13作目のアルバムはバンド史上もっともポジティヴでカラフル! もっと自由でいい、あなたらしくていい――オーロラ色に煌めく『gravity』は人々を祝福し、鼓舞する!!
2022年末に12作目のアルバム『fab』を発表。2023年に入ってからも配信シングルのリリースを通してさまざまなサウンドを貪欲に追求、一方でフェスに出演するなど、精力的に活動を続けてきたandrop。約8か月のスパンで早くも届けられた13作目のアルバム『gravity』は、彼ら史上もっともポジティヴな作品となった。
「コロナ禍で辛いことも多かったけど、今年の夏は4年ぶりに花火大会やお祭りが復活したり、厳しかった状況が徐々に改善されてきているじゃないですか。その開放的なモードをより膨らませたいと思った。ライヴの現場も含めて聴いてくれる人とより繋がれるように強く意識して作ったので、引き合う力=『gravity』というタイトルにしました」(内澤崇仁、ヴォーカル/ギター)。
「ほとんどがここ8か月に出来た曲だし、内澤くんからデモをもらったのもレコーディング当日。すごく瞬発力と鮮度の高いアルバムです」(佐藤拓也、ギター/キーボード)。
「〈ギターがよく聴こえるな〉と思います。少し前までは鍵盤やサックスを立たせるのが好みだったけど、最近はまた4人で鳴らす感じに戻ってきました」(前田恭介、ベース)。
ドリーム・ポップ的な浮遊感に軽快なモータウン・ビートと明るくリズミカルな歌を掛け合わせた、andropらしい雑食性が煌めく“Parasol”で幕を開ける今作。オルタナ色が際立つ“Happy Birthday, New You”では、歪みの効いたシューゲイズ・ギターに加え、〈勝ち負け 失敗成功 あとは 性別 見た目 夢 もう全て 答えは白でも黒でもない オーロラみたいがいい〉という歌詞も耳に残る。
「自分を大切にしてあげてほしい、他人と比べて幸せを測らないでほしい、セクシャルな部分で差別をせずにもっと自由であってほしいという前向きなメッセージを込めました。〈新しい自分〉を歌った点では“Arata”と通じるし、“Parasol”の〈1 2 3で隠れて 「頑張る」だけじゃなくていい〉も近いニュアンスですね。目が眩むときは傘で日陰を作って休めばいいし、行けるタイミングで駆け出せばいいと思う」(内澤)。
「“Happy Birthday, New You”はアーミング奏法で弾いたんですけど、2番のAメロは大胆ですね(笑)。キーがほぼ合ってないのにおもしろい感じになったなと」(佐藤)。
「不安定なピッチとか、意図的に作れないグルーヴで演奏するのが楽しかったね」(前田)。
「“Arata”はフロアタムでトライバル感を、キックでポップなJ-Pop感を出したりと、4つ打ちのアプローチを変えつつ聴き手を鼓舞するムードを作りました」(伊藤彬彦、ドラムス)。
R&B調のアレンジやハミングのコーラスが映える“Black Coffee”ではしゃがれたハスキーな声、ダンサブルなサマー・チューン“Hyper Vacation”では言葉の頭にアクセントを付けて歌うなど、内澤のヴォーカルもサウンド同様にカラフルだ。
「何度か喉を壊してきたことで、いろんな声の出し方を見つけた気がします。“Black Coffee”は制作に伴う葛藤をテーマにした曲なんですけど、そんなときに悩みながら呟いている感じにしたくて、すごく力を抜いて歌いました。こういうディアンジェロっぽいサウンドは4人とも好きなんですよ」(内澤)。
「3拍子をヨレさせるこのリズムは独特でおもしろかったね。ドランク・ビートって8ビートから作ることが多いし、拍子を説明するように叩くとヨレて聴こえなかったり。やっていて興味深かったです」(伊藤)。
みんなで認め合うような曲に仕上がった〈乾杯〉を意味する“Toast”、内澤による弾き語りの“Cosmos”を含め、充実の全7曲が揃った。「この4人で鳴らせば自然とandropの音になるので、今後も挑戦し続けるバンドでありたいです」(内澤)と語る彼らの表情はかつてないほどに清々しい。
andropの過去作。
左から、2021年作『effector』(SPACE SHOWER)、2018年のミニ・アルバム『daily』、2018年作『cocoon』(共にユニバーサル)
内澤崇仁が参加した近年の作品を一部紹介。
左から、上野優華の2023年作『恋愛シグナル』(ベルウッド )、XIIXの2023年作『XIIX』(トイズファクトリー)、Hakubiの2023年作『Eye』(ポニーキャニオン)