昨年リリースしたファースト・フル・アルバム『インナージャーニー』が高い評価を得た4ピース・バンド、インナージャーニー。ヴォーカリスト/ギタリストのカモシタサラはソロ活動も積極的に行い、ギタリストの本多秀はfhánaのサポート、ベーシストのとものしんも未菜らさまざまな音楽家のサポート、ドラマーのKaitoは櫻井海音として俳優業でも活躍中……とメンバー個々の活動も多忙ななか、ニューEP『いい気分さ』がリリースされた。

 「昨年にアルバムをリリースして、初めてのツアーを行ったあと、メンバー個人の活動も増えて、会う回数は減ったんですけど、そのぶんみんながいろんな場所で得たものをバンドに持ち帰って作った作品になりました」(カモシタサラ)。

 「今回初めてベーシックを4人同時に録って。僕はセッションが苦手で、1人で音をコネコネするほうが好きなんですけど、曲作りの選択肢も増えたと思いますし、そのぶん、完成度はグンと上がりましたね。インナージャーニーはこれまで〈落ちサビ〉のある曲が多かったんですが、実は今回の作品には1曲もないんです。そういう面でも、バンドとして成長できたのかなって思います」(本多秀)。

インナージャーニー 『いい気分さ』 鶴見river(2023)

 収録された5曲は、彼ららしい爽快感や素朴さを残しつつ、新たな挑戦や変化も詰まっている。

 「昨年アルバムを出したし、次もアルバムというより、一度EPを挟みたかったんです。アルバムで曲のストックを出し尽くしたというのもありますけど(笑)。3曲目の“手の鳴る方へ”だけは2019年からある曲で、今回待望のリリースですね。この曲は“グッバイ来世でまた会おう”(2021年のEP『風の匂い』に収録)が出来た直後に作ったんですけど、この“手の鳴る方へ”では〈来世はない〉と歌っていて。以前歌ったことと真逆のことを考えてしまう自分もいるんですよね。考えに一貫性がないように思われるかもしれないですけど、変わっていくのが人間ですから」(カモシタ)。

 「“ステップ”は自分がバンドで初めて作った曲。サラっぽくない、でもインナージャーニーっぽさのある曲が欲しいなと思って作り、サラに〈これに歌詞をつけてくれない?〉って頼みました。爽やかというか、スッと吹く風みたいな曲がインナージャーニーっぽいかなと思っているんです」(本多)。

 「“ラストソング”は寝る直前に思い付いたメロディーと歌詞から出来た曲です。SNSに〈誰しも何かしらの才能があるし、それを見つけられればいい〉みたいなことを書いてる人がいたんですけど、私は〈何もない人だっているかもしれないし、なんで何か才能がなきゃダメなんだ?〉って思った。〈ただそこにいるだけでいいと思うんだよね〉っていう気持ちを曲にぶつけました。もちろん才能ある人はいると思うけど、あればいいってわけでもないし。私は才能を信じてないのかもしれないですね。それと、だんだんライヴができる世の中になってきて、お客さんの心をガッと掻き立てられるような曲が欲しいな、ライヴで最後に歌って〈よかった〉と思ってもらえる曲を作りたいなと考えた。その結果、スピード感のある曲になりました」(カモシタ)。

 さて、そんなワンクッションを挟んだバンドの今後は?

 「私は福岡と北海道に好きなバンドが多いんですけど、まだこのバンドでは行ったことがないのでライヴに行ってみたいですね。大きな目標で言えばドラマのテーマ曲やCM曲も作りたいし、夏フェスにも出たい。アジア・ツアーもしたいし」(カモシタ)。

 「野外フェスに出たいよね。今回曲作りの選択肢が増えたので、これからさらにいろんな選択肢が増えたらいいなと思ってます。ストリングスとかキーボードを入れて、4人以外の音が鳴っててもおもしろいし、生楽器以外の音を入れるのもいいな」(本多)。

 


インナージャーニー
カモシタサラ(ヴォーカル/ギター)、本多秀(ギター)、とものしん(ベース)、Kaito(ドラムス)から成る4人組バンド。2019年10月、〈未確認フェスティバル2019〉への出場を機に結成。 2020年12月のファーストEP『片手に花束を』、2021年9月のセカンドEP『風の匂い』を経て、2022年9月にファースト・アルバム『インナージャーニー』をリリース。今年3月公開の映画「雑魚どもよ、大志を抱け!」の主題歌 “少年”を書き下ろし、このたびサードEP『いい気分さ』(鶴見river)をリリースしたばかり。