enter Sandman”(『Metallica』収録)との共通点を感じさせる。特に”Sleepwalk My Life Away”は、クリーントーンのギターイントロは野太いベースに置き換えられているが、スネアのリズムやディストーションリフの進行はまさに”Enter Sandman”だ。”You Must Burn!”からは、イントロでのスネアの叩き方と曲の入りでのテンポが印象的な ”Sad But True”(『Metallica』収録)のようなイメージが沸く。”Too Far Gone?”はイントロや歌の入り、ギターリフは”No Remorse”(『Kill ’Em All』収録)の要素を感じさせ、”Room Of Mirrors”は、スピードはそこまで速くないが”Disposable Heroes”(『Master Of Puppets』収録)を想起させるようなリフが際立っている。

また、シングルカットされた”Lux Æterna”は、過去作との共通点ではないが、バックボーンであるNWOBHMをそのまま体現した、メタリカ流のオールドスクールなNWOBHMだ。カーク・ハメットの速弾きソロがうなるのを聴くと、『Master Of Puppets』でのソロのような高揚感を得られて、とてもうれしい気持ちになる。

近年のメタリカ作品は練りに練られた曲構成で聴かせるというよりは、自然体かつ今できる表現で構築した作風がメインと言えるが、今作はこれまでの経験を存分に活かし、ファンの聴きたいツボをしっかり押さえている。さすがは百戦錬磨のメタリカだけある。ただファンとしてはやはり『Master Of Puppets』という大金字塔との比較してしまいがちだが、今作は5~7分の曲が多くを占める中、アルバム全体を通して後半までだれることなく、近年のメタリカ作品にはない聴きやすく、なじみやすいアルバムであり、酸いも甘いも知り尽くしたベテランらしい素晴らしい内容ではないだろうか。

音楽の視聴環境が変わった昨今、かつてのようなシーン全体を一気に塗り替える若手がHR/HMシーンで台頭しづらくなっているのは事実だ。特にHR/HMシーンでは70年代、80年代から活躍し、音楽シーンを覆してきたバンドたちが今もなお精力的に活動している。ベテランと呼ばれるバンドが多い代わりに、懐古的だったり保守的だったりするアクトも少なくない。そんな中、この『72 Seasons』は今もHR/HMシーンの代表がメタリカであることを象徴する作品だと言っても過言ではない。 *Mikiki編集部

 


RELEASE INFORMATION

METALLICA 『72 Seasons』 Blackened/ユニバーサル(2023)

リリース日:2023年4月14日
品番: UICY-16145
価格:2,860円(税込)
日本盤のみSHM-CD仕様/初回生産限定ロゴステッカー封入

TRACKLIST
1. 72 Seasons
2. Shadows Follow
3. Screaming Suicide
4. Sleepwalk My Life Away
5. You Must Burn!
6. Lux Æterna
7. Crown Of Barbed Wire
8. Chasing Light
9. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

3ヶ月限定スペシャル・プライス スタジオ・アルバム&ライヴ・アルバム15タイトル
リリース日:2023年4月14日
価格
1CD:1,650円(税込)
2CD:2,640円(税込)*

『キル・エム・オール(リマスター)』(UICY-80300)
『ライド・ザ・ライトニング(リマスター)』(UICY-80301)
『メタル・マスター(リマスター)』(UICY-80302)
『メタル・ジャスティス(リマスター)』(UICY-80303)
『メタリカ(リマスター)』(UICY-80304)
『LOAD』(UICY-80305)
『RELOAD』(UICY-80306)
『ガレージ・インク』(UICY-80307/8)*
『セイント・アンガー』(UICY-80309)
『デス・マグネティック』(UICY-80310)
『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』(UICY-80311/2)*
『S&M~シンフォニー&メタリカ』(UICY-80314/5)*
『スルー・ザ・ネヴァー』(UICY-80316/7)*
『S&M2』(UICY-80318/9)*
『LULU』(UICY-80320/1)*

 

INFORMATION
メタリカ『72 Seasons』発売記念キャンペーン実施中

2023年4月14日(金)~2023年4月30日(日) ※実施期間は店舗により前後する可能性がございますので、あらかじめご了承ください

■実施店舗
パネル展・AR体験・抽選特典実施店舗:タワーレコード新宿店(特設パネル設置)/渋谷店6F/名古屋近鉄パッセ店/梅田NU茶屋町店/神戸店/広島店
AR体験・抽選特典実施店舗:タワーレコード札幌パルコ店/仙台パルコ店/横浜ビブレ店/福岡パルコ店

対象商品:メタリカ『72 Seasons』(UICY-16145)
店舗限定ご購入抽選特典:メタリカ 『72 Seasons』オリジナル マスキングテープ(非売品)(各店若干名様) ※上記記載の実施10店舗にて抽選を実施いたします
抽選対象期間:2023年4月14日(金)~2023年4月30日(日) 
当選発表:2023年5月10日(水)各店舗のTwitterアカウントまたはオフィシャルサイトにて ※当選発表は各店舗によって異なります。詳細はご購入先の店舗でご確認ください

タワーレコード新宿店では〈大型パネル展〉の実施、さらに独自特典も決定!
『72 Seasons』の発売記念に伴い、タワーレコード新宿店の催事スペースにて特設パネル展を実施いたします。また、メンバーの過去のサインなど、特設展示物も展示いたします。さらに新宿店では、ご購入抽選特典として〈メタリカ 『72 Seasons』オリジナル マスキングテープ(非売品)〉、もしくは〈メタリカ 『72 Seasons』オリジナル ピック(非売品)〉が当たるチャンスも!! このチャンスをお見逃しなく!

※タワーレコードオリジナル特典〈A5クリアファイル〉も先着でプレゼントいたします(タワーレコード オンラインを含む/一部店舗を除く)
※展示スペースが混雑した場合は譲り合ってご覧ください。スペースの都合による入場制限を行う可能性がございますので、あらかじめご了承ください